第二章19 『夢回想』
毎度毎度、遅れてすみません。いろいろあって、イラストとかも載せようと試みていたのですが、頑張っては見たものの、生憎、容量が大きすぎて無理でした。残念です……。そんなこんなで、遅れましたが、今回は過去最高に長く、2話投稿となっていますので。今月中に40話~50話行けたらいいんですけど、またそれは次の機会になりそうです。本格的に忙しくなってきましたので……。ほんと残念なことに……。チキショウっ!
『……』
見渡すと、そこは淡い空間だった。
色という色が水彩画のように、交わって、ぼやけて。
そんなカラフルに彩られた空間は見たことのある光景で、記憶から映し出した断片的模様。記憶だから、不確かなのだろう。
そんな空間で――『真蒼黒竜』は確信する。
願った通りの夢であり、記憶の空間。
思い出すために浸れば浸るほど、真実がそこに映し出されていく。
「何やってんだよ」
夢という朧気な記憶の霧から現れる少年――『鬼塚亮助』。
景色からして、これは今であってそうじゃない。そんな過去の今。
変えなかった場合の世界であり、生涯で見てきた『時』。そんなとこだろう。まぁ、そうでなくては困るし、おかしいのだが。
そんな世界で投げ掛けられる言葉はまるで、今の自分に対して言っているようなもので、勘違いしそうになる。
それほどまで自分が脆くなっていることにも気づいてしまう。
「キスケ」
「……」
愛想の無い返事。
当たり前だ。ここは記憶の中。その時その時の光景をそこに映し出す。
――だから、
準えるように、辿って行けばいい。そうすることで、見えてくるものがある。俺が手に入れたかったものをもう一度、確かめることができる。
今更だって分かってる。もう遅いって気づいてる。どうにもできないことだと自覚しているし、理解もしてる。
そうやって何度も何度も味遭わされて、うんざりっていうくらいに嫌気がさしている。
諦めようって何度も思った。でもその分立ち上がった。
愚かで醜く、これでもかっていうように。七転八倒、七転び八起き。
似て非なるそんな繰り返し。無意味だろうが関係ない。
無駄な努力であろうと、逆らえない何かが、貶めるための何かが働いていたのだとしても、それを諸共せずに平然と打ち倒す。
それが『無』で突き通された『真蒼黒竜』という男だ。自惚れと過信で満ち溢れたバカな奴だ。
それでも、そんなこんなで全てを掴み取った。
だから今回もうまくいくはずなんだ。
けれど、現実は厳しい。
今までに培ってきたものを全て賭けても足りない。
――俺のBETはもう無いのにな。
結局、何かを手に入れるためには何かを犠牲にしなければ成り立たない。
それがこの世界の道理。
全てを失って、何も無くして、それでもまだ残ったものがあるとすれば、それは何であろうと構わない。
ただ、今を生きる糧となってくれるのであれば何でも。
俺にまだ残されているものは、俺自身であり、俺の行先。
未来はまだ閉ざされてはいない。
希望があるわけでもないが、諦めたら終わりとはよく言ったものだ。
実際そうなのがこの現状。
どうしようもないし、右も左もわからないくらいにどうしたらいいのかこっちが聞きたい。
そんなご都合主義にできていないのがこの世界。なら――、
――ほんと、嫌になる。
「……何も」
「そうかい」
ため息交じりに落ち込んだ雰囲気を醸し出せば、歩み寄るように隣へと腰かける。
最近に見た光景。
だからこそ、いいのではあるが、何とも言い難くも思うものがあった。
そんな13階ビルの屋上で、あの時はまた繰り返される――。
※
「――なぁ、知ってるかよ?」
青年は、巨岩の上、寝そべりながら呟く。
その姿はとてもだらしなく、寝ぼけ眼の子供のようだった。
「――……何がだ」
それを流すように剣を振りながら聞く、少し年の離れた青年。
鬱陶しくも仕方が無いように聞く表情は、相変わらずの無表情だった。
「今やっと、『夢回想』に入ったやつがいるらしいぜ」
「それがどうした」
起き上がって、嬉しそうな顔をする青年に対し、剣を振るのを中断し、話題が話題だけに手を止め、聞き入るように立ち尽くす。
「いや、今の奴らにも飽きてきたとこだったし……」
「そんなことだと、足元をすくわれるぞ」
「え?」
「ほらな」というように示される視線の先へと目を向ける。
「――全く、心外だな」
「――そんなんじゃ、背中が疎かだぜ」
木陰から縋るように現れる一人に対し、現れたもう一人に一瞬で背後を取られていたいたことに気づく。
「ふふっ……」
「何がおかしい?」
「いや、誰に言ってんだと思ってな」
「はぁ……?」
木陰の彼の呆れ声が漏れたその時、背後の者が瞬きをしてみれば、喉元に彼愛用の大剣が向けられていた。
「ま、退屈しなくていいんだけどさ」
「……さすがっすね」
「――へぇ~、面白いことやってるね」
追加されるようにして現れる、和服に身を包んだ少年。
歳は木陰にいる者と大差はないが、その気軽さがどこか間抜け面に見える。
ただ、そんな彼に対してか、そばにいる二人は無言のまま、視線を彼らへと諦めながらにも戻す。
「ふん……」
そんな彼は大剣を納め、誰も見たことの無い世界で、変わらず広がる青空を見上げる。
とても眩しそうでありながら、凄く清々しい気持ちに見舞われながら。
「でも、どんな奴なんだろうな……」
「そうっすね~」
「はぁ……」
「……」
「あははー……」
「――ふふっ」
潜むように、ひっそりとまたもう一人現れるも、そんなことより、集まるたびに揃って小ばかにしてくることに口が尖る。
「何だよ~、皆して~……」
「……いや、あんたは相変わらずだと思ってな」
「どういう意味だよ、それ……」
「全くだ……」
「――まぁまぁ、いいじゃない。それが彼の持ち味なんだからさ」
剣を振っていた彼の背後から、話題の矛先に乗るようにして現れる青髪の青年。
「……?」
だが、そんなフォローも意味をなさないようにわかっていない様子で間抜け面を浮かべられる。
そのことに、誰もが気を落とし気味になり、明るいノリだった僅かな者々も、「あはは……」と愛想笑いを浮かべていた。
「はぁ……」
「もっ何だよ!?俺の顔いちいち見てため息すんのやめてくんない!?」
「それより……」
「何だよぅっ?」
いじけざまの返事に対し『ん』という首振りサインのゆくまま、背後を振り向いてみる。
するとそこには、お馴染みの奴がいた。
「その前に、あいつを倒さなくていいのかよ?このまま2番で居続ける気か?」
「……ふふっ」
「……?」
自然とされた当たり前のような質問に、笑ってしまう。
そのことに疑問符を浮かべる者もいれば、わかりきったおかしな話というように同じく微笑している者もいる。
「いいんだよ、そんなこと。あいつなんだから」
「……そうですかい」
『こいつはダメだ』というように呆れ顔になっている一方、近づいてくる一人に揃って視線を戻す。
赤と青のツインカラーのマフラーに隻腕武装をした、彼らと比べれば年長の青年。風柄なのか忍者やアサシンなんかを彩らせる。
そんな彼に、不思議と笑みを溢しながら、手を挙げて合図をするとこちらへと視線を向け、あと数メートル僅かというところで歩みを止める。
「……?」
「――はぁ~……」
「ブルータスお前もか!?」
歩みを止めたと思いきや、同じく呆れと諦めに満ちた鬱陶しきどんよりとした眼と表情を浮かべられる。
ただ、『そんなことはさておき』と、和みのある雰囲気を置いて、皆へと視線を向ける。
「すまないな、急に呼び出してしまって」
「ふん」と大剣使いの彼。
「……」と剣振り。
「全くだ。読んだ本人が遅いってのはどういうことなんですかねぇ……」と木陰に腰を掛けている一人。
「どうかしたんすか?」と背後から仕掛けた彼。
「君が僕ら全員を集めるなんて、何の前触れだい?」と木陰に潜む一人。
「もう、それは言い過ぎだよ?」と和服の少年。
「それで、どうかしたのかい?」と、フォローしていた青髪。
「ふ……大したようじゃない。が、知っておいて損はない話だ」
視線を落とし、三度周りから呆れられまくられている大剣使いの彼へと向け直す。
「何だよ?」
これ以上、小ばかにするのは可哀想だと、呆れるのを自粛しながら皆に用件を伝える。
「そこにいるバカからも聞いたとも思うが、ここにもう一人、加わるやつがいる。いわゆる同胞だ」
「「ふ~ん、それで?」」
同じセリフを違うニュアンスで被ったことに嫌悪しながら睨み合う木陰の二人。
「「あぁんっ!?」」とまたも違うニュアンスで喧嘩っ早い言動が始まるも、そんなことに気にするのはもう彼らの間では当たり前のことなので、平然と愛の手を打ちながら話を進める。
「当分先の話だ。けど……」
自らの頭を指しながら、軽い口調で答える。
「頭の片隅にでも、入れといてくれっていう話だ」
「はっ。王者の余裕ってやつですかい」と木陰に腰を掛ける一人。
「おいおい、酷いな」
「まっそれが、こいつの持ち味なんだけどさ」と肩を組む大剣使い。
「ふっ……」
「変わらないな。あんなたちは」とその光景を眺める剣振りの彼。
「そっすね」と不意打ちをしていた彼。
「んだよ、それ。というかそこにお前も入ってんだかんな?」と大剣使い。
「ふふ……」と潜む彼。
「そうだね」と和服の彼。
「ふん」と剣振り。
互いに睨み合い切磋琢磨する敵同士。
されどこの場には、和みある空気があった。
相変わらずの空気感。
そんな他愛もない和みが、この世界で生き抜くための糧となってくれる。そうであろうと思う。
「でもよう、ほんとどんな奴なんだろうなぁ~」
「まだ言うかよ」と腰かける彼。
「でも、気になるよね。どんな人なんだろ」とフォローする一人。
「強いんだろうね?そいつ」と潜む彼。
「まぁ、現時点ではわからんが、かなりの大物だ」
「っつわれてもなぁ。ここにいるのはそんな奴ばっかじゃねぇかよ」と腰を掛ける一人。
「……例えるなら、そうだな……俺よりも上、と言ったところか」
「マジかよ……」
「でもさでもさ。それって憶測でしょ?確証ないじゃん」と和服の彼。
「だが、格あるあいつの意見だ。間違いはねぇだろ。……エコひいきがない限りは、だが」と腰を掛ける彼。
「……」
「まぁ、そんな変に甘いところも含め、こいつのいいところだよ」と大剣使い。
「そうだな」と剣振り。
「全く、お前らは……」
ため息交じりの言葉と同時に、傍にある建物の中にある鐘の音が鳴り響く。
それはとても幻想的で、綺麗な音色なのに、ここでは血に染めるほどの嫌な響きだった。
「……さて、戻りますか」と腰かける一人が立ち上がり、
「……」と剣振り。
「そうだね」とフォローする一人。
「まぁ、とにもかくにも、この場を生き残らなければ、意味ねぇことだけどな」と立ち上がった彼。
「だからやつの言う通りに従ってるんだろ。僕は乗り気じゃないのに」と潜んでいた彼。
「まぁまぁ、いいじゃない」とフォローする一人。
「そんじゃまぁ、生きて戻ってこようぜ」と年長の彼が口を開き、
「「「「「それ死亡フラグ」」」」」
最後の最後に、全員から驚かされる和みの一言。
いろんなイントネーションが重なったそれは何とも笑みの零れるものだった。
建物へと戻っていき、暗闇の続く廊下で、この先にある歓声が響く中で、進んでいきながら思う。
マフラーを口元まで寄せ、憐れむように、浸るように、この先に待っているものを避けるかの如く、思い出す。
あの地獄のようだった日々。
何もかもが残酷にも過ぎ去っていき、失われた。そんな仕組まれた運命。
してやられたことを、その者へと向けて見れば、宿命だと罵る。
それを思い出すたびに怒りが混同し、何故だかプラマイ器官がおかしくなっているのか、何も感じなくなる。
そんな中で、ここへと追加される者のことを知らされると、不思議と誰かがいなくなる。
消されるように、差し替えられるように――。
だからあんな場を用意した。あんなここでの策を練った。
必然でどうしようもないクソッタレな世界。
恨み悲しみで仕組まれるように染められ埋められた亡者の集まりであり、類。
ただそんな世界に、満足する。そんな最低最悪の自分もいる。
――だから、
光が満ちていく道の先で、響き渡る鐘の音と歓声。
それがうるさく感じながらも、浸りに浸っているせいか、水の中で泡が木霊し合っているようにも聞こえる。そのおかげか、今ではもう何ともない。
『ここに来たからには』と、青年は甘さを捨て、敵であり仲間である。そんなライバルへと向けるように愛刀を振りかざす。
したくはない行為へと目を瞑り、希うように目を見開く。
踏み出し、勢いがつくと、そこには光である白と、染めゆく必然の赤が広がる。
最強たる由縁か。勝負はあっという間。
染まりに染まりきった、洗うことのできない、汚れた世界。
幾多もの戦いを経て、人でありながら人ならざる者へと変わってしまった。
その証拠に、自身の背中には、雄々しくも美しい翼がある。
広がり、散っていく羽。
雨や桜を印象付けるそれを手に乗せ、大剣使いの彼のように空を見上げる。
美しいはずの空は、その眩しさで焼けそうなほど熱く、視界に映ったと思えば血に塗れた悲しくも残酷なものだった――。
――交差するは、交わるはずの無い繋がれた世界たち――




