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蒼のAGAIN  作者: 「S」
第二章 2桁の『災悪』と絶望の病
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第二章4  『幼馴染』

何だかよくわからなくなってきます…いろいろと…。

「はぁ……」



 学校が終わり、帰宅後、二階にある自室のベッドに勢いよくダイブする少女――『世恋恋奈』。



 リナは盛大な溜息と共に今日のことを思い出す。


 苛立ちにより足をばたつかせ、唸り声をあげる。

 枕を抱きしめながら起き上がると、頬をほのかに染めながら呟く。


「クロのバカ……」


 枕に顔を埋め落ち込んでいると、声が聞こえくる。

 それは、下の階から呼ぶママの声だった。



「――リナぁ~?お友達よ~?」



「はーい」という返事と共に部屋を後にする。


 階段を駆け下ると、玄関に見覚えのある少年が二人立っていた。


 くせ毛からなる茶髪にむき出しの犬歯。

 青と黄の縞模様Tシャツと少し長めのベージュのズボン。

 露出された手足は鍛えられ、青色の運動靴は使い込まれており、やんちゃさを感じさせる。



 そんな「ニシシッ」と笑う少年――『鬼塚亮助』。通称『キスケ』。



 そして、その隣にもう一人。


 くせ毛だらけの髪に黒縁メガネを掛けた少年。

 緑と黒のチェック柄をした上着に黄色のダウンベスト、下はジーパンとスニーカーで着こなしている。



 同じ小学生とは思えないほどに大人びた、表情が読めない少年――『間木野斗条』。



 彼等はリナの幼馴染であり、よくつるむことのある『親友』とまではいかないが、それほど仲のいい存在だ。


 その中にもう一人。


 仲のいい友がいることを思い出す。

 彼はそうは思っていないだろうが……。


 リナの顔が徐々に顰めっ面になりながら、その表情に二人は予想がつき、冷や汗を垂らす。

 リナは、ふと、二人の視線から気を取り直す。


「どうしたの?何か用事?」


 単純な質問だった。


 キスケは「うん……」と頬を掻きながら目を逸らす。

 斗条に目線を変えると真剣な顔立ちだった。


 その事にリナは「ハッ……!」と察する。


「とりあえず、上がって?」


 突然の来客を招き入れることに躊躇は無い。


 何故なら、部屋はいつも通り綺麗だし、何より、斗条の顔がただ事じゃないことを指示している。

 斗条が真剣味を帯びた時、それを証明している。


 階段を上り、部屋へ。


 二人はリナの赤やピンクや白で彩られた部屋に少し驚きを覚える。


 彼女の性格からして部屋が綺麗だということは知っているが、こんなにも女の子らしく、可愛い部屋なのだろうと。

 彼女らしい部屋に少し見とれるも彼女に視線を移す。


 お菓子と紅茶が運ばれ、一息つくと「さて……」と本題に入る。


「それで、どうしたの?」


 二人揃っていることから、たぶん、クロのことだろう。

 そして、その予想は見事に的中する。


「うん、実はクロのことでね……」


「ちょっと話が……」という申し訳なさそうなキスケの姿に少し苛立つ。


 平然としている斗条に二人は視線を移す。

 眼鏡を修正し、逆光を浴びつつもゆっくりと斗条は口を開く。


「クロは、俺たちに隠し事をしている」


「そう……」


 斗条の言葉に呆れるように息を漏らすキスケ。

 リナは俯き暗い表情を浮かべる。


 それに気づきながらも、斗条は自分の分析結果を淡々と報告していく。


「まず、俺が気づいたことから言わせてもらえば『あのクロは、クロであってクロじゃない』ということだ。そしてそれは……」


「……ちょ、ちょっとまって!」


「……何だ」


「どういうこと……?」


「言葉通りの意味だ」


「お前は少し言葉が足りねぇんだよ!」


「……」


『むすっ』とする斗条は気を取り直し、二人の疑問の説明していく。


「今のクロは、俺たちの知っているクロに似ているようで少し違うということだ」


 斗条の説明に唖然とする二人。


 戸惑いに駆られながら、理解が追い付かないため整理する。


 それでも疑問が絶えないため、斗条の言い分に耳を傾ける。


「今のあいつを見たのは今回で二度目」


「「二度目?」」


「そ」と反応する斗条に二人は「「いつっ!?」」と怒り気味に顔を乗り出してくる。

 斗条は動揺するも、眼鏡と共に修正する。


「いつかは忘れた……。だが、これは確実だ」


 少し呆れ気味になるも、二人はさっきまでの焦りを落ち着かせる。


「日にちは忘れたが、これはお前も知っていることだぞ」


「……?」


 斗条はキスケに視線を移し、説明していく。

 キスケと共にリナも疑問符を浮かべる。


「世恋は知らなくて当然だ。なんせ、風邪で休んでいた時の出来事だからな」


「そうなんだ……」


 いなかったのなら知らなくて当然。致し方ないと平然と頷く。

 キスケは腕を組み、唸りながら思い出そうとしている。


「思い出さないか?休憩時間、お前がいつものようにキャッチボールしてた時……」


 顔を近づけ、囁くように口にする言葉に、思い当たる節があったのかキスケは「ハッ」と目を見開いて顔を上げる。


「そうだ、あの時……」


 キスケは思い出しながら、呟いていく。


「……いつも通りキャッチボールしてた時、いつだったかあいつの返すボールが一度だけおかしかった時があった」


『フッ』と怪しげな笑みを浮かべ、斗条は誘導尋問のように会話を進めていく。


 ただ、リナは『たかがそれだけのこと』だと内心思いつつも、不思議と変にも思う。

 何故ならクロは、他人に絶対心を開かないからだ。


 無感で無心。孤高で無関心。どんな時でも常に『無』なのだ。


 諦め癖で、面倒臭がり屋。

 そのくせして、一度決めたことはやり通す……。

 何か矛盾してるよね。


 他人に全く興味が無い。

 言葉すら交わそうとしないほど、誰とも関わろうとしない。


 だから、彼が揺らぐことなどありえない。


 それはただ事じゃない!


 斗条の言い分に納得がいき、キスケの回想が終わる。

 それと共に、「何でわかったの!?」と聞きたくなる衝動を抑える。


「クロがどうしてそうなったかは俺にもわからんのでそれは置いておく。それで、あいつの隠し事だが……」


 ついにクロの謎が一つ明かされるということに、二人は、緊張ながらゴクリと唾を飲み込む。


 一瞬の間が長く感じるも、斗条の言葉により切り裂かれる。


「あいつはたぶん、俺たちとの縁を切ろうとしている……ということだ」


「ぇ……」


 突然の言葉に声を漏らす。


 それよりも、今までのことを無かったことにしようとすることに酷さを感じる。



 ――だって、私はもう……。



 クロのことを思いながら、胸を押さえる。


 そんな彼女に二人は気にせず会話を続ける。


「それで?どうすんだよ?」


「そうだな……」


 こんな時でもニヤ気面のキスケはとても呑気そうに、そして何だか嬉しそうだ。

 斗条も少し楽しそうに見える。


 そんな彼等に少し驚く。


「何でそんなに平然としていられるの……?」


「ん?」


「だっておかしいよ……。確かにクロは私たちから離れたいのかもしれないけど……」


 悲し気にどうしようもなく意見しようとするリナ。


 その言葉は、はっきりと打ち切られる。


「それは違うよ」


「ぇ……?」


 彼等は明るくも厳しく否定する。


 鋭く、まっすぐに輝くキスケの瞳に見入ってしまう。


 不安気な彼女に、キスケは投げかける。


「あいつが俺たちと離れたいわけがないよ」


「……」


 自信満々に答える姿に、少しほど呆れてしまう。

 斗条もわかっているかのように微笑んでいる。


「だってさ、俺たちは今までずっとつるんできた幼馴染なんだぜ?親友とまではいかなくとも俺たちにはもう、切っても切れない関係が確かにある」


「うん……」


 キスケの言葉に少し落ち着く。

 安堵の息を漏らしながら、彼女は頷く。


「それによ、あいつは親まで操るほど恐ろしいやつだ。そんなあいつが……クロが俺たちから何らかの理由で、離れ離れとか、遠ざかろうとするのなら、絶対にしないし、何とかしようとするはずだ」


 頭の中にクロが浮かび上がる。

 確かに彼なら、望まないことを止めようとするだろう。


 胸を押さえながら、ひしひしと、今までの思い出が心に染み渡っていくのを感じる。


「そして、そんなクロが俺たちから離れようとしているのなら、あいつは今、どうしようもなく、もがき苦しんでいる。自分で解決できないことが現れて、太刀打ちできなくなっている……」


「うん……」


 不安だった心が、じわじわと溶けていく。

 それと共に、決意のようなものが生まれてくる。


「なら、もう答えは一つじゃないか?」


『わかっただろ』と言わんばかりの笑みに決意が固まる。


「そうよね……クロを……」


 胸を押さえながら二人を見る。


「助けてあげよう……!」


 リナの姿に笑みを浮かべる二人。


 力になれないかもしれない。

 助けてあげられないかもしれない。



 ――それでも、



 少しの不安が過ぎるも、その決意の固さにより押し殺す。


「クロの行動は正しいのかもしれない……」


「……?」


「……」


 リナの言葉に静かになる二人。


 決意で固められた言葉に、真剣な表情を浮かべる。

 そのまま言いたい思いをぶつける。


「今まで間違ったことなんてない。それが正しいって誰もが思っていたし、誰もが救われてきたから……。だからクロの選択はたぶん間違ってはいない……」


「「……」」


「でも……その中にクロの気持ちは望んでいないってことはわかる」


「ああ……」


「そうだな」


 笑みを浮かべながら、頷く。


 そうに違いないと、断言できるから。


「力になれないかもしれない。私たちなんかじゃ助けてあげることさえ、できないかもしれない……」



 ――それでも、



「クロを支えてあげることはできる。たとえ、それをクロが望まなくても」


 有難迷惑で邪魔扱いされて、足を引っ張るだけかもしれないけど、君を一人になんてさせてやらない。させてやるもんか。



 ――だって君は、私の……。



 心に秘めた彼への想い。


 視線を合わせる三人。

 そこには、決意からなる笑みがあった。



 三人は知らない。



 その行動が彼を苦しませるものだということを――。



 知る由も、ない――。



 ――3人の決意。そこから生まれる笑み。そして知らない、

  その勘違いから生まれたおせっかいに、彼に絶望をもたらすことを――

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