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蒼のAGAIN  作者: 「S」
第二章 2桁の『災悪』と絶望の病
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第二章13 『Re:Play』

長くなってすみません。今月中に挽回するために、あと2話ほど乗せますので。そして、来月では60話を目指して、最低でも40話まで乗せたいと考えていますので、よろしくお願いします。遅れましたが、遅くなってすみません……。

「できないことはないですけど……」


 重苦しく、それでいて可哀想に見える彼の背中は、その体には似合わないほどのものを抱えている。



 そんな彼――『真蒼黒竜』を見ながら、少女は胸に苦痛を覚える。



 この感情を何と言っただろうか。


 そうだ……。



 ――悲しみだ……。



 少女は胸に手を当てながら考える。


 今目の前にいる少年を見ていると、まるで自分の事のように苦しみが伝わってくる。

 そして、それが何よりも悲しく、何よりも愛おしい。


 少女はこの感情に浸りながら彼の背中に手を添える。


「アオ?」


 死んでいても、彼の鼓動が伝わってくる。


 暖かく、そして優しく。


 彼の心臓は死んでもなお、時を刻み続ける。



 終わりなどないかのように――。



「……わかりました。クロが望むのであれば、私は――構いません」



 諦めたのか、受け入れたのか。アオはそっと応える。


 そんなアオに申し訳なさを感じてか、クロもまた静かに謝罪する。


「……すまないな、迷惑ばっかかけて……」


 何度も、何度も。アオは呆れさせられてばかりで、このことにさえ呆れてしまう。


 それでも、目の前にいる少年の心配は絶えない。


 だから、ずっと支えていたいと、隣にいたいと心底思い、許しの言葉を掛ける。


「全くですよ……。こんな壊れかけの心なのに……」


 クロの背中に手を当て、憐れむ。


 そのことに対してか、クロもまた、心配を掛けまいと、そっと応える。


「……壊れても、直せば何度だって使える。だから、大丈夫だよ……」


 その言葉にアオはムッとしながら、問いかける。


「それでも、限度があります。限界が来た時、クロはどうするつもりですか……?」


 少しの間が空き、本当のことを吐き出すように、愚痴を溢すように、クロは口にする。


「……さぁな……。先のことは、その時考えるよ……」


 その答えに調子を狂わされながら、アオは呟き気味に口を開いた。


「……ほんと、らしくないです。今のクロは……」


 苦しみ続けるクロの姿はまるで自暴自棄。諦め癖はいつものこと。

 面倒臭いことを嫌って、やる気がなく、『無』に囚われた揺るがぬ者。


 そんな彼が、諦めることをやめた。


 けれど、彼には諦め以上に投げやりのような焦りが生まれている。

 どうしようと言わんばかりの失敗の恐怖が彼を取り巻いている。



 ――だから、



「……っ」


 クロの身体が暖かく、そして優しく、そっと包まれる。

 負ぶさるように、抱かれるように、覆い被さる。

 首に巻かれる手に触れようとするも、躊躇い、身を委ねる。



 ――ただ、



 この静寂はとても心地よく、いつまでも浸っていたいと思わせる。



 ――そう、



 この空間に、言葉なんていらなかった――。



      ※



 ――さて、



「で、どうしようか?」


「なんかそのセリフ何回も聞いている気がします」


「そうだっけ?」


 わかっていながら、わかっていないふりをするクロ。


 この何気ない久しぶりの会話を不思議に思いつつも微笑を浮かべる。


「そうですね……」と考えるアオ。

 会話が切り替わることにクロは意識を向ける。


「まず、クロは先の続きをせねばなりません」


「というと?」


 空気が重くなり、真剣味が増していることにちょっと苦笑しながら、何となくだがわかっている答えを確かめるべく求める。



「クロの後悔は断片的ですが、続いています。だから、その次に進むためには今の後悔を終わらせなければなりません。ただ――、」



 アオは言葉を区切り、申し訳なさそうに口にする。


「戻ることはできても、次に進むことができない。それが今の停滞した現状を生んでいる……」


「……」


「『Plaza・Gate』を使えば、『リプレイ』できます。……が、一つ目を突破していないため進めない……そういうことです」


 聞き耳を立て続けるクロに、アオは考え込みながらクロの横切る不安を無くそうとする。


「……まぁでも、なんとかなるかもしれません」


 だが、それと同時に意味深な笑みを浮かべるアオに少しゾッとする。

 嫌な予感という甘い感じではなく、憎悪のような完全たる恐怖と言えばいいのだろうか。

 それほどまでに少し、この空気間に嫌悪する。


「とりあえず、場所を移しましょう」


「どこへ?」


「それは、後のお楽しみですっ」


「……」


 久しぶりに見るその純真たる笑顔に少しばかり揺らいでしまう。

 部屋を後にし、道中アオは暗闇の中、呟く。


「……覚悟だけは、しておいてくださいね」


「……」


 その言葉に、緊張感を走らせながら気を入れなおすクロ。


 自分から望んだ逃げの選択。

 だがそれは、新たな道を選び前に進もうとしているだけとも考えられる。

 どちらにせよ、今進んでいく道は暗闇しか広がっていないのは確かだった。


「着きましたよ」


「……」



 目の前に立ちはだかるは、また新たな『(もん)』だった。『Plaza・Gate』とは違う、それだけははっきりとわかる。


 何故なら、『Plaza・Gate』は金でできているかのようなもので、こっちは黒や赤で彩られた何かの肖像が掘られている不思議なものだからだ。


 クロがそれを眺めている間に、アオは設定を済ませ、終わらせたのかこちらへと視線を向ける。

 相槌を打ち、一歩、また一歩、開いた扉の光の先へと進む。


 また新たな光が身体を包み込んでいく。

 真っ白な光が、灰色、黒とどんどんと濃くなる。


 中央まで来たのか足を止める。

 辺りを見渡すがそこには霧のような、もはや光なのかもわからないものが舞っているだけ。


 ただ、だんだんと眠気が身体を襲う。

 身体がよろつき、意識が保てなくなる。

 膝をつき、立つことすらままならなくなる中、誰かの声が聞こえてくる。



『汝の記憶、我に捧げよ』



「……っ」


 黒き霧が渦を巻き、クロの頭に紫電のような痛みが走る。

 長く、長く、迸る雷光は頭を、そして身体を、それぞれを駆け巡る。

 そんな中で、薄半開きの目は現状にではなく、別のものが映る。


 一回目の『AGAIN』。

 それが頭の中を走馬灯のように流れていく。


 始めから最後、終わりから最初。

 何度も何度も往復するように繰り返されるのは、まるで加速するギアエンジンのよう。

 青火花が散るように、ただひたすらに頭の中でディスクが回転する。


 そんなイメージと犇めく金属音。爆発の混じる電撃。

 頭の中が機械仕掛けになったかのような、そんな衝撃。


 1分近く起こったそれを耐えきると、悶える力など無く倒れる。意識が朦朧とする中、最後に写ったのは、扉から近づく、誰かの影だけだった。



 そのまま、ゆっくりと、クロの意識はまたどこかへと旅立った――。



      ※



 扉の先に彼が入り、先の通り中央により倒れる。

 その姿を確認すると、彼女はそのすきに、頭、腕、腰と機械を装着させていく。

 それにより頭からぶら下げられる彼の姿は、まさに操り人形のよう。


 装置を起動させ、『ギアブレイン』に搭載されている『マイクロエンジン』を作動させる。

 小さな静電気ほどの紫電が迸る中、彼女は彼を覗き込むように座り込む。


 1分ほど経過し、彼から装置を外す。

 元あった通りに寝かせると、彼女は颯爽と出口へと戻り、扉の外で彼の帰りを待つ。

 自分で挙げた案なのだが、彼に隠す秘密は多く、このやり取りにまだ少し気が重い。


 けれど彼女は、彼のためだと強引にも押し切る。

 ひっそりと彼が立ち上がっていく姿を見ながら、彼女は胸を押さえる。



 望み、望まぬ、その間に立っているから――。



      ※



「……」


 目を覚まし、額を押さえる。

 半開きの目と、見るからに体調の悪そうな青ざめた顔。

 冷や汗のようなものを流しながらクロは、さっきまでのことを思い出す。



 扉の先へと進み、『AGAIN』の記憶を流されて――。



「……あれ……何だっけ……」


 思い出せない、虫食いのような空白。

 思い出そうとすると、闇の彼方へと消えていく。


 ただ、完全に忘れて思い出せないというほどではなくて、朧気に、極僅かだが心当たりのような何かがあることはわかる。『AGAIN』の記憶の印象が薄れているとでも言えばいいのか。


 頭を横に振り、抑えながらも立ち上がる。

 光刺す扉の方へと足を運び、ここで何があったかを何となくだが整理する。


 まず、『AGAIN』についての記憶がほとんど消えている。


 いや、『記憶が』ではなく、その記憶に携わる感情、思考、印象などなどそれらが薄れてなくなっている。


 記憶自体がなくなっていなくとも、そこで感じたことや思ったこと、それらが先のシステムによって消されたことで、印象が薄れ、何も感じなくなっている。そんなとこだろう。


 何も感じなくなってしまえば、後悔なんて生まれない。事実、そんなもの自体がなくなる。


 つまりは、後悔の発生源である思考・感情を消し去ったということ。

 そうすることで、『AGAIN』での日々は、ただ茫然と過ごしていた、ということになる。


 結局のところ、本当の『無』というものを手に入れたのだろう。


 凄い事なのに、憧れた事なのに、喜びも興味も、どうでもいいと思う気持ちも、何に対しても何も思わない。


 そうなってしまっていた。


「……」



 ――まぁ、これでいいのかもな。



 自分が望んだものを手に入れた時の喜び。

 そんなものが一切感じられない。



 ――それより、



「……っ」


 光が身体を包む。

 眩しさを腕で遮りながら、片目を閉じた状態で扉の外へと出る。


「クロ」


 扉の前、呼び声のする方を向くと、そこに彼女はいた。


「アオ」


 笑顔で囁く少女の名を同じように呟く。

 満面の微笑みは手に入れた無を凌駕するように心を満たしてくれる。


 その幸せに浸りながら、二人は最終段階へと移行する。



 ――すなわち、



「そういえば、レイって何してるんだ?」


 今更ながら気づいたことに、呑気な不思議さと自分の不甲斐無さに違和感を覚える。


「ああ、それでしたら……」


 思い出し気味に歩きながらアオは言葉を綴っていく。


「『AGAIN』を修正しに行っています」


「……」


 ……ああ、何となく予想がついた。



 ――たぶん、



「クロがあんな無茶するから、ため息気味に作業に入っていきました」


 なんだろう。頭に浮かぶ……。


「レイさんがいなかったら今頃、クロは消えていましたよ?」


「すまん……」


「全くですよ……。ほんとに、もう……」


 歩みを進める薄暗い廊下で、微笑み気味に応える姿は、呆れているというより、ほっとしているというのに近いものだった。



 ――ただ、



 何となくだがアオの気持ちはわからなくもない。

 アオが言っているのは、あの飛び降りた瞬間、『AGAIN』が中断された。


 つまりは、あの『時』を止めたということ。

 あのまま、クロが飛び降りたままだったら、ここに戻ることもできず、過去の自分と共に死んでいた。

 それは、今のクロの存在が消えることを意味する。


 過去の自分が死んでしまえば、今の自分はいない。道理だ。

 そう考えると、先の行動は慎むべきものだった。アオの言い分もわかる。



 ――けれど、



 不安も、焦りも、罪悪感も。

 そういう動揺観念が今の自分からは一切感じられない。


 これが真の『無』ということなのかもな……。


 いつ死んでもいい覚悟はしていた。もう死んでいるが……。

 でも、自分から死のうとは思わなかった。それが今までの自分だ。


 けれど、死を味わってから、何も感じなくなった。

 軽いと思っているわけじゃない。諦めでも、どうでもよさでもない。

 これも、おそらくは『無』が関係しているということだろう。


 こう考えてくると、不思議に思えてくる。

 哲学的親近感なのか、『無』というのは『世界の始まり』で、それを今実体験しているのだから。


「『無感の帝王』……」


「……?」


 突然のアオの呟きに疑問符を浮かべる。


「どうですか?今の気分は」


 何気なく、今の心情を問われたので、そのままの自分を見せつける。


「……ああ。何とも言えない感じだ」


「ふふ、そうですか」


 笑みを溢しながら答える姿に少し、クロは微笑ましくなる。


「嬉しそうだな」


「いえ……。まぁ、ちょっとは理想に近づけたんじゃないかなーって……思ってみたりして、と」


「ふむ、そうだな……」


 突然と投げ掛けられた言葉。


 理想に近づいたかで言えばそうだな。


 『無』を自分から自然となることは容易いが、その逆はない。

 今は『無』から自分を演じて取り繕っている状態。まさに道化。


 ただ、悪くはないという状況かな。



 ――俺は、ここでも自分を……。



 クロは思いを重ね重ね、それを言葉にする。



 少しでも自分であろうとするために――。



「まぁ、悪くはないかな。元々、憧れていたものだしな」


「『無感の帝王』にですか?」


「……なぁ、その『無感の帝王』ってなんだ?」


 わかっている。知っている。理解している。


 なのに、言葉を求めるのは、誰かの口からちゃんと言ってもらって、自覚したいから。

 自分の答えがあっているかどうか、知りたいから。



 ――やっぱり、探求者なのかもな……。



 求め続ける彼の姿は、まさに探求者。

 でも、その探し物は遥か高見。手にも届かぬ空想のもの。


 手にできないものを望み続けるのは『愚か』、なのかもな……。

 夢見がちな少年の望みは、遥か高見の、遥か彼方のどこまでも、か。

 絶対はないと思ってはいても、俺が望むものはどこにあるんだろうな……。

 たぶん、どこにもない。

 わかろうとしているのに、それがとても、息苦しいほど味遭わされる。



 これが、『絶対』というように――。



「『無感の帝王』は、今のクロの状態です」


「……」


「わかっているのでしょう?」というようなアオの顔ぶりに、少し違和感を覚える。

 こんな探り探りの展開をアオとするとは思わなかった。


「アオには敵わないな」


 ため息交じりの諦め言。これは本当のことだ。

 自分でも呆れるほどに、アオには不思議と全部を見通される。

 こんなの初めてだな。


「それで?その『無感の帝王』とやらを教えてもらえますか、アオ」


「しょうがないですね」というように、アオは仕方が無さの雰囲気を醸し出しながら説明していく。

 その説明が何故かとても心地よくて、思わず口元が緩む。

 こんなにも自分を理解してくれている者がいる、と。

 正直、不思議と怖いほどに。


「『無感の帝王』。それは、クロの今の姿です。今までは不完全な心を持った仮面をかぶり続けた道化。でも、それが素で、根っこを本物の『無』にしたのです。それにより、今までとは『逆』になったでしょ?」


「oh……」


 クロのそんなニュアンスを不思議に思うも、アオは淡々と説明していく。


「だから今のクロは、私にも自分を隠している。誰にも、絶対に、完璧に、本性を、心の底を、内側を、現わにしない。今ではもう、自然とそうなっているので凄いものです」


「……」


「本当に見透かされてる」と、正直思うものもあるが、何も感じないことに納得してしまう。


「『無感の帝王』は、今までの中途半端に残っていたクロの感情を無くした、自分を偽り欺き続けるクロの本当の姿。慈悲も、容赦も、哀れみも。全てを無くした、今までのクロです」


「……」


 アオの目が半開きになり、全てを見限った顔をすることに新たな印象を持つ。



 怖いとかじゃない。驚いたとかでもない。ただ――、



 ――同じだ……。



 全てを見限ったその目が、姿が――俺と、一緒だった。



 ――でも、



 アオの足が止まる。

 合わせるようにクロも歩みを止めると、目の前にまた、あの扉があった。

 そう、『Plaza・Gate』だ。



 ――今度こそ……。



 新たな決意が生まれるも、もう何度目かというように思ってしまう。

 何度でも、何度でも、また立ち上がってみても、変わらぬ現実が押し寄せる。

 もう現実が何なのかわからなくなってくるほどに。


 本当にできるのか、不可能ではないのか。

 そういう考えだけが、『無』というこの状況でも、頭の中でひしめき合っている。


 そんな『無』という狭間で立ち尽くしていると、またもアオは設定を済ませて疑問符を浮かべるようにこちらを見ていた。


 応ずるように踏み出そうとするが足がいうことを聞かない。

 自分でもわからない現象に首を傾げる。


 怖気づいたわけでもなく、単純に動かないことに不思議に思う。

 動揺するわけでもなく、動こうとするが動けず。


「ふむ」


 どうやって動けばいいものか。

 そう考えていると、


「どうかしましたかー?」


 アオから声を掛けられ、答える。


「実は……」



 説明しようとした――その時だった。



「……っ」


 身体が斜めに倒れるように揺れる。

 転げそうになり、それを踏み止まる。

 その現象に少しほど安堵を浮かべるのも束の間、変化に不思議に思う。



 ――足が、動いた……?



 ふと、倒れる寸前に、背中に何かが触れたことに気づく。

 後ろを振り向き、当然のように何もないはずなのに、何故だか温かな風が頬を伝った。


「お前か……」


 誰もいない廊下を見渡しながら、一人呟く。

 そして、笑みを浮かべて前に向き直る。


『もう大丈夫、だね?』


 ああ。俺はもう、振り返らない。



 ――だって、



『後戻りは、もう、できないのだから』


 声が重なる。目には見えぬ、謎の誰か。

 でも、知らないようで知っている。


 何となくだが気づいている。

 そんな『彼女』へ向けた、お別れの言葉。


『現実を受け入れろ』ということがまさに起きた気分。

 そんな思いを抱きながら、少年は再び、扉の先へと進む。



 身体を光が包んでいく中で、踏みしめていく足跡だけが、彼の最後に聞いた音だった――。



      ※



「……っ」


 瞼を開け、ふと気づけば、目の前に広がるのは海のように後代に広がる雲一つない青空だった。


 眩しさに目を慣らしながら、再確認する。

 ここは、クロが飛び降りる前の『時』。



 何故なら、目の前に稲妻のようなアホ毛を生やした茶髪の少年――『鬼塚亮助』、通称『キスケ』がいるから。



 そしてクロもまた、13階ビルの屋上であるその中心に突っ立ているのだから。


 その目の前にいる少年の後をついていくようにそこを後にする。


 彼らが目指すは、三つ並ぶ裏山の一つである葬儀場。

 彼らは今から別れを告げに行く。


 失われた『もの』は、もう、取り戻せない。

 ないものを数えたって仕方がない。



 ――そうだろ、リナ……?



 今はもう、亡き者へと向けた問いかけ。


 ただそれは、彼女の意志だと信じている。

 彼女が押すのだ、彼の背中を。


『後ろばかり見ているんじゃなくて、前を向け』というように。



 ――そう、



 彼は、前に進むことを決めたんだ――。



 ――少年は、後戻りできない旅で前を向く

  新たに始まる先の過去――

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