噂
七月一九日
「ねぇ聞いた~? この学校で本当にあった呪いの話っ」
「あー……なんだっけェ? オカタサマだかオクビサマだか」
「オクビサマじゃないよ、オカタサマ! ネットの掲示板に載ってる話で、読んだら三日後に死ぬっていう……実際何年か前に、一夏で三人も呪い殺されてんだって~!」
「あるわけないでしょ、そんなもの。私も聞いたことあるけど、ただの事故って話じゃない」
「違う違う、ウチの姉貴の先輩が死んだ子の後輩の妹で、その人が言うにはぁ……」
「遠っ! もはや訳わかんねェじゃん」
「いいから聞きなよぉ。で、三人のうちの一人、バスケ部の男子は事故だったらしいんだけどぉ……残りの二人はなんと心中したんだってぇ~!」
「心中なら自分達の意志でしょう? 呪いは関係ないじゃない」
「甘い甘い、そうしたくさせるのもオカタサマの呪いなんだってっ。仲のいい女子二人が、手に手を取って毒を飲み……って!」
「なんだ、心中っていうから男女かと」
「あのねぇ、どうやったら中学生が毒なんて手に入れられるのよ?」
「だからそこもオカタサマの呪いなんじゃない、死にたくなって死にやすい状況を作るっていう」
「あれェ? あたしが聞いた話だと無理心中だったような?」
「あたしもそう聞いた! 真面目すぎて人生に疲れた優等生が親友と……って!」
「違う違う、事故で足を失ったバレー部のエースが、それを苦に……って話だよォ。それに毒飲んだんじゃなくて飛び降りじゃなかった?」
「えー? あれぇ? そうだっけ」
「違うってぇ」
「違うのはあんただって」
「ともかく、皆ソースがあやふや過ぎるわよ。子供じゃないんだから、そんな下らない怪談話真に受けるんじゃないの」
「出た出たゆーとーせー。つまんねー」
「受験生なのよ? もっと他にやることあるでしょ」
「信じないの? 三人も死んでるのに?」
「偶然よ。ねぇ?」
「それに不謹慎だよ」
「あーらら。じゃあ、そこまで言うなら読んでみてよ。読めるでしょ? 信じてないなら」
「え?」
「読めないの二人とも?」
「結局怖いんだァ」
「……いいわ。その掲示板のURLは?」
「ちょっと、よしなよ」
「いいの。でも──読んだら移させてくれるんでしょうね?」
──こうして今年も、また噂は廻りだす。




