第二章14 『LOST』
結局、遅れてしまいました…。すいません……。
3日の夕方までにまた、続きを出しますので、ご勘弁を……。
今月中には40話行けると思います。目指せ60!その間の50!でもいいかな。
とにかく!どんどん出していきます!
『世恋恋奈』の葬儀から5日後の世界――。
「……」
『彼女』が失われたというのに、世界はいつも通り回っている。
いや、正確には少しばかり違う。
――『俺たちの』世界は、止まり、停滞し、崩れかけている。
一人は依然普通に見えるが、よくはわからない。……己の力不足により。
一人は相当堪えている。行動は今まで通りでも、今まで以上の暗さだ。
表には出さない『無』な奴と、出まくっている『無』な奴。
……もう正反対かというように。
そして自分も、今まで何もなかったように無慈悲にも昔に舞い戻りしていた。
誰も言葉を交わさず、グループは完全に崩壊寸前だというのに、周囲は『彼女』の死を悲しんではいても、もういつも通り。
――結局、その程度だったのか?
周りに対しての印象を根強く嫌悪する。
世界が薄暗く、これが現実だというように時間が流れていく。
――でも、俺たちは違う……!
俺たちを繋いでいたのは『クロ』だ。
だが、裏で支えてくれていたのは間違いなく『リナ』だ。
俺たちはずっと引っ付いてただけで、それでサポートとかしたりして自分の居場所を守っていたにすぎない。
だから、俺たちは――。
心の奥底、叫ぶ自分がいる。
静かに時が過ぎえいく授業中の教室で、時間の流れと本音がうるさくも離れてくれない。
歯を食いしばりながら耐えきり、4時間目終了のチャイムが鳴り響く。
次々と教室を立ち去って行く皆。
立ち上がり、二人を見るように振り返る。
話しかけようと意を決するも一人は皆と同じく立ち去り、教室に二人取り残される。
結局はやることは変わらないと、彼はクロに話しかける。
「クロ」
「何だ?」
窓に映る彼を見ながら、クロはいつも通りに答える。
――やっぱり、わからない……。
いつも通りに見えていても、雰囲気的には皆と同じで何とも思っていないよう。
心の奥底で気にしているのか、それを抑え込むのに必死なのか。
そうだとしても、この態度から『皆一緒だ』と、そんな憶測が離れない。
「……」
「……?」
いざ話そうとすると、言葉が詰まってしまって出すことができない。
そのうえ、なんて説明すればいいのかわからない。
こんなのはじめてだな……。
――だが、
この時の対処法を――『間木野斗条』は知っている。
――それは、
簡単だ。ハッキリ言ってしまえばいいのだ。
言いたいこと、思っていたこと全部。
後先のこと考えず、バカみたいに。
だって、言わなきゃ伝わらないやつだっているのだから。
――だから、
「クロ」
「……」
「『リナ』のこと、どう思っている?」
「……」
クロの表情は窓越しでも、一切変化なかった。
ただ、変な間がここにあって、この場に、陰で偶然にも聞く者がいた。
そして、そんな変化に気づかないふりをした者がただ一人、存在していた。
「……どうも……。というか、知るかよ。もういない奴のことなんて」
「……っ!」
冷静な斗条でも、今の一言に驚きを隠せなかった。
いや、わかっていたのかもしれない。
わかった気になっていて、それがこの時になって当たって、複雑さが大きい。
だが、それと同時に抑えきれない怒りが込み上げてきた。
頭では『冷静に対処しろ』とわかってはいても、心がこいつを許そうとはしない。
――選択を間違えるな……。今すべきことはそんな事じゃない……っ。
――けど、
強く拳を握り締める。
歯を食いしばりながら、顔が強張る。
初めて、冷静ではなく、怒りに身を任せた――瞬間だった。
――でも、
斗条の決意は、ハッキリと『間違いだ』というように意味を無くす。
――何故なら、
「おい。それ、どういうことだよ」
不意に後ろから、よく知る聞き慣れた声に、当たってほしくない人物が脳裏を過ぎる。
その声の主が背後から近づいてくる、大きくなっていく足音に冷や汗が頬を伝う。
意を決して、近づく相手の正体に確信を持つべく、振り向く。
「キスケ……っ」
案の定の相手に、この場を聞かれていたことに、斗条は少し動揺する。
それと共に、さっきまでの怒りが、この場への不安と緊張感に変わる。
クロもまた、気づいていたのか平然と立ち上がり、近づいてくる――『鬼塚亮助』へと視線を向ける。
「おい!どういうことだよ!あぁ!?」
怒りのままにクロの胸倉を掴み、そのまま窓へと勢いよく叩き付ける。
眉間にしわを寄せ、怒りをあらわにする姿はどこか『鬼』そのもののようだった。
だがそれでも、クロは苦しむ素振りすら見せず、平然としている。
「テメェ今なんつった!?もう一遍言ってみろよ!!」
怯む姿もなく、クロはお望み通りの答えを授ける。
どうなるか、わかっているだろうに。
「何度でも言ってやる。『もういない奴のことなんて知らない』と――」
「……っ!テメェッ!!」
「……っ!」
その途端、キスケの拳が勢いよくクロの頬を抉る。
勢いのまま身体は床へと振り落とされ、その行動に、斗条の怒りは少しばかり納まる。
自分の代わりに殴ってくれて、と。
そんな安堵を浮かべ、それでも同時に、自分は卑怯だと実感する。
エスカレートするキスケのクロへの怒り。
だが、どんなにキスケが怒りをぶつけようとクロの鋭き眼光は消えることが無かった。
たった一発。されど一発。
拳は強く震え、頬の汗と息切れ。
怒っていても、友を殴りたくないというキスケの行為は否めない。
ただ、キスケのその姿は、何か違うものへの恐怖のようにも見える。
納まりきらない怒りを持ちながら、キスケは拳を押さえながら立ち去って行く。
少しの間があり、起き上がるクロ。
壁に身体を縋らせ、膝を立てる。
立ち去るキスケを見送り、教室を出ていくことを確認すると、斗条の表情はいつも通りの冷静さへと変わっていた。
クロの姿を見る限り、この場での選択肢はわかっていた。
だが、心に正直に、運命に、従っていく。
「無様だな」
「……」
「……もう、終わりだな」
「……」
静かに立ち去って行く斗条。
自分の望まない未来へこんな時に限って当たってしまった、したくはない真反対の行動。
貶すんじゃなく、この時、許して手を差し伸べていれば、まだ直せたはずなのに。
許せない自分がいた。愚かで子供な自分がいた――。
廊下へと一歩踏み出そうとしたその時、誰かの声が聞こえた。
立ち止まり、耳を澄ませてみれば――、
「……クソッ、納まれよ!……っ!……あいつ、なのか……?……あいつだったのか……?どうして、あいつなんだよ……!……なんでだよっ……」
「……」
何かに怯えている姿、驚き。それは気のせいではなかった。
その何かに対しての言動はよくはわからない。
でも、わかることはある。
それはもう、どうにもならないということだ。
今度こそ、キスケが立ち去って行くことを確認すると、キスケが行った方向とは逆の階段へと向かう。
進んでいく彼等の道はどんどんと感情と共に離れていく。
――これでいいんだ。
――どうしてなんだよ!
――もう、無理だ……。
まるで、共に歩いてきた三人の道が分かれていくように――。
※
――4時間目後、お昼休み。
今日は雲一つない青空。
こんな日は外でお昼を食べるに限る。
少しでもいい場所を確保するため、彼女らはいつも準備万端……なのだが、
「エミ?」
綺麗なショートボブの茶髪を靡かせながら――『多田代三代』は少女に尋ねる。
「……?あ……」
並んで歩きながら、少女――『南芭恵魅』は、とあることに気づく。
「忘れ物」
「そ。じゃぁ、先に行ってるね」
印象的な微笑みを浮かべながら――『小泉美媛』は素気のない返事をする。
「うん」
「わかったー」
立ち止まり、相津を送るとエミは教室へと黒髪のポニーテールを揺らしながら向かって行った――。
「クソッ、納まれよ!」
教室へ向かう途中、廊下で誰かが呟く声が響く。
不思議と立ち止まり、聞き入ってしまう。
「あいつ、なのか……?あいつだったのか……?どうして、あいつなんだよ……!なんでだよっ……!」
心の叫びのような、その自問自答。
気づけばその声の主がどんどんと近づいてくる足音が聞こえる。
盗み聞きしてしまったことがばれてはまずいと、廊下の陰に隠れる。
近づく足音が、遠くへと離れていき、通り過ぎたことを確認すると、声の主に見覚えがあることに気づく。
「確か……鬼塚……」
名前が出てこない。
いつも一緒にいる彼らが呼んでいたのは聞いている。
だから――、
「キスケ!」
名前が出たことに少し笑みを浮かべるが、「あ、『亮助』だ」と訂正する。
彼に少し違和感を覚えるも、本来の目的である教室への一本道である廊下へ出る。
すると、教室から出てくる黒縁眼鏡にくせ毛をした背の高い少年を見かける。
「名前は確か……間木野斗条くん、だっけ?」
ほとんど彼と一緒で影が薄いのに、彼を見慣れているせいか、彼にあっさりと気づく。
ただ、進んでいく先である廊下のせいでもあるのか、どこか暗い表情をしていたようにも見えた。
「おっと。いけない、いけない。忘れ物、忘れ物……」
エミは二人を待たせていることを思い出すと、教室へと早足で向かう。
少しの出来事なのに、なんだか長く感じて、それでいて、彼に関係する人たちばかりと出会って少し変な感じがする。
そんな複雑な思いを胸に、エミは教室の扉を開けようとする。
「……」
が、彼と仲の良い二人と出くわし、その二人共に違和感を覚えた身として、気になったのか、隣のクラスを除いてみることにする。
彼の近くにいる二人と出会った。
ということは、この先に彼がいる。
しかも今は誰もいない。
少しの緊張を胸に少女は隣のクラスの扉を開く。
するとそこには――、
「『そうま』!?」
目の前にいたのはやはり彼だったのだが、少し様子がおかしかった。
右の頬が少し腫れていて、襟元に少ししわが寄っていた。
片膝を立て、上を見る姿は凛々しいが、それよりも何があったのかに気を取られる。
「どうしたの、その怪我っ!?大丈夫っ!?」
慌てふためきながら、彼の頬を大胆にも触れようとした時――、
「……触るな」
酷くきつい言葉だった。
でも、それよりもその姿がどこか寂し気で可哀想に見えて、
「何があったの?もしかしてさっきの二人?喧嘩でもしたの?」
気になることが重ね重ね、次々と質問として現れる。
そんな事にも――『真蒼黒竜』は動じずに答える。
「何でもない」
平然と返されて、少し呆れながらにも安堵するエミ。
「ふう……。もう、嘘はいいから。はい、いくよ?」
エミは、彼の不思議にも嵌めてあるグローブの手を取り引っ張る。
「おい、どこに……」
勢いのままに連れて行かれるクロは、嫌々ながらについていく。
「ほ・け・ん・し・つ!」
エミは微笑しながら一回にある保健室を目指し、階段を駆け下りていく。
この手の温もりと、ずっとこの時間が続けばいいのにと秘かに思いながら。
こんな小さな幸せに浸っていたいという、可愛くもちっぽけな願いを乗せて――。
――分かれ道。そして新たなる交差点。
受け入れから始まった、諦めの物語――




