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おっさん(小)と!!  作者: はと
2/5

前途多難。



私は今、猛烈に後悔している!



「うわあああああああん!

 おっさァァァァァァん


 死なないでぇぇぇ~!?」



目の前でおっさん(小)が死にかけているからだ。



原因は昨日にさかのぼる。





  ***





「ひっ、ひっ、ひひひひ~ぃ」


森に不気味な声が響く。

それは笑い声か、動物の鳴き声か…

いや、それは…


森に森の森がもぉぉおぁりぃぃぃぃ~でぇぇぇぇぇ…


森 桃子がガチ泣きしていた。


 

異世界転移してから初の夜が明けた。

それはもう酷いモノだった。

自分はもっとやれると思ってた。

いろいろ転移物語は読んだし、妄想して、シミュレーションして、完璧だと思ってた。

全部駄目だった。


【鑑定レベル1】では食べられる物がわからない。

大丈夫かなと思った木の実で、強烈な腹痛になった。


【生活魔法レベル1】では湿った草木に火は着かないし、1日分の水が確保出来ない。


灯りが確保出来ない夜が来る前に食べ物を得よう思った。


生き物を狩ろうと思った。


枝と石を拾って探した。


…見つけた。


ウサギのような、豚のような小動物だ。


「ラッキー」

私は石を投げた。


「ウギュッ!?」

当たった。


頭に命中したようで、血を流して気絶している。


持っていた枝を振り下ろした。


「…」


…振り下ろそうとした、が。


出来なかった。


全身が震えた。

怖かった。命を奪う事が。

血が、

流れて、自分が更に殺すという事が、

食べ物と、思えない。

命を自分の手で殺す事が、耐えられなかった。


「うあ、

 うわぁぁぁぁぁ!?」


逃げた。

枝を捨て、目をつぶって駆け出した。

後ろで湿った音がした。

何もかもが恐くて、下を向いて走り続けた。


疲れた。

頭が痛い。

2回転んで、全身痛い。

お腹が空いた。痛い。

喉が乾いた。痛い。

痛い。痛い。痛い。


夜が来る。

寝床を探さなきゃ…


でも、もう疲れたよ…



ヤバい…

夜が…恐い!



人工の灯りがない。人工の音がない。人工の匂いがない。

何もかも知らない。

恐い!恐い!恐い!

後悔しても遅い。

でも私は怯えて膝を抱えるしか出来ないんだ。



夜が明けた。

昨日より頭が痛い。

何とかしなきゃ死ぬ。


何とか…


何とか…


でも…


火魔法選んで飲み水を失うのが恐い。

水魔法を選んで火力を失うのが恐い。

攻撃を選んで防御を、防御を選んで攻撃を失うのが恐い。


命を…


殺すのも殺されるのも恐いんだ。


何も選べない。

恐い。

つらい。


そして、


「寂しいよぉ~…!」


今すぐ仲間がほしい。


保護者がほしい。


だから私は──



「 【召喚魔法】! 」



味方を呼ぶんだ!!




媒体は【鑑定】をし続けて見付けた薬草。

【生活魔法】で用意した水と、今にも消えそうな火。

私の用意できる全て。


だからお願い。


「 来て! 」



魔法陣が輝いた。

そして、


小さなおっさんが召喚された。


「…」


手のひらサイズのおっさんだ。


「……」


しかも私より死にかけたおっさんだ。


「うあ、」


おっさんがグッタリと目を明けた。

私を見た。

目をゆっくり閉じた。



「うわあああああああん!

 おっさァァァァァァん!


 死なないでぇぇぇ~!?」



私の異世界生活は前途多難すぎる。

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