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蒼のAGAIN  作者: 「S」
第二章 2桁の『災悪』と絶望の病
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第二章16 『すれ違い』

すんませんでしたぁああああっ!!!!!!

何から何まで破ってしまいっ、返す言葉もありましぇーんっ!!!

と、言うわけで、これからハイペースで書きます。何があろうと……!

「……」



 薄暗い自室で、考え込む少年――『間木野斗条』。



 今の心境は『やらかした』という罪悪感と、許せない怒りという二つの感情に板挟みにされ、複雑さを極めていた。



 ――どうしてこうなった?どうすれば直る?



 自問自答だった。

 無理だと分かっていながら、諦められない自分がいた。

 まるでどこかの誰かさんのように。


 未練だった。

 たとえどんなものを犠牲にしようと、この歳ながら失いたくないものがあった。


 いや違う。戻りたいのだ。

 あの日あの場所の温もりへ。


 それに、気になることもあった。

 いや、それしかない。

 だから今、確かめるべく頭を働かせている。



 考えて、考えて――、



 気になる部分もあったが、おかしなところもあった。

 そしてそれは全部、クロの思惑通りというもの。


「チキショウメ……」


 状況は最悪。


 リナがいなくなって、とても悲しくて周りに苛立っていたはずなのに、彼女の贈り物とでも言うように、この現状に笑みを溢す自分がいる。


 ベッドに横たわり、眩しく感じる世界を腕で隠す。


 不思議にも伝う一滴の雫。

 『涙』というそれは、顔には似合わないほどのものだった。


 腕の隙間から天井を見上げれば、広がるは殺風景ないつも通りの見慣れた部屋。


 だが、ふとした瞬間、とあることに気づく。


「……なんだ、これ……?」



 見慣れた腕には、黒々とした紫色の痣があった――。



      ※



 ――同時刻。



「……」


 『真蒼黒竜』もまた、同じようにベッドの上でシンクロするように現状を整理していた。


 諦めと受け入れ。

 どちらも深く繋がっているようなそんなものと、クロは切っても切れない縁がある。どちらにもよくお世話になっていると言ってもいい。

 それをし続け、今もその最中。


 変わりつつあるのかどうかはわからない現状。

 ただ、違和感はある。


 『無』という自分が、叶わぬ希望を、夢を、見続けている。

 ほんと、愚かだ。


 考えることを放棄するようにベッドに横たわると、ふと、殴られた頬に触れる。


 これは、失いを受け入れた結果だ。

 何故なら彼は、自分に触れてしまったのだから。



 それはつまり――、



 自分に触れてしまった彼――『鬼塚亮助』が遠くないうちに手の届かない場所へ行くということ。



 だがそれは、今更だった。

 抗えぬ運命なのならそれは、早いか遅いかの違い。


「……」


 天井を眺めていたクロにふと、生涯での記憶が蘇る。

 それは今とは別の、三人になってしまった時の思い出。

 今とは真逆の壊れなかった関係。



 ――でも、



 だからこそ、突然きた『あれ』の影響下は大きかった。

 とても残酷なもので、最悪のものだった。


 一人、また一人と失われていく光景は今でも目に焼き付いている。

 それは負の感情しか生まないものだった。


 そう。たとえどれだけ『無』になろうが、それは偽りのもの。


 生まれてくる感情を抑えることはできても、無くすことはできない。逆となった今では、実感という実感もないのだが。



 そんな突如として蘇った記憶に浸るように、クロは時計の針を気にすることなく眠りへと落ちていった――。



      ※



 変な騒つき。


 切り離されているようで辛うじで繋がれているような、そんなあやふやで朧気な空間。

 ふとした瞬間にこの世界に訪れるとき、皆誰しもがすぐさま気づくようなことはそうそうないだろう。


 だが、この空間へと誘われたクロにとっては容易で、すぐさまわかる光景だった。

 まるで自分の記憶を辿っているような遡り。


 魘される日々で、ここだけが落ち着く空間で、放そうとはしない。そんな囚われの追憶。



 ――そう。



 ここはクロの記憶からつくられた過去の世界。

 伝わりやすく言えば、夢の中だ。


 夢というのは案外簡単に見られるもので、心の底から強く願っているものを記憶の底から引っ張り出し、繋げ、幻覚とする。そんなものだと理解している。


 クロの場合、予知夢なんかが多い。

 でもそれは、皆にもよくある普通の事。


 未来を夢の中で見るというのは、自分なりにも考えたことがある。


 今まで見た記憶。今見てきた記憶。


 それらを整理するために睡眠があって、そんな睡眠は記憶の整理が行われているわけだから、その整理中の記憶達があいまいにも混ざり合い、交差してできる空間。それが夢なんだと思う。


 過去と現在。それらを繋げ、予想し仮定した幻覚。

 それが予知夢。別の言い方をすれば、神様のお告げ。


 神は本当にいるとクロは信じている。まぁ、半信半疑なのだが。


 神がいるというのに関してはどちらでもいい。

 いたらいた、いないならいない。


 目に見えない世界が、宇宙が、この世には存在していて広がっている。

 その中に証明しきれないものも山ほどある。

 だから、可能性としてはゼロじゃない。


 それに、神なんてものが存在すると言われた由縁はなんだ?

 誰かが存在すると言ったとしても、その発生源がわからない。


 だからこれは、クロの持論なのだが、


 世界の始まり。

 つまりは宇宙が生まれ、星が誕生し、人が作られた。


 ならその時、仮に『始まりの時』と呼ぶとして、そんな最初の頃に見た者がいて、伝えられてきたのだとしたら?

 実際に存在していたのだとしたら、話は変わってくるのではないか?


 人間は、自分たちの作り上げてきた世界に囚われすぎている。

 悪く言えば、受け入れという臨機応変な落ち着きのある対応が足りていない。

 そんな固定概念に占拠されてしまっている残念な人たち。

 逆の立場からしてみれば、こちらが残念に見えてくるだろうが。


 正しさなんてどうでもいい。

 ただ、縛られ続け証明できないものの一つが夢であるのは確かだ。


 夢に対しての一説に、『意識』という霊体が、あの世という夢の世界にゲームのようにリンクしているというものがある。


 だから現状、記憶という本の整理が、睡眠という自動稼働システムによって作動し、脳という記憶の図書館の中で本たちが無数にも飛び交って、交差して広がる光の空間が今見ているような夢なんかではないのかと思う。


 予知夢のほかに見せる、妄想や理想。仮想に空想。

 そんな夢想という幻覚であり、幻想。


 そんな類が実際にパラレルワールドとして存在していたり、宇宙のどこかの似た星で、別の未来が広がっているのだとしたら、心底そこが羨ましく思う。


 今よりも成功している世界。

 ここよりももっと悪い世界。

 人が夢見る異世界。


 そんなものが宇宙や目に見えない何かを通じて脳にリンクし、伝え、この世を発展させてきた。


 たぶんそれは、発想やひらめきなんかという形で、同調し、同時進行で今も尚、共に新たなる未来へと歩みを進めている。


 まぁこれは、あくまで仮定の話。


 だから、そんなことが多い世の中、何が起きても不思議じゃないと思われる。


 今見ている幻覚であり、記憶であり、何かを伝えるためのメッセージのように思われるこの世界には、何かしらの意味がある。


 見えない何かで紡がれた、ただ覚えるためだけにあるわけではない記憶を、自分自身もどう繋げていくか。


 それが一本の糸のように垂らされている。この夢という名の世界で掴むための(キー)だ。



 ――ただ、



 『無』を手にした自分が、こんなにも冷静に対処しているのに、複雑にも絡み合った現状と心境は、羨む世界と現状を理想という名の世界とイコールにさせたいと、愚かにも未だに願い続けている。そんな不確かなものを。



 ――ならば、



 見て見ようじゃないか。調度いい機会だ。

 戻って来てなんだが、急にも結構いろんなことがありすぎた。


 変わっているようで変わっていない。そんな現状は複雑で、もっと悪くなっているように思える。


 だから、振り返ろう。

 自分が何を見て、何を感じて、何を望んできたのかを。

 良くも悪くも今はそれができる。

 今目の前に広がっている空間が夢であったとしても、記憶を掘り返すのだから。



 淡い浸透するような白き光の空間で、混じり合って溶け込む。

 思いが伝わったのか、その通りに世界が広がっていく。

 あやふやで朧気だったあいまいな空間は、あの時を思い出させるように鮮明に彩られていく。


 さぁ、行こう。



 ――あの世界へ。



 戻りながら、巻き戻る。



 本物で幻の、追憶へ――。



      ※



「はぁ~……」



 ピンクのクッションを抱きしめながら、大きなため息をする少女――『南芭恵魅』。



 時刻は出来事があってからの放課後。

 帰宅して、少し経ったくらいの時。


 そんな中で、ベッドやクッションに顔や身体を埋もらせながら悶える姿は、まるで見たことのある光景。どこかの誰かさんとそっくり。



 だから彼女は――、



「中途半端、か……」


 そのたった一言を、ただ一人の少年に告げられ、とても苦しんでいる最中。

 思い悩んで、「どうしよう」と迷って、ため息しか出ない現状は不毛。

 解決策も、どうしてなのかも、そんないろんなものがわからない。


 だから困ってしまっている。

 まぁ、理由も一つだけではないのだが。


「嫌われちゃったのかな……」


 そんなエミに、下から呼ぶ声が聞こえる。


「えみー?お友達よー」


 それは家族である母の声で、どうやら友達二人が来たということだった。


「はーい」


 突然の訪問。

 約束などもしていなかったので、誰だろうという疑問はあった。

 でも、お友達という言葉で、誰かというのには少しばかり察しが付いていた。


「よ」


「こんにちは」


 呼ばれ、玄関へと足を運んでみれば、二人の少女であり親友が佇んでいた。


 オレンジ色の瞳に、茶髪のショートボブ。

 上はパーカー、下はジャージでまとめられた服装は動きやすさを重視したものなのだが、女の子らしさが漂っていた。



 そんな少女――『多田代三代』は笑みを浮かべた挨拶を。



 ――そして、その左隣には、



 スカイブルーの瞳に凛々しくも煌びやかなポニーテール。

 上はカーディガン、下はミニスカートで、気高さと真面目さのようなものが混じり合った身なりは清楚だった。



 そんな少女――『小泉美媛』は落ち着いた素振りを。



 二人を目にしても、エミは落ち着いていた。

 何も聞くことなく、二人を部屋へと平然と案内する。

 そんなエミに二人は顔を合わせ、眉を寄せながらも部屋へと向かって行った。


 二階の部屋へはあっという間で、用意されたお菓子やジュースの量は、規格外なのにもかかわらず女子会と化していた。


「それで、どうしたの?」


 片手にジュースを持ち、少し口へ含むと本題へと切り込む。


「いや、用ってことでもないんだけど……」


 お菓子をつまみながら、困り顔なミヨは、媛へと視線を送る。


「……」


「……?」


 その行動にも、落ち着いた素振りで対応しながら眉を顰める媛。


 結局は何なのかわからず、エミは疑問符を浮かべる。


 ため息をし、少しの間がありながらも媛は口を開く。


「エミ、なんかあった?」


「え……」


「バレバレだよ?」


「……」


 鋭さを働かせる媛と共に、ミヨは呆れ顔。

 二人の視線を一極端に浴び、冷や汗が頬を伝う。


 そんな中、図星とでも言うように、彼の言葉が脳裏を過ぎっていく。

 蘇る言葉と光景はとても淡く、複雑なものだった。



『俺は君を知っている。ずっと、ずっと見てきたから』


『どうして自分を取り繕っているの?どうしてそんなことをしているの?』


『君は俺と似ている。でも、似たようで、違った生き方をしている。違うのは、君がそれによって、人気者であるか、そうじゃないかだけ』


『そんな半端な人、俺は嫌いだ』



「うぅ~……」


「……」


「どうしたのエミ……?頭なんか抱えて……」


「な、何でもない」


「ほんとかなぁ……?」


 質問に対しコクコクと縦に首を振る姿はとても愛らしい。


 そのことに微笑しながら許してしまう二人。

 変な緊張感と不安が和やかな空気により解らされ、大きく息を吐く二人。


 それはため息とは違った安堵や信頼などが含まれたものだった。


 そして、ひと段落すると彼女等はエミに言い聞かせるように語り掛けていく。


 もう、こういうことが無いようにと。


「エミ。なんかあったらちゃんと言うんだよ?ミヨたちはエミの『心友』なんだから」


「うん」



 ――『心友』



 それは、心から自分のことを言える事を指示している。


 そしてその言葉に、エミは俯き気味にもとても大きな幸福感という満ち足りた気持ちになる。


 ずっと、仲良くいたいという強き絆のようなものを感じて。



 ――でも、



 それと同時に、同等の孤独感に見舞われる。

 空間が断絶するように、彼女ら二人と自分は違うんだなとつくづく思わされる。



 ――ああ、こういうことなんだ。



 彼の言ったことがようやくわかった気がした。


 わからなかったわけじゃない。

 ただ、確証という実感がほしかった。


 それが早くも確かめられて、よかったのか悪かったのか。


 それからは適当な話をした。

 いつも通りのくだらない話。


 男子からして見れば怖い話もあるだろう女子トークなのだが、彼女等はそんなことは言わないし話さない。


 そんな人を見下すようなことはしない。

 優しく、美しい。そんな子たちなのだ。


 そんなこんなで時刻は淡々と過ぎ、彼女等を玄関まで送って、手を振って見送る。


 扉が閉まる寸前で、いつも通り向ける孤独感に包まれた誰にもバレなかったお得意の作り笑顔。

 それは、彼を思い出すと同時に、彼にある『無』のようなものと化していた。


 扉がガチャリと閉まった音を放ち、少しの間を置いて、強い決意のようなものを浮かべる。



 それは、笑顔とはかけ離れた強張った顔だった――。



 ――それぞれの道へと進んでいく彼等彼女等は

  何かに沿うように、遠く、離れていく――

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