第十五話
主人公の騒動で、図らずも兄達との面識を得た俺だが、別に普段の生活が
変わった訳じゃない。
冒険者ギルドで依頼を受けたり、魔術師ギルドで研究したりと、忙しく過ごす毎日だ。
そうそう、この前のレポートは、画期的技術だとして高い評価を受けた。
皇帝陛下の特許状まで出たのは、想定していなかったよ。
もっとも俺は技術を独占する気はなく、魔術師ギルドに管理運用を
丸投げした。
この判断も結果的によかったようで、魔術師ギルドに感謝され、
見習いから正魔術師を通り抜けて導師にランクアップさせてもらえた。
魔道技術の独占管理をしたい魔術師ギルドにとって、条件をつけずに
革新技術を管理してほしいと申し出た俺は、信頼に値すると考えて
もらえたようだ。
元々、正魔術師への昇格試験を俺が半人であることを理由に渋る一部幹部が
いて、実施できないでいた状態だったこともあったと聞かされた。
通りで受験の申請を出しても、試験日程が決まらなかったわけだ。
俺達婚外子が半人と呼ばれ、能力がないと差別される存在だとは
知っていたけど、能力があるかどうかを見る試験を受けられなくなると
までは考えていなかった。
これからも、こういうのがありそうで嫌になる。
そんなある日、冒険者ギルドで興味深い依頼を見かけた。
よくある家庭教師依頼なんだけど、依頼主が俺の父でアルの実力を
確認するために一日試験をしてほしいという内容だった。
俺自身は、主人公達に実力を隠したいからその依頼を受けることは
しないけど、主人公の実力を知りたいのも確かだ。
ただ、アルだけが対象なのが不思議だ。
長男のゾルがいるのに、なぜアルだけが対象なんだろうと。
普通このタイプの貴族の子息への試験依頼は、アカデメィア学園に
入学させるだけの実力がついていることを確認するために行われる。
だから、こういう依頼は、兄弟の一人だけに行う場合はむしろ、試験に
近い子息に対して行うし、来てもらう往復の手間を考えて一度に
複数の子息が対象になることが多い。
不思議に思っていると、
「運び屋、その依頼はお前さんじゃダメだろ。年下に教官されるのは
屈辱だ。逆恨みされたくなければ、やめておけ」
声をかけられた。
余談だが、運び屋というのは、俺が魔法で荷運びすることが多いことから
ついた二つ名だ。
「いや、俺が受ける気はないよ。ただ、依頼主が俺の父でさ。兄に対する
依頼なものだから気になって」
「お前さんの兄だとぅ!?田舎騎士の子息相手なら低ランクで十分と
考えていたが、改めないとな。」
淡々と張り出す場所をDランクからAランクに移すギルド職員。
「いくらなんでも、その内容でAランクはないんじゃ?……」
「何を言う!九歳で魔術師ギルドの導師になったBランク冒険者の兄の
試験だぞ?Sランクでも良いぐらいだ!」
あはは、俺が基準な訳ね。
騒ぎを聞き付けた他の冒険者達は、経緯を聞いて顔面蒼白になっているし、
俺は普段どう思われているのか悩むことになった。
尚、依頼はSランク冒険者パーティ三人組が受理。
領地の外れまでは、俺の魔法で送ったけど、死地に赴くみたいに
しなくても良いじゃないか……
事件は、彼らを迎えに行ったときに起きた。
試験そのものは、拍子抜けする内容で、別にDランクでも問題なく
できたと聞き、今のところはアドバンテージがあるなと安心した。
ただ筋は良いので、一気に化ける可能性があると言われ気を抜けないなと
再認識。
だが、その後がいけなかった。
「つかぬことを聞くが、運び屋の兄は、男同士の恋愛に興味があるのか?」
なんだって?
ゲームでのアルは、アンチBLゲームの主人公だけあって、そんな言動は
なかったはずだ。
「そうなのか?俺は家族の中で無視されているから、どんな兄か
よく知らないんだ。」
この前の騒動以外、会話したことすらない。
「そうか。いや、男三人だと誰がカップルになるかで揉めないか、
と聞かれてな。正直気持ち悪いと思ったが、今思うとなぜ男同士の
カップルと言う発想になったのかとな。彼が同性愛に興味があるのかと」
なんだろう。俺が転生して行動が変わったことで、突拍子もない変化が
起きているのか?
でもそれにしても訳がわからない。
だが、事態は新たな危険が加わったことの方が遥かに大きな意味を持つ。
婚外子ですら差別されるようなタブーな世界なんだ。
同性愛は、重大なタブーになる。
皇帝陛下ですら同性愛疑惑を理由に退位に追い込まれた例が幾度もある。
そのレベルの話を兄がやるとなると……
「彼が自滅する分には、私達には興味はない。だが、運び屋に連座が
適用される可能性があるとなれば話は別だ。まだ疑惑のレベルのうちに
何らかの対処をした方がいい。家族の連座なんかで君を、失うのは
勿体無いのだよ。」
そう、同性愛の罪は、連座対象になる。
だから、本人が勝手にやっていると言う論理は通らない。
もし、本当に主人公が同性愛の気があるとしたら、全力で修正しなければ
ならない。
だが、俺の今の立場では絶望的だ。
ただでさえ、家ではいないものと扱われているんだ。
本人に話を聞くことすら難しいだろう。
どうすりゃ良いんだ。




