第一話
気づいたら、赤ん坊になっていた。
いきなり何をと言うかもしれないが、そうとしか言いようがないんだ。
周りの人は聞いたこともない言葉で話しているし、俺はまともな言葉は話せないしで、
どうしようもないから大人しくしている。
おや、誰かが来たようだ。
「ち、男か。成人するまでは育ててやるから、感謝しろ」
いきなりだな。言葉がわからないはずなのに、なぜか不思議と意味がわかった。
俺を不愉快に眺めるのはやめてほしい。
女の子がほしかったようだが、どうやら俺は男の赤ん坊らしいな。
って待てよ。
この男、どこかで見たことあるような………
ああっ、俺の妹が遊んでいたアンチBLを標榜した同人ゲーム『光輝くアマス』の
主人公の父親じゃねぇか。
先祖代々の円形脱毛症で家名がカッパドキウスって、絶対狙っているとしか思えなかった。
妹にお前の愛しの主人公も、将来はこれだな、とからかっていたっけ。
ってことは、俺はゲームの世界の主人公に生まれ変わったのか?
ま、それも悪くないなと思っていた。
しかし、現実はそんなに甘くなかった。
結論から言おう。
俺は主人公の無能な弟で、主人公に成敗されるキャラだった。
主人公が簡単に受かった学園の入学試験に受からず、身を持ち崩し、
最後は主人公の兄を殺してしまう。
そればかりか、逃亡し魔王の配下になろうとした極悪人。
同情の余地はありもしない。
そんなダメ人間が、俺ことテオフィロス=カッパドキウスの未来だった。
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