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偏屈さんと一緒  作者: ロッカ
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おまけ ~カイン君のあの時何があったのかレポート~

5-7のガツク側ではこんな事が。あとちょっとその後。


こんにちわ 皆さん。

いかがお過ごしでしょうか。

俺の名前は、カイン・ケンブリック。

栄えあるドミニオン軍部・雷桜隊ガツク・コクサ大将の補佐官を務めさせてもらってます。

軍校卒3年目のペーペーのくせに勿体ない事に大佐の地位を得ております。

傍目にはエリートコースに見えますが、あんまり良い事ない様な・・・・

あ、ちなみに、ア・ノ、ガツクさんの補佐官という面倒事処理班を一手に担っているせいか、妬み嫉みの類はされた事がありません。

むしろ自分の隊どころか余所の隊からも(頑張れよでも絶対代わらないから的)暖かい眼差しを感じます。

前置きはさておき、

今俺が見ている光景・・・

とても一般国民に見せられるモノではありません。








ガツクさんは赤錆びた倉庫の扉の前に立つと


「邪魔だな。」


と呟き、ノックにしてはどうかと思われるブレイドを用いての強引且つ、この場に常識は無用!とでも言いたげな手法で扉を破壊・・・いえ開けると青ざめている俺達を置いて、一人でさっさと中に入って行きました。

慌てて俺達も追いかけます。

モモコちゃんが絡んだ事態では、もうあらゆる意味で一人にはして置けませんから。あの人は。

だだっ広い倉庫の中は何が何やら、物が溢れ、一度も掃除した事ないだろ的に汚れていました。

その真ん中に、結構な額になるだろうモモコちゃんを手に入れた前祝いでしょうか、大量の酒瓶が散らばる中5人の悪どい顔をした男達が啞然とした顔でこちらを、主にガツクさんを見ていました。

ガツクさんは男達には構わずぐるりと倉庫内を見回すと、何かの、恐らくモモコちゃん専用に生えてるアンテナに感じるものがあったのでしょうか。

男達の中でも一番ガタイのいい大男に向かって走り寄ると、ブレイドの峰でいきなり掬い上げる様にして男を天井にブッ飛ばしました。

男の体が天井に激突するすごい音がして重量に従って落ち、バウンドしながら床に転がりました。



・・・・・・・・・・・・・・・。



・・・・大丈夫です。

俺は大男の腹がかすかに上下に動くのを見ました。

何だかピクピクと痙攣してますが生きてはいる様です。

ちょっと瀕死の様ですがまだ放って置いてもいいでしょう。


ソレをガツクさんはゴミでも見る様に見下ろすと、


「・・・・モモコはどうした?」


今すぐ首でも跳ねてもらった方がマシ。みたいな声音で残りの悪人達に尋ねました。


「あ、ああ、あの・・・」


ガツクさんは声を発した男を見据えると


「・・・わかっているとは思うが、移動した、逃げられた、他の者に奪い去られた等という話は聞きたくない・・・・モモコは此処にいるんだろう?」


ビユッとブレイドを振りました。

その高身長から繰り出される圧倒的な怒り。

その脇にぶら下がるブレイドにまでチリチリとした熱を伴っている様です。

男はガタガタと震えながら二階を指差しました。

最早、恐怖のあまり口さえ聞けない様です。

わかる。

お前の気持ちはよーくわかるぞ。そんな身も心もごっついゴロツキですって感じでもガツクさんに睨まれたら小鳥のハートになっちゃうんだよな。

同僚達と俺は見ず知らずの犯罪者にそこだけ共感しました。

ガツクさんは足早に男に近づくと(男の顔色が面白いように白くなっていきます)ブレイドを真横に一閃。男はふっ飛び、壁に叩きつけられて気絶しました。

あーあ。

国主の呟きが耳に入ります。

うーん。

見間違いでなければ男が当たった壁が少し凹んでいる摸様です。叩きつけられた跡でしょうか。

ガツクさんはそのまま二階に上がって行きました。

感動の再会です。邪魔しない方がいいでしょう。

・・・いえ、決してあのガツクさんが愛しそうにモモコちゃんを抱きしめている姿が、異様になんかこうせり上がってんのかぐるぐるしてんのか説明がつかない何かを呼び起こすからとか、心が虚ろになるからとかいう理由ではないです。はい。


「捕縛しとけ。」


ダイスさんの声にハッと我に返った俺達は、一箇所に固まって震える男達と部屋の片隅に転がっている物体AとBを


「ここで見た事は墓場にも持っていかず今すぐ忘れる様に。わかったな?」


と脅しながら縛り上げました。


コツコツとガツクさんが歩き廻っている音が聞こえます。

その音になぜかタラーリと汗が滴り落ちます。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



ドガッ!バガッシャーン!!


不吉極まりない音が聞こえ、固まる俺達を余所に国主達は顔を見合わせると急いで二階へと通じる階段を駆け上がって行きました。


「・・・・カイン・・・・」


同僚が遠慮がちに俺の名を呼びます。


「・・・やっぱり行かないと駄目だよな・・・そうだよな・・・俺、あの人の補佐官だもん。」


フ、フフ、フフフ・・・


半ば悟りの境地に片足突っ込んだ俺はヨロヨロしながら二階へと上がりました。




はい。

屋根がなかったです。

この場所に不釣り合いな綺麗な夜空がパノラマで見えました。




あと、国主達が焦った様な表情である一点を見つめていました。

よせばいいのに俺は見てしまいました。

ガツクさんがその化け物級の力で俺が見た感じ思いっ切りブレイドを投げようとしているのを。


あ~

ナニカイタンデショウネ。

ガツクさんが許せないナニカが。


直後、ブレイドの後を追う様にガツクさんの姿が消えます。


「国主・・・」


俺はすんごく小さな声で国主に話しかけました。

国主はガツクさんから目を離さないまま呟くように返しました。


「黒猫だ。」

「は?」


俺の疑問に国主は目だけ俺に向けると


「知らねえのか?レセプション中モモコに近づいた黒い猫がいたんだよ。しかも雄だ。俺が見た所な。」


衝撃的な事実を告げました。


なななななな!なんですかそれはぁ!!!


「ちょっとアンタ!何で俺に教えてくれなかったんですか!大変じゃないですか!」


憤る俺に、この、しょっちゅうデュスカ達にボンクラ呼ばわりされているボンクラ国主はえ?という顔をして


「え?聞かなかったから?」


などととぼけやがりました。


殺意が湧く俺。

しかし、ここで国主暗殺を想定している場合ではありません。

俺は現実に還り、ガツクさんが向かったと思われる方向に目を向けました。


ガツクさん・・・・・・


そこには。


ガツクさんの大きな体と、そこに埋もれてしまいそうな小さなモモコちゃんが見えました。

満月に照らされる一人と一匹。

そこには誰にも入り込めない何かがありました。

ガツクさんが瞬く間に満たされるのがわかります。


よかった・・・・


心底俺が思った時ガツクさんは壁に刺さったブレイドを引き抜きました。

・・・・・戦闘続行の様です。

が、ナイスフォローでモモコちゃんが止めました。


すげー


あの状態のガツクさんを止めるなんて、本当いつこの目で見ても信じられません。さすがです。

モモコちゃんは何かムニャムニャ言っていましたが、俺達に気付くとビックリした様に目をまん丸にしました。そして、高い声で俺達に・・・こう言うと何をバカなと思われるでしょうが・・・・


「おかえり!」


と言ってるように聞こえたんです。

気のせい・・・・何でしょうが・・・・でも胸が暖かくなった事は確かです。


ただいま モモコちゃん。






何だか感動的に話が終わりそうですが、もちろんここで終わるはずがありませんでした。


「モモコ・・・アレがお前に不必要に接近していたようだが何かされなかったか?」


・・・・・・あなたはナゼそんな事聞いちゃうんですか?ナゼにナゼ?

いや、ああだからこそガツクさんなんだ・・・・いい加減学習しろ、俺。

モモコちゃん!もちろん何もされなかっ・・・

ちょっとォ!今君の肩がビクウと震えたように見えたんだけどオォォオオ!!!

頼むよう!!もう俺家に帰りたいんだ!!早くこの丸3日間の事忘れたいんだ!!


俺の正直すぎる魂の叫びも空しく、俺から見ても挙動不審なモモコちゃんは一気に態度が硬化したガツクさんによって下に降ろされ、袖口から出した(この3日間持ち歩いていたんだろうか・・・何かが恐るべしガツクさん)折りたたまれたお馴染みのアレを足元にひかれました。


・・・・・・・・・・・・・・・。


無言の圧力がモモコちゃんに降りかかります。

それとは別に哀願に満ち満ちた念破もモモコちゃんに送られています。


(モモコー嘘でもいいから「あるわけないじゃん☆」ッて言え)

(嘘も方便て言うじゃろ。ええから。ワシが許すから)

(何をしているんだ?でもナンかスゲー焦る)←キング

(モモコちゃん!敢えて嘘を言うのも優しさなんだよ!優しさって必要だよね?俺達に)


しかし、鬼気迫る俺達の必死なテレパシーは通じず、モモコちゃんは・・・・・・


「はな・に・はなを・ちょん・された」


正直に答えました・・・・ちょん?

ちょんって具体的にどう・・・ハッ!


「・・・・ちょんとは何だ?」


聞くと思ったけどさ!!


「はな・に・はな・を・くっつけ・・・」


ブレイドを抱えて走り出そうとしたガツクさんをいつの間に移動したのか、国主とダイスさん、キングさんがガシッと羽交い絞めしました。


ホッ。


ひとまず安心です。抑えるのがもうちょっと遅かったら地下街が壊滅する所でした。


「ガツク落ち着け、な?相手は猫よ猫。ちょっとした挨拶だよ。な?」

「そうじゃガツク。よくするじゃろ、っぺたにチューするあれじゃよ。あ」

「ダイスうぅ!!テメエ余計な事言いやがって!!」


ダイスさんのバカな一言で飛びかかられた勢いで弱まっていたガツクさんに再び力が入ったのがわかりました。


「ガツク待て!夜中にしかも黒い猫が探せるわけない!」

「俺なら出来る。」

「ホントに出来そうで怖ぇえよ!!とにかく落ち着けえ!!」

「俺は落ち着いている。」

「嘘つけえぇぇええ!!!」




満月に照らされた倉庫街に大男3人の綺麗にハモッたツッコミが響き渡ります。


モモコちゃんは首を傾げ


「この人達何してんの?」


といった風に佇んでいます。



・・・・・・・・そうだね。


本当に何してんだろう・・・・・俺達。


ああ・・・カエリタイ。

カイン君の心の中はいつもこんな感じです。

日常です。

・・・・・・か、可哀相になってきた。


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