表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼のAGAIN  作者: 「S」
第一章 終焉からの幕開け
1/42

プロローグ 『始まりの死』

初めての投稿です。うまくできているか不安ですが、そこを含め楽しんでくれると幸いです。

 挿絵(By みてみん)


 少年が住む街には、お気に入りの場所があった。それは、13階建ての小さなビルだった。


 そこは、廃墟でも、心霊スポットでもない。工事中止された危険区域でもない。

 ビルはきれいで、使う人がいない。

 壊すにもお金がかかるので、そのまま放置されている。


こう聞くと、廃墟のようなものだが、ほとんど新品で使い勝手がいいため、少年は秘密基地感覚で出入りしている。掃除などもしていて、安全面も保証されている。


 13階ビルの屋上はとても気持ちのいい風が吹く。

 そこから見る景色も、少年の住む町を見渡せるほど最高で、人はあまり寄り付かない。少年にとってはお気に入りの場所だった。


 だが、そんな場所も不幸の場所となる。もう来ることもできなくなる。


 彼が決断し、行動してしまえば、少年の全てが消え、全てを失う。

 何もかもが無と化し、後戻りや、それを取り戻すことさえもできない。


 少年は、13階ビルの屋上に立ち、いつも通り町を見渡している。視界に広がるのはいつもと変わらない景色。柵がないこの屋上は自由さを感じさせる。


 少年が見ているのは視界にあるものではなかった。

 もっと別の何かを見ているかのようだった。


 少年は思い出す。今までの出来事を。


 それは決して、楽しいといえる思い出ではなかった。思い出と言えるのかも疑わしい。


 少年が思い出したのは、後悔だった。後悔だけだった。


 少年は人生の選択肢を間違え続けた。運が悪いのかと言えばそうでもない。

 何故そうなったのか、何故そうなってしまったのか、それはわからない。

 いや、考えればわかることもあるだろう。


誰かからいじめを受けていたわけではない。家庭に問題があったわけでもない。

 幸せはあった。思い出もあった。楽しいといえるものもあった。


 だが、それを上回るほどの後悔を抱えていた。


 それは、忘れることができず、忘れてはいけないもの。忘れそうになっても『忘れるなよ』というように夢に出る。悪夢ではない。ずっとここにいたいという、心地のいい夢だ。


 だが、その夢が覚めると、悪夢のような現実が襲い掛かる。目覚めの時にある感情は、深い喪失感と虚しさ。少年はそれが大嫌いだった。


 少年は取り戻せない『時』をそこに置いてきたのだ。


 現実世界でもいいことはあった。それを忘れさせるような、上回るほどの感情をもたらす幸せが確かにあった。


 少年には、夢があった。希望があった。才能といえるようなものもあった。努力をすれば、実を結ぶものもあっただろう。

 だが少年は、それを一時の感情で棒に振る。そんなことが多々あった。


 それが、彼の後悔だ。それが全てと言えるわけではない。あげれば数えきれないほどだ。


 だからもう、彼には失うものがない。


 感情はもう捨てた。捨てきれないものもある。夢やこの先の未来を今の行動で失ってしまうこと。それがまた、後悔になると少年は知っている。知った上での行動を、今起こそうとしている。


 少年は覚悟を決め、駆け出す。


 身体が宙に浮かぶ。加速し吸い込まれるように沈んでいく。


 投げやりになったわけではない。取り戻すというためでもない。

 逃げたというのも違う。諦めたというのとも違う。


 たぶん、この行動をわかるものはいないだろう。


 頭に今までの出来事が流れる。思い出したのではない。

 振り返ったわけでもない。流れるのは後悔。幸せなものもあるだろうに。

 こんな時にも見せるのはそのただ一つのみ。


 そんな身体はもう地に着こうとしていた。


 少年は目を瞑る。


 地に着き、強い衝撃が全身を駆け巡る。頭には亀裂が入り、そこから血が流れ出ていく。もう、指一本たりとも動かせない。



 視界がぼやけ、耳も聞こえなくなる――。



 意識が遠のいていく――。



 次の瞬間に少年――『()(そう)黒竜(くろう)』は命を落とした。



1週間に1つほどのペースで出していけるようにしますのでよろしくお願いします。遅くても1か月中には何本か出していけるようにしますので、お気軽に楽しんでいってください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ