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偏屈さんと一緒  作者: ロッカ
83/84

7ー11 どうしよう、ではなくて。

「船・・・?」


モモコは突如現れたような巨大な船に圧倒された。

あんまり驚いたので、ポカンと開いた口からは極当たり前の単語が出る。

シスに抱えられながら進んだ先には迎えのスノーモービルが並んでおり、そこから連れられた先は全く知らない波止場だった。


「おう、ドミニオンの地にいつまでもいるのはちぃーと具合が悪いんでよ。こっからは波の上での生活になる。船酔いは平気なもんか?モモコ」


至極現実的な事を聞いて来るシスだが、逆にそれが現実味がないモモコは曖昧に頷いた。

そんな浮遊感漂うモモコを忽ち船の一角に収めたシスは、それ何も言わず、慰めるように頭をひと撫ですると部屋を出ていった。


モモコはユラリユラリ揺れる船内で状態を確認するよりも。


(・・・・・・・ガツクさん)


思い浮かぶのは彼の大男。


(・・・・怖かった)


モモコはガツクの狂気に昏い目を

何より怖いと思った。


他者を絶対的に寄せ付けない。

いや排除する者として。


それすなわち他者の 死


ガツクは本気だった。

モモコを己から連れ去ろうとする二人を、片方は師でもあるシス、今初めて会ったばかりのステルスを本気で殺すつもりだったと ・・・『今は』 はわかる。


自分の存在がそうさせているのだと知ったモモコは恐怖を感じ、その事を充分に自覚したのだ。


(ガツクさん)


モモコはぎゅっと目を閉じた。膝を抱えて丸くなる。

体が熱い、いや寒いのか?


(あたし・・・・どうしたらいいの?)


モモコはその夜熱を出した。





ガツクが繰り出した手刀は、シスに向かって真っ直ぐ振り降ろされようとしていた。

反応できないのか・・・シスは微動だにしない。

手刀がまともに当たり、大きくシスが弾き飛ばされる。

地に沈んだまま動かないシス。

その傍らでガツクは血に濡れた手をじっと見ている。

何かを呟いているかのように口元が動く


小さすぎて聞こえない

なのに自分にはわかる


それは




モモコ・・・オマエガ





「ガツクさん!!」


モモコは跳ね起きた。

船特有の狭まった室内。カンテラを模した小さな常夜灯がゆらゆらと揺れている。


「夢・・・」


速まった鼓動。微かに震える手、汗で張り付いたシャツ。

熱が下がってから3日。

モモコは毎日こんな夢を見てる。

ガツクが自分のために誰かを害しようとする夢だ。


「ふう。」



モモコは疲れたようにため息をつくと、気分を変えようと甲板に出てみることにした。

自分にはちょっと高い船縁に凭れ、波にゆらゆら映る月をぼんやり見ていると


「眠れねぇのか?」


反対側から現れたシスがモモコと同じように凭れ掛かりながら優しく声を掛けた。


「シスさん・・・うん・・ちょっとだけ。」

「どうした。夢見でも悪かったかい。」


モモコは唇を噛んで俯く。


「シスさん・・・あたしどうしたらいいのかな。ガツクさんの事・・・・・・あ、諦めたほうが。」

「・・・・あいつが暴れるからか」

「・・・・うん。あの時・・・がツクさん、本気でシスさんとステルスさんを・・・」

「だなぁ。ああステルスよ、あいつにやられた胸骨。」


シスが痛そうに脇腹を撫でるとモモコはギクッとした。


ひび入ったってよ。」

「ええっ!」

「奴なんかマシな方だ。俺なんか折れたし。」

「・・・あの・・・なんか、ゴメンナサイ」

「お前が謝る事じゃねぇだろ。」

「でも・・・」

「手ェ出したのはガツクなんだし、それに俺らだってこうなるとわかって間に入ったんだしな。」


そう言ってもらうのは有り難いがそんなものなんだろうか。違うような気もする。


「なぁ、モモコ」


自分の常識とは何かが違う。と疑問に傾ぐ顔をモモコはシスに向けた。


「周りが迷惑するだの何だの言う前によ、お前自身の気持ちはどうなんだ?」

「・・・・・・・。」

「あのバカのもうひとつの面・・・この前初めて見た。そうだな?」


答える代わりにモモコはまた唇を噛んだ。

シスはそんなモモコをじっと見つめる。その眼差しは僅かばかり懇願が含まれている。

これからのドミニオンはこの一見小さな女の子に見える、


(・・・・本当に20才なのか?本当に?間違いねぇだろうな、いや、本当だとしても外見的にアイツと並ぶと犯罪以外何モンでもねぇな。俺がモモコの親だったら絶対許さねぇ組み合わせだ)


モモコの答えにかかっていると言っても過言ではないのだ。

余計な事を考えつつシスは返事を待った。

一方、国の未来の一端をその肩に背負っている事など微塵も気づいていない、ごく普通の感性の持ち主である我らがモモコは


「あたしは・・・・」


シスが食い入るようにモモコを見つめる。汗が流れ、なんだか動機が激しい。近年なかったことだ。


「・・・・好きです・・・ガツクさんの事。」


ふうぅう~

シスは安心のあまりへたりこむかのように船縁にもたれた。


「でも・・・」


ういっ!?


「でも、あたしのせいでガツクさんがあんな事するのって、あの人の傍にいない方が皆に迷惑っていうか被害っていうかそういう事考えちゃうと」

「モモコ。」

「・・・・・ガツクさんから離れたほうがいいんじゃないかって。」


モモコは今にも溢れてきそうな涙を堪えた。泣いたって始まらない。ガツクが力を振るったの事実だからだ。


「本気で言ってるのか」

「・・・・・・・・だって」

「だってもクソもねぇよ。本気で言ってるのか?」

「・・・・・・・・」


黙り込んでしまったモモコに軽く息を付き


「・・・・なぁ、モモコ、・・・あのな、その・・・・こんな俺にもな、」


胸の内に仕舞っているあの事を話すことに決めた。

シスが何もない方を見ながらゴホンゴホンと咳払いをして、言い淀みながら話し始めるのをモモコは不思議そうに見る。若干耳が赤い。


「す、惚れた女がいたんだ。」


え。


「あ、あの、それって」

「まぁ、黙って聞け。俺は21年前ドミニオンを去った。誰にも会わずに。意地みたいなもんだ。」


シスは今でも身を切られるようなあの日を思い出す。


「本当はな、情けないことにあいつにだけは、最後にあいつには会おうか迷ってたんだ。ギリギリまで。」

「・・・シスさん。」


「内緒だぞ」と冗談めかしてシスが言うのをモモコは切なく思った。


「・・・後悔しているよ。なんで会わなかったんだなんで最後に好きだと言えなかったんだってな。」


シスは自嘲するように口を歪めて言った後、モモコに真剣な眼差しを向ける。


「モモコ、ろくでもない人生送ってきた俺だが悔やんでる事なんかねぇよ。あの日大使を殴った事もドミニオンを去った事も。たとえ時間が巻き戻ってやり直しが効くとしても俺ぁ馬鹿な男だからよ、何度だって同じ事するだろうしな。だが・・・だが、あいつに何も言わず、何もしないでこのままにした事だけは後悔してる。今でも。思い出すと夜も眠れねぇほどな。」

「・・・・その人とはもう?」


モモコの細い声にシスは目元を緩めて優しく笑った。


「いいや、長い間会ってねぇな。幸せに暮らしてるんだといいが。」


自然とシスの厳つい顔は和らぎ、モモコはシスが今でもその人を、深く愛している事を知った。


「お前は俺みたいにはなるな。そんなな、引きずるような人生なんて送るんもんじゃねぇ。ガツクが暴れる?だからなんだってんだ、そんなもん、もう周りはとっくに慣れっこだよ。それよかあんな人外小僧野放しにしてるより、お前が手綱握ってるほうがナンボかマシかもしれねぇ。なぁ、動いてみようぜ。お前等まだ始まったばかりじゃねぇか。何にもしないでああだこうだと考えてもしょうがねぇよ。あの・・・あのなぁモモコ、ああ、うん、確かに!~確かに奴は普通の男じゃねぇ。かなり人間離れしてる。ちょっと、いや割と常識から外れている男だ。それは間違いねぇ。だがな、そういう・・あ~!その!なんだ!要するにだな!何が言いたいかと言うと!そういう必要最低限なモン頭に入れて腹ぁ括りゃ何とかなるもんだ!」


一気に捲し立て、最後は本人もワケわからんくなったのか、ヤケクソのようにガッツポーズまでして叫んだ所でシスの演説は終了した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


ビュウゥウウウ・・・

何とも言えない空気を、追い詰めるかのように冷たい風が甲板を滑っていく。

不運な事に此処には、


「シス、褒めてんのか貶してんのか、どっちだ。」


ツッコんでくれる奴も


「そんな事言うからウザがられるんですよ、貴方は。あ、すいません、存在自体ウザかったですね。」


痛烈な口を利く奴も


「シス・・・もう充分人生を楽しんだだろう。・・・・・死ね。」


等とモモコと二人っきりという状況に嫉妬して暴れる魔王も居ない。

いないがシスの勢いに呆気に取られて見ていた、モモコは居るのでやがてクスッと笑うという温い対応をした。


「シスさん」


シスは聊かきまり悪げにチラリと視線を寄越した。少し頬が赤く見えるのは気のせいだろうか。


「シスさんの言ったこと、考えてみます。」

「そ、そうか。」


シスはホッとしたように微笑んだ。


「ちなみにシスさんの好きな人ってどうしてるんですか?シスさん、たまにドミニオンに来てるんですよね?」


シスはイタズラっぽく笑って聞くモモコに頭を掻き掻き返事をする。


「それが・・・」

「?」

「わからねぇんだ。いや、探ろうと思えば出来るんだけどよ。・・・・その・・・ショックだろ?他の野郎とくっついてたらよ。いや、俺が勝手に想ってるだけであいつにゃ、何の・・・わかってはいるんだが」


「生きて元気にやってる事はわかってんだけどな」と続けたシスの顔はさっきよりも赤い。


「シスさんかわいい。」


微笑ましくなったモモコがからかうと


「あのな・・・茶化すんじゃねぇよ。おりゃー60を過ぎてるんだぜ?」


と何の理由にもならない事を聞きながら(ここには残念な、いや幸運な事に、ツッコんでくれる奴も痛烈な口を利く奴も羨ましさのあまり鉄拳をお見舞いする魔王も・・・)、モモコは暫くシスと雑談した。





ガツクさんの事、考えよう。

どうしよう、じゃなくて どうしたら、ガツクさんと一緒にいられるか。





部屋に戻ったモモコは冷えた体を暖かいベッドに横たえ、少しだけ出口が見えてきたような、そんな気持ちに久し振りにぐっすりと寝た。

もう怖い夢は見なかった。





***


モモコが何とか前に進み出したその頃より話はだいぶ遡って、国主の執務室。

その主であるホクガンは・・・・盛大に腫れたガツクの顔を何とも言えない風に眺めた。


「・・・んで、そのまま見送ったと。」

「そうだ。」


ガツクは口を動かした際に引き攣れたのか少し眉を顰めた。

あの後、ガツクは暫くの間立ち尽くしていたが、やがて小屋に戻り身支度を整えると、カイン達がいるだろう地点を目指して穏やかに照りつける日差しの中山を登り始めた。

途中合流した先発隊とカインには「モモコは具合が悪くなったので偶然通りかかった知人に預けた」と説明し、疑わしそうにしているダイスには「ホクガンの執務室で」と耳打ちした。


シスに殴られた顔は熱を持っている。

殴られて顔を腫らすなどと何十年振りだろうか。遠い記憶にすらない事だったが、今のガツクにとってどうでもいい。


「モモコに全部言ったのかよ。」


ホクガンが眉間に皺を寄せて詰問する様に声を鋭くした。ダイスとテンレイも厳しい表情を崩さない。


(話さねばならんのだろうな・・・だが・・・この様子だともう)


3人の険しい顔を見ながら珍しくガツクが言葉を捜していると、いきなりその横っ面をパンと小気味いい音がしてはたかれた。

平素は蚊に刺されたぐらいも感じない力だったが、今はシスにしたたか殴られて痛覚が前面に出ている最中なので


「っ!!!」


何と言うか・・・もの凄くイタイ。

だがガツクはグッと堪えた。


「テンレイ・・・・」


ホクガンが宥める様に名を呼んだが、構わずテンレイは震える声でガツクを詰った。


「モモコがっ・・・!モモコがどんなに貴方を想っているか!どんなに恋しがっていたか!本当に本当に貴方という男は!」


涙を一杯に溜めたエメラルドの瞳は今にも溺れてしまいそうだ。

ホクガンは妹を落ち着かせようとしたのか立ち上がると


「まぁまぁテンレイ、ガツクだって辛かったんだってんな事いうかぁあああ!」


ホクガンは体を回転させるとこちらもガツクの頬殴り、


「お前なぁ・・・ガツク大丈夫か?なんてなぁ!」



よろめいたガツクの反対の頬をダイスが容赦なく殴った。

「グウッ」とかの声がヘタレ魔王から漏れる。

ガツクの口から血が流れ出る。どうやら傷口が開いた様だ。

ポタポタとシャツに血を垂れ流しながらそれでもガツクは一言も発しなかった。

己の所為で(たぶん)迷惑をかけた事だろうと思っていたからである。


「まだ殴り足りねぇけどこんくらいで許してやるか。シスに大分痛い目に合わされた様だからな。」


フンと鼻を鳴らしてホクガンは偉そうに腰に手を当てる。


「お前の思考は大体はわかってるつもりだけどよ、改めてお前の話を聞かせろよ。」


ダイスに宥められてソファに座ったテンレイ、その隣に腰かけたダイスも話を聞く姿勢になった。


「・・・・・俺は気づいた。俺の身の内にある空恐ろしいまでの想いを。・・・いや、アレを想いなどと呼ぶのが適しているとは思えんが。」


ガツクは眉間に皺を寄せながら話し始めた。



それから一週間と1日が過ぎた。

モモコからの伝言はまだない。


ガツクはその間じっくり考えた。


(結局俺にはこうするしかなかったのだ・・・モモコ・・・すまんな)


そしてある結論に達し、それらはホクガン達にもう告げてあった。

ホクガン達はそれに一抹の不安な顔をしながらも賛成してくれた。

そしてその夜、遂に待ちわびた時はやってきた。





「ご機嫌よう、皆さん。」





突然聞こえてきた若い男の声に4人は一斉に身構えた。


「誰だお前」


ホクガンが硬い声で侵入者に問い掛けるとガツクから


「ステルスだ。シスと行動を共にしている者・・・で間違いないな。」


いつの間にか一人用のソファに座ったステルスは、冷たい瞳でガツクをちらりと見て


「まぁそうですね。ところでコクサ、社長に殴られた傷は癒えましたか。」

「問題な」

「特に聞きたくはありませんが。」


ガツクの言葉をあっさり遮り「社交辞令って必要ですよね」等とステルスはホクガン達に眉を上げてみせる。


「おかしな奴だなお前。ところで・・・・どうやって此処まで侵入した?」

「のぉ。直前までワシ等に気付かせんとは・・・かなりやりよるのぉ~」


ホクガンはガツクが呆れを含んで黙ったのを見ると、面白そうにステルスに話しかけた。ダイスは早くも臨戦態勢に入っている。意外にも不法侵入者や余所者には厳しいのがダイスだ。警戒感丸だしでステルスを油断なく睨みつけた。


「正直に言うと思いますか?」

「思わねぇよ。」

「無駄な問答をしに来たんじゃないんですがね。」


じゃあ言うなよとばかりにホクガンを横目で見やってから、ステルスは意味深にガツクに目を向けた。

向けられたガツクは暫し目を瞑ってから少し息を吐く。いよいよだ。


「・・・・モモコは何と。」


待ちわびたモモコからの伝言を緊張の面もちで聞くガツクに、ステルスは焦らす様にわざとらしく居住まいを正してから本題に入った。


「明朝6時、南の方にあります、デイ・ボーセル遺跡・・・ご存じでよね。」

「ああ。小コロッセオだ。」


デイ・ボーセル遺跡、通称小コロッセオと聞いてホクガンは「ん?」とした顔になった。


「そう、モモコさんはそちらでお待ちします。」

「承知した。」

「結構。」


ステルスは満足したように頷くと優雅に立ち上がった。それを見て怪訝顔のホクガンが慌てて呼び止めた。


「ちょっと待て!」


ステルスはこれ見よがしに大袈裟にため息をつくと振り返る。顔はいかにも面倒くさそうだ。だが人の都合などあってないような男ホクガンには嫌味は通じない。


「何でしょうか?」

「シスは・・・来るのか」


ステルスの突然の来訪とモモコの伝言で薄れ掛けていたが、この男は長いこと行方不明だったシスに繋がる唯一の手であったのだ。ガツク以外の3人は(ガツクに師弟愛を求めては・・・省略)期待を込めてステルスの返事を待った。

大男2人と美女1人、3人につられ、だが関心なさそうに自分を見る人でなし1人を順に見てから、迷った素振りをしてステルスは


「・・・・口外するなと言われていたんですがねぇ。」


初めて感情らしきものをみせた。


「来るんだな。」


ホクガンが確かめるように念を押すとステルスは鷹揚に頷く。彼らが(人でなしはどうかわからない・・・いやないだろう)シスを今でも慕っている事はわかっていたからだ。


ー 一目だけでも ー


その思いを無視することはステルスは出来なかった。

ステルスは最後、もう一度小さくため息をつくとホクガンが声をかける前に走り出し、いつの間にか開いていた小窓から外にダイブして闇に消えた。


「あっ!あんにゃろ!」


ホクガンは追いかけたが間に合わなかった。口惜しそうに舌打ちが漏れる。


「まだ何かあったんか。」


ダイスが聞くと


「大ありだ!」


ホクガンは苛立たしそうに返した。


「どうしたの?」


テンレイが不思議そうにホクガンを見やる。いつもはふざけた余裕がある兄が落ち着かなげに部屋を歩き回っている。


「お前ら小コロッセオについて何か知ってるか?」


3人は顔を見合わせた。


「・・・知らんな。」

「知らんのォ。」

「そう言えば・・・何か曰く付きなの?」


テンレイが心配そうにホクガンに聞くと


「俺も知らねぇんだよ。」


何かが引っ掛かるホクガンはそれが何だかわからないから苛立っているのだ。


「つうかよ、モモコはそんな辺鄙な遺跡、何時知ったんだ?俺等の話題に上ったことなかっただろ?しかも大事な話し合いの場に指定してよ。・・・・これ何かおかしくねぇか。」


「・・・シスの差し金か。」


それまで黙っていたガツクが言うとホクガンは頷いた。


「ああ。あのオッサン、絶対面倒くせぇ事企んでる!俺にはわかる!調子乗ってる匂いがする!」


断言するホクガンに他の3人は


「・・・・さすが似た者同士はわかるというものか。」

「モモコ・・・こういう厄介な人種を引き付ける何かがあるんでしょうねぇ。」

「何時になく過敏じゃのうホクガン。ああ、かぶっとるからか。」


様々な反応を見せた。


「シスが何を企んでいようと関係ない。モモコが呼ぶのなら俺は行く。」


小コロッセオについての資料を捜しまくるホクガンを放置してガツクは帰っていった。


「ガツクめ・・・不安じゃろうな」

「モモコは帰ってくるわよね?」


テンレイが心細そうに漏らす。ダイスはそれに驚いた。


「なに縁起でもねぇ事言っちょる、帰ってくるに決まっとろうが。」

「そう・・・よね」

「テンレイは案外心配性じゃの。」

「・・・案外ってどういう意味よ。」


からかうダイスと言い返すテンレイ。そこに


「・・・そこの何となくムカつく空気の2人。」


どけどけと割って入るホクガン。

いつものメンバー、ガツクとモモコがいない夜は少しばかりの寂しさといつもの軽口で更けていった。





***


「モモコ、準備は出来たか?」


モモコは気軽そうに聞いてきたシスに緊張した顔で頷いた。

それに二ヤッと笑ってからシスは船に横付けされたボートに顎をしゃくった。


「じゃ、いくかね。いざ決戦の場へ。」


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