ある日、突然②
腰が抜けるってこういうことなんだ。なんて冷静に考える。ヘナヘナと床に座り込んでしまった私はいろいろと無防備だ。動こうと思っても動けない。そのまま何分たっただろうか。もしかしたら数秒だったかもしれない。
先に動いたのは彼だった。
「赤城唯乃さんでお間違いないですか。」
なんて事務的な口調!大阪のおばちゃんだったらキレてたと思う。
「そ、そうですけど……」
相手は真っ直ぐ私を見つめる。こっちが恥ずかしくなってくるくらいだ。良く見たらまあまあかっこいい。っていうか、この状況どうにかしないと!
「あの、どちら様ですか」
ああ、すみませんーーーと、彼は悪びれる様子もなく言う。
「申し遅れました。お爺様ーー赤城 末次様のご命令で参りました、四ノ宮と申します。唯乃お嬢様をお連れに参りました。」
おじいちゃん?聞いたことがない。私がこの世にいる時点で祖父という存在は居るはずなのだが、それにあたる人の話なんて一度も聞いたことがなかった。
すえつぐ?どうしよう。コイツの、いや彼の怪しさが増した。
「私には末次とかいう祖父はおりません。どうぞお帰りになってください。」
とりあえず無難な回答をしておく。私も暇じゃないんだ、早く帰ってくれ。
はぁー。彼が重いため息をついたーーーと思ったら、
目の前が真っ暗になった。