第十話
テオの視点に戻ります。
父からは、俺が半人だと言うことを申し渡された以外は、
特に変わらない日常が再開した。
メアリーさん(俺の世話をしてくれる召し使い、やっと名前を聞けた)
からは、
「ちゃんと夕方に帰ってくるなら、出掛けるのは構いません。ただし、
玄関があることをお忘れなきよう」
釘こそ刺されたものの放任してもらえることになった。
まあ、これまでも手間はかかってないし、俺の年齢で問題起こしようが
ないと思ってくれたんだろう。
でも魔法が使えることはばれているから、束の間の平穏と考えておいた
方が良いだろう。
いつでも対処できる準備をしておいた方が無難かな?
カエサレア通いを再開した。
今までは、部屋から直接カエサレア近くまでテレポートしていたけど、
玄関から出るようになって人目を気にしないといけなくなったから、
村外れまでは走っていくことにした。
何気にこれはいい準備運動になった。
家から直接跳べなくなっても、カエサレアでの時間を変えるわけには
いかない。
だから少しでも時間を短縮すべく、全力疾走を余儀なくされた。
サボりたくてもサボれない、これが今までの漠然とした走りから、
本気の走りに変わるきっかけになった。
冒険者ギルドの授業でも、走り方がよくなったと誉められた。
何が幸いするか、わからないな。
俺は、自分が半人であることを冒険者ギルドに告げた。
黙っていても、後からトラブルになる気がしたし、冒険者ギルドは、
実力があれば、生まれは関係ないイメージがあったからだ。
応対してくれたギルド職員のカールさんは、
「君が半人だって?嘘だろう?」
先ず言ってきた。
父に直接言われたから間違いないはず、と再度伝えたところ、
「いや、まさか……信じられん」
呻き出した。
何でも、半人は普通の人よりも無能なのが当たり前なんだそうだ。
だから、俺みたいに同年代と比べて色々なことができる半人は、
あり得ないのが《常識》なんだそうだ。
今までの経験からして、からくりが俺には見えてきた。
何のことはない、俺の例でもそうだけど、半人と呼ばれる存在は、
それだけでまともに扱われない。
結果ろくな教育を受けることもできず、折角才能があったとしても、
それを身に付けることができないでいたんだろう。
その姿が無能に見え、半人に教育しても無駄という悪循環に
陥ったんだろう。
だから俺みたいに自発的に学ぶことをしない限りは、ってことだ。
からくりがわかったところで、俺の今が何か変わる訳じゃない。
ただ推測したからくりを指摘してみた。
うまくいけば、俺よりもっと有能な卵が転がっているかもしれませんよ、
と。
カールさんは、
「考えたことがなかったが、言われてみればそうかもしれない。君という
実例がある以上、無視するわけにもいかないな」
真剣に聞いてくれ、会議の議題にもしてくれたとのこと。
幼児コースで優秀な成績を出す俺という実例は、結構大きかったようだ。
これがきっかけで、半人と呼ばれる人達が少しでもましな教育が受けられるようになったら、嬉しいなとは思う。
毒を食らわば皿までと、魔術師ギルドに用があるというカールさんと
一緒に魔術師ギルドに行き、たまたま受け付けに雑談に来ていた
支部長であるアクレイオスさんに伝えてみた。
だがこっちは、だからどうしたという反応しかなくて、正直拍子抜けした。
魔術師ギルドは、魔術至上主義であり、生まれよりもどんな魔法が
使えるかが重要とのことだ。
魔術が使えなければ、皇帝ですら無視するとやって、不敬罪で処刑された
ギルドマスターすらいたとのこと。
さすがに懲りて、帝国の命令には従うことという条文がギルド規則に
追加されたそうだが……
そばで話を聞いていたカールさんも乾いた笑いをしていたよ。
カエサレアでの俺は、当面は問題なく過ごせそうだ。
「そういえば、君は苗字がカッパドキウスだけど、カッパドキウス騎士家と
関係があるの?」
今さらのことをカールさんに聞かれ、何気なく
「父が当主ですよ」
正直に答えてしまったなんて失敗はしたけどね。
カールさんに、
「カエサレアから歩いて三日以上かかるのに、どうやって通っているんだい!?」
絶叫に近い声で言われて、ヤバイとわかった。
観念して、テレポートしてますと答えたら、上からアクレイオスさんに
肩をつかまれた。
カールさん、首振ってないで、助けてくれよ。
晴れて、その日のうちに俺の魔術師ギルド所属証が発行された。




