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蒼のAGAIN  作者: 「S」
第一章 終焉からの幕開け
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第一章13 『お誘い』

あと1話で1章完結!次でラスト!

「……」


 辺りは寝静まった、静かな夜。

 静寂を感じながらクロはベッドの上で寝転がり、思いふけっていた。


 目に映るのは真上にある天井。

 それでも、浮かぶのは先の光景だった。


 それは、数時間ほど前のこと。

 次の『AGAIN』をいつするかという会話だった。



「それで、クロ」


「何だ、レイ?」


 何気ない会話の後、レイはクロに持ち掛ける。


「その『ミニマム』の数値から、これからが本番でしょう」


「……ああ」


 『ミニマム』に目線を向けながら答えるレイに、クロは先の話に暗く重い表情を浮かべる。


「それはクロが一番よくわかっていると思いますが、長きにわたるかもしれません」


「……」


 そう。数値から示されるのは、重たい悪夢。覚めることのない地獄の日々。

 始まってしまえばもう、後戻りはできない。



 ――今だ、今なんだよ。



 数は少ない、重いもの。


 見つめる『数』は小さいものなのに、個々が集まって大きく、より強大なものに感じる。そんな数値に圧倒される。


「私は……いえ、私たちはクロについて何も知りません。立場上、観視により知っていく形になりますが、それでも、形はどうあれ、知って、共に歩むことができます」


 真剣な眼差し。

 鋭く、熱く、迷いなど無い。そんな静かな光。


 あるとすれば、心配と不安。

 底に秘められた強い、信念とでもいうべきか。

 暖かく、安心する。そんなもの。


 安心と驚きの中、彼女は答える。


「クロ、これだけは忘れないでください」


 そんな薄く微笑むレイは美しく、輝いて見えた。


「あなたはもう、一人じゃない」


 再び放たれるその言葉。当たり前のようで、クロにはなかったもの。


 失ったそれを取り戻すために、悲しみに耐える覚悟を何度も何度もしたはずなのに、彼の胸は熱く疼く。


 強く胸を掴み、噛み締めるのに、微笑し、涙が出る。


「……ったくよう……泣いてばっかじゃねぇか、俺は」


 瞳から流れそうになる涙を拭い、クロは答える。


「ああ、肝に銘じておくよ」


 レイは微笑み、そして、アオが口を開く。


「いいんですよ、泣いたって。泣いた分だけ人は強くなれるんですから」


 アオの言葉にクロとレイは顔を見合わせ、笑みを浮かべる。

 二人して笑うことにアオは文句を溢す。


「あれ、アオいたの?」


「なっ!?」


 突然の冗談に驚くアオ。

 さほど時間もたっておらず、ずっといたのに消えた存在として扱われたことに文句を垂らす。


 「冗談だ」と訂正し、謝るクロ。

 アオも少し機嫌を悪くするも、笑みを浮かべて許す。


 そんな和やかな時間も終わり、アオとレイは部屋を後にする。

 アオはクロに手を振って、扉に向かうレイの後をいそいそと追うように出ていった。



 ――そして、現在。



 クロは次の『AGAIN』のことについて考えていた。


『AGAIN』は2日後にすることになり、それまで何をしようか考えつつ、そして、あの頃に起きた出来事を鮮明に振り返る。


 眠れそうで眠れないという歯がゆい中、クロは起きて、窓に向かう。


 再び見る景色は、夜には一層、綺麗に見えた。

 本当に自分の住んでいた街なのかと疑って信じられないほどに。


 大きな山が向かいにあり、その山を斜め上の上空から見下ろしているという変な形。

 月が山の方へ沈んでいくのがわかるが、それでも、月は大きく見えるだけで、手に届くとまではいかない。

 まぁ、当たり前のことなのだが。


 こんなにも空に近い場所なのに、届かないほど空は広い。

 星々ですら、見える大きさは変わらない。

 手に届きそうで届かないというこの感情は、まるで子供のようで、ロマンチストだ。


 知っているようで知らない、知らないようで知っている。


 そんな不思議な世界の中の夜と共に、クロは眠りについた。



      ※



 眩しい光が差し込み、カーテンが靡く。

 雀が窓に停まって、羽ばたいていく姿が見える。


 朧気に目を開き、辺りを見回す。

 目をこすりながら、体を起こす。


 片膝を立て、半ば胡坐をかく。

 立っている膝に右腕を乗せ、肘置きにして、まだ目が開かない中、辺りを見回し、ベッドの膨らみに目が行く。


『死んでいるのに、こんなにもごく普通のような朝を迎えるとは』と思いながら、その膨らみに、驚きと疑いの目を向ける。

 まぁ、何となくは予想がつくが。


 しかもそれが二つあり、一つは右隣で、もう一つは現在進行形でクロの足元からモゾモゾとこちらに近づいている。


 頭を搔きながら呆れるクロ。


 意を決して布団を勢いよくめくる。



 ――すると、



 そこには何もなかった。

 地味にゾッとする話なのだが、すぐ近くの気配に気づき、冷や汗を垂らす。


 今の一瞬で、一人の少女がクロの左肩に縋るように密着していた。

 それと同時に、布団の中に潜んでいたもう一人の少女に目をやる。


「レイ、これはどういう状況だ……」



 左肩に縋る少女――『レイ』にこの状況について問うクロ。



 目の前に潜んでいた少女――『アオ』は絶賛爆睡中。



「何って、『夜這い』です」


 レイに可愛く答えられ、困り顔になるクロ。

 まさかとアオに視線を向けるのだが、その疑いの目にレイは気づき、勘違いだと示す。


「というのは冗談で、アオはクロを起こしに来たはずが、何故か寝ているという状況。私はそれが遅いと思い、呼びに来たついでにちょっと手を出そうかと……」


 最後の部分だけ声が小さくなっていき、聞こえなかった。

 レイは「いえ、何でもないです……」と言い直し、クロは疑問符を浮かべる。


「……?結局何しに来たんだ?」


 レイは「ゔ、ゔん」と咳払いをして気を取り直し、真顔で答える。


「クロを起こしに来た」


「何で」


「……何ですか。『AGAIN』まで寝ているつもりですか」


「うん」


「……」


 何気ない会話で、起きるつもりのなかったクロ。

 することが無いのに起きても意味ないだろうという魂胆。


 眉を上げ、呆れるレイ。

 そんな小さな間に、アオが目を覚ます。


「……あれ……?クロ……起きたんですね……」


 目をこすりながら、「ふぅぁ~」と欠伸するアオ。

 そんな可愛らしい姿に、心を擽られるクロだったが、この状況に黙ってしまう。


「で、俺に何をしろと?」


「それはですね……」


「……?」


 それぞれの感情が混じり合ったいたこの空気。

 だからなのか、彼女の声はより一層、唖然とするものだった。


「デートをしましょう」



 ――夜と朝と

  ありえないお誘い――

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