第十九話
途中で視点が切り替わります。
~テオフィロスside~
父に言われたことは、予想外だった。
導師と呼ばれた違和感なんて、簡単に吹き飛んだよ。
確かに、隠すことが無理なら自首して慈悲を願うというのは理解できる。
でもまさか、俺を次代にするというのは完全に想定外だった。
説明を受けて有効性は理解できたから受け入れはしたものの、
こんなことになるとは、考えたことすらなかったからな。
ゲームの期間を生き残ることだけを考えていたのに、ゲームとは根本から
異なってしまう。
だが、手段が変わるだけで、生き残るという目的は変わらないとも
言える。
不憫なのは、主人公だ。
テオとしての俺からすれば明確な敵なんだが、こんな突発イベントで
前途を失うことだ。
異なる魂による支配により本人の意識が失われているのが原因の可能性が
高いのに本人が断罪される。
ある意味俺も乗っ取りには違いないんだろうから、余計に感傷的に
なってしまう。
主人公の説得には、当事者として同席する。
父には、主人公が悪魔憑きのように異なる人格が支配している可能性が
高いことは告げてある。
悪魔憑きは悪魔憑きで罪にされるから、状況が良くなるわけではないけど、
精神的に自分の息子が魂から同性愛者に変わったわけではないとなれば、
多少は……というわけにはいかないか。
だが、この世界とは全く異なる論理を話始める可能性がある以上、事前に
警告しないわけにはいかなかった。
~アルカディウスside~
この前の冒険者の試験以来、召し使いたちが恐怖の視線を向けてきて
ちょっと窮屈。
実力を発揮しすぎたのかしら。
主人公補正のことを考えて行動しないと、窮屈な思いをしちゃいそうね。
能ある鷹は爪を隠すもの、気を付けなきゃ。
でも、執事にカッパ(マジカロス)との性生活の話を聞いた時には
焦ったわ。
ただ話を聞いただけなのに、急に身体が熱くなるんだもの。
男って、興奮するとこうなっちゃうのかしら。
だとしたら、本番が楽しみね。
あら、当のカッパが無能を連れてやってきたわ。
「アル、大事な話がある」
何かしら?
でも、大事な話をするという割に無能を同席させる理由がわからない。
ダメ兄なら、まだ時期当主候補だからわかるのだけど。
「アル、聖書を読んでいるか?」
あたし自身は読む気しないけど、内容は思い出せる。
さすがは、転生チートね。
「それがどうしました?」
カッパが顔を歪める。
本当に、なんなのかしら?
「ならば、わかるはずだ。それともわからないふりをしているのか?」
ううん、なにを言いたいのかしら?
わかるように言ってくれないと困るわよね。
カッパ、人の言葉でしゃべりなさいよ。
「聖書を読んでいるなら、自らの罪が理解できて然るべき。血肉になって
いないのであれば、読んだことにはならん」
ワケわからないわね。
いい加減、何が言いたいのよ。
無能は無能で静かに見てくるだけだし、ムカつくわ。
~テオフィロスside~
こりゃダメだ。
父は、自発的に同性愛の罪を告げさせることで、罪と認識しているか
どうかを確認したかったんだろう。
だが、アルの意思を動かす存在は、何のことかも理解していないようだ。
少なくとも、主人公の人格そのままではないことがはっきりした。
「父は、同性愛が罪であることを理解しているかを確認しているのです」
主人公は、きょとんとしている。
「聖書には、同性愛が禁忌な罪であると書いてあるのです。それをあなたが
理解して……は、おられないようですね」
主人公は、勝ち誇った顔をしてくる。
「ああ、女が男を愛するように、男が男と寝てはいけない、のこと?
これは、男同士の間に子供を作るのが禁忌というだけでしょうに。
行きすぎた技術革新を禁じるだけで、同性同士で愛し合うことを禁じた
わけじゃない。聖書、聖書というならちゃんと読んでから言いなさい」
……斜め上な解釈に、頭がクラクラする。
父が完全に固まってるのは、致し方ないな。
もしかしたら、以前からこの理論武装を使っているのかもしれないな。
だが、これで説得が不可能だとははっきりした。
「何!?」
無言で魔法を展開し、拘束をする。
父は、悲しそうに首を振るだけだった。




