第二章9 『Repeated Nightmare』
すみません。いろいろ用事ができてしまってかけてませんでした。言い訳は見苦しいですね。ともかく、ここから巻き返すため、この休日で5話ほど載せますのでよろしくお願いします。これは、その第一弾です。久しぶりなので、今まで以上に変な文になっているかもしれませんが、伝われば幸いです。
――青暗く染まった部屋で光る、とある二つのボタン。
だがそれは、誰も押すことなどできないもの。
押すことなどできないその赤と緑のボタンは、指定された者によって、とある機能が作動する。
そして、今がその時というかのように、自動的に発動するシステムである『Repeat』がカチッと音を鳴らして作動する。
切り替えられたその動作は不快なものを感じさせる。
ボタンによって発動を余儀なくされたシステム『Repeat』。
それは、正しく意味合い通りの言葉。
――繰り返し。
今、それが、指定された者によって行われる。
それが齎すものを誰が予想できるだろう。
止めることなど誰にもできない。
しいて言うのであれば、この現状を招いた者。
または、その『時』を送ってきた者による。
ただ、今行われる現状で言えば、最悪の何物でもない。
誰にも予想することのできないこの結果。
やはり、変えることなどできないのではないか。そう思わざるを得ない。
今ならまだ間に合うであろうこの現状に、示すは広がる空間。
止めることはできる。今ならまだ間に合う。
そう、今なら……。
――だが、
魔が差してか、運が悪くも、この部屋には今、誰もいない。
――そう、
今、誰もいないこの空間で気づく者など、誰一人として、いなかった……。
※
「……っ」
光が満ちた世界で、目を開けるも、そこに広がるは先と同じ光景だった。
少し戸惑いはするが、動揺はしない。
変わらぬ『無』しかないこの平常心と冷静さは、驚きというものを知らない。
そんな彼――『真蒼黒竜』は、この現状にいつものお得意である感が働く。
起きてほしくない、二度と味わいたくない、そんなものがまた繰り返そうとしているのではないか。そういう予感が働く。
よく当たる予感は、時と場合によるが、このときの場合は嫌な感じしかしない。
――そう、
今、目の前に広がるは、光が満ちる前と同じ光景。
違うものがあるとすれば、さっき立っていた場所の近くにいたはずの『鬼塚亮助』こと『キスケ』が倒れていたことだった。
そんなことに目もくれず、辺りの状況を確認する。
非情にも、もう一度倒れているキスケに目をやる。
息はあるのだが、眠っているのか、気を失っているのか。
どのみち、生きてはいるので、気にも留めずに辺りを確認する。
結局、放っても置けないので、肩を貸して、起こさないように?ソファへと運ぶ。
毛布を掛けてあげ、一息をつく。
周りには寝ているのかわからないが、二人の少年少女を確認する。
腕枕をして、眼鏡を外し、ナイトキャップをして眠りにつく――『間木野斗条』。
――そして、もう一人
大きなベッドに埋もれている少女――『世恋恋奈』。
小さな眠る姿は愛らしさと、どこか寂しさを感じさせる。それもそうだろう。
彼女をフリ、それなのに一緒にいるのだから。
そんなリナの目には涙が伝った跡があった。
たぶん、秘かに泣いていたのだろう。
リナに複雑な感情を抱きながら、クロは立ち上がる。
もう一度見ておきたいと、夜空に浮かぶ満月を見上げる。
まだ終わってないというようなこの夜を、この違和感と胸騒ぎを、この嫌な予感を。予想がつきながら何も思わず、ただ目に焼き付ける。
さて、どうしようかというように。
※
いつもの朝を迎え、悪い事にも、何もなかった。
――そう、何も……。
フラれ、傷ついたはずのリナは、明るく振る舞っている。
立ち直りが早かったとしても、今見るこの光景は異常だと言える。
斗条と意味深な笑みを浮かべるキスケ。
そんな怪しげな会話の光景にも、普通でありながら異常さを感じるばかり。
あんなことがありながら、『世界』はいつも通り回っている。
これが、『AGAIN』の影響だとするのなら、自分にも関係があるのではないか。そう考えるも、答えは見つからない。
モノトーンが広がる教室で、いつも一人、窓辺に遠くを眺める。
見つからぬ答え、怪しげで不吉極まる現状は、嫌な予感が膨れる一方で、納まらない。
猶予の無い限られた時間の中で、少しばかり焦りが生まれそうになる。
こんな時こそ冷静にと、自分をいつも以上に落ち着ける。
周りからすれば深刻さ極まりない顔だっただろう。
結局、時間だけが過ぎていき、何も見つからないままだった――。
※
――五日。
今日を含め、それだけの月日が流れていた。
カレンダー的には何日も。クロ的には五日。
空き空きで流れる日々に不思議さはもう感じないが、後悔のあった日にこうも味遭わされるのは複雑だった。
いつも通り、ベッドに横たわり、腕枕で天井を眺める。
謎が謎を呼んでくるというこの鬱陶しさに、少し文句を言ってやりたい。
だが、そんなことよりも頭の中を整理することが先決だった。
暗く、影が広がる自室で、回想と解決策と振り返りとまとめ。
何だか勉強のような感じで最終的に、今やらなければ行けないことを思い浮かべていく。
『AGAIN』が後悔を無くすためのやり直しだとするなら、こうしておけばよかったという選択をすればいいだけ。そう考える事だろう。
だが、その選択肢の先は誰にもわからない。
そうしたことで、望む未来が待っているかどうかは定かではないのだ。
誰もが都合のいい未来を想像しているだけのこと。
――今が、その通りの現状だった。
『もしも』を描き、伝えきれなかった想いをぶつけ、できなかったことをし、謎を突きとめるために動く。そうやってきた。
いろいろありすぎて、ごちゃごちゃしている頭を整理するクロ。
自分は何の後悔をしているのか。
それをどう解決するために、どういう未来を想像していたのか。
それを断片的に振り返る。
俺の後悔――。
それはまず、6歳の時に初恋との別れを告げれなかったことから始まり、これがまず一つ。
これは、約束を守れなかったため、守りたかったということ。
伝えきれなかった想いを打ち明けたかったということ。
これが望んだもしもであり、解決策だった。
二つ目――それが今現在進行形で起きている。
それは親族を失ったことではない。
むしろ、それは良かったと思うほどのことだ。
窮屈に何かに縛られて生きるのなら家族などいらない。
それがクロの願いであり、望みだったのだから。
なら何なのか。
それは言うまでもなく、この『力』で失われるリナを救う事。
どうして彼女を失う羽目になったのか。それはわからない。
ただ、クロが触れた人たちは必ず消えていく。それは確かだった。
今の目的は、リナを失わずして救う事。
そして、そのためには嫌われるのが一番だ。
距離を置いて、一人になればいい。
ここで崩壊させよう、あいつらとの関係を。
大丈夫、一人には慣れている。心配することなんてない。
解決策を改めて決意し、机に置いてあるグローブを見る。
触れるのが発生源だとすれば、『直に』触れなければいい。
そういう考えだったが、それはいささか単純だ。
胸から現れる黒く燃える光。非現実味溢れる力。
そんな甘くないものだと本能がそう叫ぶ。
これはクロの直感だが、その直感がよく当たるのだから。
この不思議な力は調べたところで何もわからずじまい。
なら、それによって生まれる被害をどう防ぐかを考えるしかない。
もしも、『直に』ではなく発動してしまった場合、グローブだけでは対処できない。
考えすぎだと思われるが、この想像力の豊かさゆえに、助けられたことは多々ある。
だから無駄でもなく、心配症ということでもない。
ビビりなのではなく、用心深く、抜かりの無いようにしているだけ。
そして、そのためにはまず、嫌われるのが一番だが、これには理由がある。
利益として、この泥沼関係の脱却。
リナに嫌われれば、その好意もなくなり、三角関係ではなくなる。
別に好きな人がいるからという理由ではない。ただ、複雑なのだ。
好かれる気持ちは悪くない。向けられた好意に応えることも構わない。
だが、それを望まない者がいる。
全てをうまくまとめるというのは不可能だが、近づける最大の答えがクロにはこれが一番だった。
それを今、絶賛実施中なわけなのだが、それとしてはまず、リナの好意をはっきりと断ることが先決だった。
だが、それにより生まれたのが、この異常な現状。
嫌われたのとは違う。
関係が崩れたわけでも、無くなったわけでも、忘れられたわけでも、戻ったわけでも、保留になっているというわけでも、気にしてないというわけでも――ない。
こうなった場合お手上げだが、これが最悪の事態だとすれば、話は別だろう。
これは全く持ってクロの仮説なのだが『AGAIN』に失敗、もしくは『AGAIN』により、この『世界』に異変が起きているのではないかということだ。
まぁ、どちらにしろ、結局は自分に関係することなのだが、それは考えてもわからないため放置する。
それで、もしそうだったとしても、それならそれで対処の使用はわからないため、結局はどうしようもない。
ならば、今この現状を生き抜くしかない。もう死んでいるが。
考えはまとまり、体を起こす。
すると、インターホンの音が鳴る。
「俊か」と思うが、あいつは旅に出ていないとすぐさま答えが出る。
家に来るやつなんぞ、他にはいないと思いながら階段を下りる。
玄関にたどり着き、扉を開ける。
そして、閉門に一人、見覚えのある人物が立っている。
グレーのコートに身を包み、紅色のミニスカートと革のロングブーツを履いた大人びた格好をした少女――リナ。
あまりにも予想だにしないことに驚き気味になるが、そうでもなく、普通に落ち着く。
ただ、幼馴染であっても、うちにくることなど全くと言っていいほどない。
――それでも、
目の前にいるリナに対し、ざわつくものが胸騒ぎとして現れる。
心臓を掴むように胸元を握り締める。
この光景に見覚えがあるからだ。
「なんで……」と呟きそうになるのを口は震えて動かず。
クロの存在に気づき、俯き気味だった顔を上げるリナ。
その顔に浮かぶは小さな微笑み。
その笑顔は、優しげなものなのに、クロには――、
――怪しげで不吉さを覚える冷たきものだった。
――再来する悪夢は、同じものだった―—




