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蒼のAGAIN  作者: 「S」
第二章 2桁の『災悪』と絶望の病
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第二章18 『向かって』

う~ん……。

やっぱりうまくいかないなぁ~…。

もうちょっと早く出していけるよ精進していきます!

 ――『蒼の神殿』。



「……」



 複雑さと平常心を掛け合わせながら、片膝をつき、忠誠の意を示す少女――『レイ』。



 彼女が今いる空間には、14本の柱がある。


 それぞれバラバラの長さと歪な形をした、槍や一本の氷山にも似たそれは、円を描くように並んでおり、怪しげなオーラを放っている。


 そのせいなのか、気不味さと重苦しくも暗い雰囲気に吞まれそうになる。



 ――何故なら、



「――それで、彼の調子はどうなの?」



 そんなバラバラの歪な柱の中でも一番の長さを誇る一本。


 それは入口から現れる者々を上から見下ろすような形で作られており、目の前に聳え立っている。


 そしてそこに居座るように、王杖と少女に見えるほどの容姿を持った女性がいる。

 肩まで延ばされた綺麗な金髪。瞳はブルークリスタルのように光を帯びている。


 そんな女神像を露にしたかのような容姿を誇る彼女に、レイは申し訳なさを抱いていた。


「はい、何とも言い難い状況です……」


「そうですか……」


 落ち込んでいるようなそんな彼女に対し、周りから次々と声が響き渡る。



「――まぁまぁ。そんな落ち込まなくも大丈夫ですよ~」



「――ええ、そうね」



「――私も、そう思います」



「――そうですよ」



「――うん」



「――そうだな」



「――そうよ」



「――はいなのです!」



 それぞれバラバラの長さで歪にも並べられた柱と同様、背凭れが玉座の如く高さがあり、そこに居座る者たち。


 不思議にも、ここにいる者たちは声からして全員女性。だが、正体はわからないようになっている。

 何故なら彼女らは、この暗さとも相俟ってか、素顔が見えない状態にあるから。


 ただ、14もの玉座がありながら、空席の部分もある。

 このうちの一つには彼女も含まれているのだが、今は訳あって見下ろされている側にある。

 そして、ここにはいない彼女も同様に……。


 そんなレイは、停滞し、ただ見守ることしかできないこの複雑な現状に、少しばかりこの14席の玉座に加えられた2名の者たちに対して、物申したいことがあった。


「まったく……あなたたちのせいですからね?」


 吐き捨てるようなそんな愚痴は、その二人に届くよう手向けられる。



「――………」



「――ふふっ……」



 ただその呆れにも、彼女らは動揺せず、平然としている。


 面影を無くした者と、面白味を感じている者。

 それぞれ反省の無いご様子。


「はぁ……」


 大きなため息。

 反省の余地がない彼女らに対しては何を言っても無駄のようだった。

 ただ彼女らの気持ちもわかるため、何も言いようがない。


「ふふっ……」


「……?」


 そんなレイに対し、女神は微笑む。


 そのことに不思議に思っていると、「ごめんなさい」と笑いを堪える素振りを見せる。周りもそれぞれ、それが分かる者やレイと同じく頭を傾げる者達がいた。


「今までのあなたとは、似ても似つかなくて、つい」


「そうですか……?」


「ええ。あなたはとても変わった。ここにいる誰もが、そう思っているはずよ」


 周りを見渡せば、ほとんどの者がかすかに微笑んでいるのが見える。

 それは確かな光景で、自分よりも周りの方が自分のことを理解しているのだというものだった。


 でも、それがどうしてなのか、なんとなくだがわかっている。

 そのことに笑みを秘かに溢してしまう。それは周りも同意見。


 そのため、『だからこそ』というように、この和やかだった空気を先のように戻してしまう。

 それはどこか悲し気で、何かに僻むような、そんなどうしようもなさだった。


 だからなのか、願いを捨てきれずにいる。

 とても歯がゆき嘆き。


「彼にはとても申し訳がないですね……。本当に……」


 避けられぬ運命。

 そう言うのだろう。



 ――けれど、



「でも、そんなこと気にしてないと思いますよ?」


 あなたはとても優しい。

 偽りなく誰にでも与えるその優しさ。

 それがあなたという王たる由縁なのかもしれない。


「そうでしょうか……」



 だから、それを肯定することはとても容易いし、何より――、



「はい、そうですよ。……そういう人です」


 今まで見てきたからこそ言える。

 それは信頼とも呼べる、微かにもできた小さな絆。彼自身はそう思ってはいないだろうが……。


 誰も信じていないくせして、頼りきったり、誰かに支えてほしいと心の中で叫びをあげている。だからこそ、ほっとけない。そう思わせる。


 誰よりも強い意志。自惚れと過信のようなものに満ち溢れた愚か者。

 でも、それがすごく異常。個性を通り越して、もはや変人だ。

 それに自覚があって、風格まであるのだから、どうしようもない子だ。

 それ故に、愛らしく思えてしまう。


 彼がそう思えば思うほど、その意思は強くなっていき、可能性に満ち溢れ、本当にこなしてしまって、現実のものとなる。思い込みの強さとでも言うのか。


 そつなくこなしていってしまう姿は、ほんと『あの人』そっくりだ。

 まぁ、本人であって別人でもないのだから、当たり前なのだろうが。


「……ほんと、変わりました」


 薄っすらと、微笑ましく思う女神の姿は、変わったことへの嬉しさで隠せないほどのものだった。



「それで、お願いがあるのですが……」


 微笑ましさが落ち着き、これからへの検討について、レイは切り込む。


「はい、何ですか?」


「彼への対処を、このままにしておいてほしいのです」


「……というと?」


「『Repeat』への干渉を、なるべく避けてほしいのです」


「ですが……」


 何か言いたげの表情。


「それは……」と言葉を濁しながら繋げようとする。


 わかっている。



 ――だからこそ、



 とても強気眼差し。

 それがどうしてなのかわからないが、レイを見る限り、とても真剣で何かあるに違いない。

 そう断言できるものだった。



 ――ならば、



「……わかりました。元々、あなたたちに任せた役目ですからね」


「……ありがとうございます」


 許しを受け、静かにこの場を後にするレイ。



 そこに、誰もが目を瞑って、微笑みを消した――。



      ※



「さて……」


 招集から少し経ち、目的である場所へと向かうレイ。


 通りを越えると、十字路へと出ていく。

 ここは他とは違い、今は道行く道が前後左右共に白く光り輝いている。



 そして、辺りを見渡してみれば、左側通路の先に、『Plaza・Gate』があり、そこには祈りを捧げるように立ち尽くした――『アオ』がいた。



 そちらへと方向を変える。

 一歩一歩近づくにつれ、『Plaza・Gate』が開かれた先には、彼がいた。

 アオの隣まで来て並び立つと、こちらに気づいたのか、顔を上げて視線を向けてくる。


「……すみません、無理言ってしまって……」


「いいのよ、あれくらい」


 互いに言葉を交わし、倒れている少年に再び目をやる。

 見つめていると、その悲惨さと残酷さにいたたまれなくなる。



 たとえ、そういう運命だとわかっていても――。



 それぞれ、決心したのか「よし!」と掛け声を上げて、行動に移る。


 アオは彼をポッドへ。レイは原因を生んだシステムのもとへ。


 案の定、やはりというかのように事の原因は『監視室』の装置が発生源となっていた。

 だがこれは、操作のできる代物ではない。



 だって、自動稼働システムなのだから――。



 わかってはいても、屈んでこの装置を眺めてしまう。


 光ることをやめない、スイッチのようなライトであり、ランプ。

 地味にも文字が刻まれていて、「どうしたものか」と気が滅入ってしまう。


 気休めでも何でもいい。


 そう思いながら、装置に手を付けていく。

 そんなレイの後ろを彼を抱えたアオが通り過ぎ、家事のように作業をこなしている。


 それぞれ揃って眺めていると、何ともおかしな光景だった。

 どちらも一段落すると、同時に振り替えるように6つあるモニターへと目をやる。



 絶えず眺め続けるその視線は、何を考えているのかわからないほど複雑なものだった――。



      ※



「ふむ」


 弟への連絡を済ませ、手持ちのガラケーをパタリとしまう。



 そして、今いる場所をもう一度確かめるように辺りを見渡しながら――『天道俊』は、考え込む。



 身体には似合わないほどの、登山でもするのかというような大きなリュックを背負い、坂の上にある大神社へと目を向ける。


 その先に、知りたい答えがあると突き止めたのはいいのだが、それよりも先に、ここはどこなのだろうと思ってしまう。


 ここは山の中腹ではあるのだが、下を見渡せば、山一個分はあるほどの高さ。

 そして、ここよりもさらに上に、『大神社』というとても大きなお寺がある。


 それは目的地ではあるのだが、大きさは寺なのに、名は神社という何ともおかしな場所。

 しかもそこは、お爺さんが一人で切り盛りをしているという。もはや仙人だ。


 だが、そこに行くにはまず、ここからさらに上に登らなければならない。

 そのことに対して少し嫌悪する。



 ――何故なら、



「4000段って……」


 目の前にある立札。

 そこには大神社までの距離が記載されている。


 だがそこに書いてあるのは、距離というよりも、山の傾斜に沿ってできた、縦1メートル・横5メートル・高さ50センチという長方形が積み重なってできた階段の段数。もはや超長方形だ。


 巨人が通るためだけに作られたようなその階段。

 看板には書き間違いなのではないかというほどの段数。

 単位がキロメートルや合ではなく段数であり、しかもそれが有り得ないほどの数値。



 ――4000段……。



 そんなものが存在するのかと疑いたくなるほど、おかしく思えてくるのだが、見る限り、現実であり真実。


 ただ見るに、あってもおかしくない光景で、本当なのか確かめるため数えたくなる。

 頭を掻き、深呼吸をすると、上を向いて決心する。


「よっし!」


 大きな掛け声とともに勢いよく駆け出す。



 切り込むように、風のように駆け出したその姿には、不思議な笑みが浮かべられていた――。



 ――それぞれの決まった先に待つ道の行く末は

  交わりか、別れか――

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