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偏屈さんと一緒  作者: ロッカ
47/84

4-16 いわゆる3倍返しです


(おいしーい!なにこれ!超美味いんですけど!)


モモコはその甘みと苦みが絶妙に合わさった飲み物に感激すらした。

それは茶色ともう少し濃い茶色に別れた飲み物でキャラメルの様な、甘いコーヒーのような不思議な匂いがする。

チョコレートではないが、共通する匂いと味にモモコは一口飲んで気に入り、あまり高くはない器に入っていた事も手伝って、またたく間に全部飲み干してしまった。

疲れた体に心地よく広がる甘味・・・・とアルコール。


(あれ?・・・・なんかフワフワしてきたぞ?・・・なんか気持ちいい・・・)


最初にモモコの異変に気がついたのは目ざとい男、ホクガンであった。

定められた領域ギリギリまで遠くにいたピンクの猫が、いつの間にか軍部ナンバーワン、そして間違いなく心の狭さでもナンバーワンの大男の前にいる。

が、体を前後左右に揺らし、何かを求めるようにゆるく視線を彷徨わせるその姿にホクガンはなんかきた。


「おい、ガツク。」


ホクガンはローと話をしていたガツクの肩を叩き、


なんかおかしくないか、コイツ。」


とモモコに注目させた。

ガツクはハッとしてモモコを見やる。

確かにおかしい。

ガツクはモモコの前にある空の器を見た。

この器には口当たりはいいがかなり度数が高い酒が入っていたはず・・・・そうモモコの好きなチョコレートの様な・・・・

ガツクとホクガンは顔を見合わせた。


まさか・・・






モモコはもう一杯飲みたいなと思いながらテーブルを見渡し、数歩先にある緑とピンクの飲み物を見つけた。


(あ~!あれもおいしそう~!飲んでみよっと!)


モモコはなんだか雲を歩いているような気持ちよさで、フラフラとその飲み物目指して歩き出した。


「モ、モモコ!」


覚束ない足取りで、これまた度数が高い酒を目指して歩き出したモモコを慌てて止めようとしたガツクの手を、ゆる~くモモコはかわした。


えっ!


ガツクとホクガンが目を見開く。

今度はホクガンがモモコに向かって手を伸ばすが、モモコはこれも絶妙なタイミングでかわした。


嘘だろ!


ガツクとホクガンが次々とモモコに向かって手を伸ばすが、モモコは酒拳に目覚めたかのようにすいすいとそれをかわしまくった。


「何やっとるんじゃ、2人で。」


ダイスが モモコで遊ぶなよ という感じでガツクとホクガンを呆れて見た。


「ダイス!ウィキどけろ!」


ホクガンは元を断てとばかりにダイスに急いで命じた。


ダイスは怪訝そうにホクガンを見やったが、言う通りにピンクと緑のカクテル”ウィキ”を手に取った。


「にゃ!にゃ~お~(あっ!何すんの~私が先に見つけたのに~)」


モモコはダイスにニャーニャーと抗議した。

ダイスはモモコが自分の持っているウィキを飲みたそうにしている事に気がつき、


「モモコ、これは酒じゃ。猫が飲むもんじゃねえ。」


めっ!という風にモモコに言い聞かす。


(酒~?だいじょーぶ!私、成人してるもん!イケるイケる!)


上機嫌で尚も催促するモモコに常にはないものを感じたダイスは、ガツクとホクガンに訪ねた。


「モモコ、どうしたんじゃ?おかしくねえか?」


ガツクはモモコが飲みほした空の器を持ち上げて言った。


「カルーガを飲んだらしい・・・全部。」


ダイスはギョッとしてモモコに視線を戻した。

よく見ればユラユラしているし、目はトロンとして眠たげだ。



ーここからモモコのセリフを猫語ナシでお送りします。めんどくさ・・・いや見づらくない様にー



「ね~それちょーだい!どんな味がするんだろ?お酒ってちょっと苦手だったけど~ソレはイケそうな気がする!」


モモコは成人しているので当然酒の類は飲んだ事がある。が、ある理由により周りと自ら禁酒の誓いを立てていた。

それは・・・・・

何を言ってるかは皆目わからないが(ガツク達にはニャーニャーとしか聞こえてません)ウィキを欲しがっているのはわかる。


「モモコ・・・カルーガだけでも相当なアルコールじゃぞ?これ以上は駄目じゃ。」


ダイスが断固として飲み物を渡そうとしない事がわかると・・・モモコの目が据わった。


「なにさ~ちょっと味見するぐらいいいじゃん~ダメダメ言うけど~ダイスさんみたいなヘタレに言われたくないんだよね。だいたいね~テンレイさんに告白すんのにどんだけかかってるかっちゅーの!22年って長すぎでしょ!あ~んなに素敵で綺麗なテンレイさん、そのうちすんごくいい人見つけてあっっっという間にいなくなっちゃうぞ~?それでもいいのかな~だからそれちょーだい。」


何がだからなのか?酔っ払いのいう事は古今東西意味不明である。

モモコの禁酒の誓いの理由。

それは、普段のモモコとは180度違うマシンガントーク。

しかもそれは相手の心臓に突き刺さりまくる言葉の羅列だ。

モモコはこれを成人式の飲み会で爆発させ、多くの友達を撃墜し、魔の成人式と後々まで語られる惨事を起こした事がある。

なので・・・・

ガツクにもモモコが何を言っているかは全くわからないが


「どうしたダイス。」


地面にしゃがんで暗くなったダイスに声を掛けた。


「なんかのう・・・・いきなり急所を刺されてグリグリされた揚句、塩でも塗りこまれた気持ちになったんじゃ・・・モモコの鳴き声を聞いとったらのう。」

「確実に言ってたんじゃねえか?何かを。おいウィキ貸せ。」


ダイスはドヨ~ンとした雰囲気をそのままにカクテルをホクガンに渡した。

ホクガンはそれを受け取るとモモコの目の前に持ってきて


「ほ~れモモコ、これが欲しいかぁ~?」


ウィキの入ったグラスをブラブラしてみせた。


「あっ!くれるの~?ホクガンってほんとたまにいい奴だよね!」


ホクガンはモモコの顔がパーッと明るくなったのを確認した後、


「ば~か、あげるわけねーだろ。」


と言ってモモコの目の前でウィキを飲みほした。


ガーン!


モモコの目が信じられないという風にホクガンが飲みほしたグラスに注がれる。


「お前な・・・」


ガツクはケケケと笑う大人げないホクガンを呆れて見た。


「ウィキがあったらずっと欲しがるじゃねえか。だから俺が飲んでやったんだよ。おい、ここにある酒全部片付けろ。ったく、コイツのせいでとんだ苦労だぜ。ククク。」


ホクガンは近くを通りがかったウェイターに、テーブルの酒類を全て片付けさせた。

ショックを隠せず首を垂れるモモコに意地悪くホクガンがケタケタ笑っていると、モモコが勢いよく頭を上げカッと目を見開き、猛然とホクガンに抗議し始めた。


「なにさ!ホクガンのばっかやろう!いつもいつもおちゃらけた事ばっかやって~!あんたのそういう所がマジムカつく~!王様の前じゃ猫かぶってるみたいだけど~バレバレだし!このサボり魔!デリカシーゼロ!男のくせに髪長すぎ!顎のチョイ髭もムカつく!国主のくせにガラ悪すぎ~!」


「どうしたホクガン。」


ガツクは額に何本もの青筋を浮かべたホクガンを訝しそうに見た。


「いや、何かモモコの鳴き声を聞いてたら異様に腹が立ってきてよ・・・」

「そうか?俺には至極真っ当な事を言っているように聞こえたが。」

「ひどっ!」


「何をしておる。」


ベントがしゃがんだままのダイス、ガツクに喰ってかかるホクガンを見て言った。


「あーっ!ベントさんだぁ!ちょっとぉ~聞いてよベントさん。ガツクさんがさぁ~」


ベントは急にムニャ~!と鳴いたモモコに注目し、不自然にフラフラしているのを見て、


「ガツク、こ奴体調が悪いのではないか?」


と、もしや試合の影響が、と心配をしたがガツクの次の言葉を聞いて眉間に皺を寄せた。


「いや、度数の高い酒を飲んだだけだ。」

「大変ではないか!お前の監督不行き届きだぞ!」

「うるさい。」


ガツクは簡潔にこれまでの事をベントに語った。


「ガツクの猫よォ!そんなに小さな身でアルコール類を摂取すると急性アルコール中毒になり、最悪死に至る事もあるのだぞ!これ以上はやめておくことだ!」


ベントは真っ直ぐ超直球でモモコに説教をした。が、酔っ払いにかかれば直球はナックルボールになる。


「あたしの名前はモモコだって言ってるじゃん!いい加減覚えてよね!そんなことより!聞いてよベントさん~!ガツクさんったら酷いんだよ!自分以外とは誰とも接触するなだって~意味わかんないでしょ~?つうか~ベントさん声でかい。すごいでかい。むちゃでかい。ほんとうるさい。あと暑苦しい。」


お前が意味わからん的な言葉をつらつら並べるモモコにベントは通じていないが、ちょっとグサッときた。

混乱中のベントに尚も追い打ちをかけようと、口を開いたモモコに見兼ねたローがストップをかけるが


「・・・誰?」


で撃沈される。

ダイスの横に並んだローを見て、なぜだか申し訳ない気分になったガツクは自分がやるしかないとラスボスと化したモモコに遂に挑んだ。


「モモコ、もう酒はない。今日は疲れただろう?家に帰るぞ。」


ガツクにしては優しく、まさに猫なで声を(超気持ちわるーいという声がホクガンから発せられる)出しながらモモコにゆっくり近づく。

モモコは完璧酔っ払った目でガツクを見た。


(なんだかしょうもないなお前って感じだなぁ~なんかさぁ~なんかさぁ~なんか)

「ムカつく!」


ガツクは急に強く鳴いたモモコにビクッとした。


「あのね~ほんとさ~ガツクさんってわかんない。お仕事なのにわがままは言うわ、殺気は飛ばしまくるわ、支柱は折るわ、挙句の果てには誰とも話すなだと!(そこまで言ってない)ワケわかんないから!なんで?・・・・・あっ!」


モモコはピーンときた。悪い予感しかしない。


「そーか、そーか、あれかぁ~。」


モモコはガツクが豹変した前の出来事を唐突に思いだした。


「ベントさんのほっぺを舐めちゃったこと~?何だガツクさんもして欲しかったのか~早く言えばよかったのに。」


そう鳴くと、モモコはフラフラと相変わらずの千鳥足でガツクに近づき、その体をよじ登り始めた。

酔っているので力加減にも容赦なく、ガツクはモモコが立てる爪の痛みに少し顔を顰めた。

モモコはガツクの肩までよじ登ると自身が試合中に立てた爪痕をぺろりと舐めた。

!!!

グシャッ。

ガツクは衝撃のあまり持っていたグラスを握りつぶした。

モモコはガツクがベントから殴られ、流血していた事を思い出した。


「そう言えば、ガツクさんケガしてたよね~あれおでこだっけ。」


モモコは伸びをしてガツクの額・・・・ではなく耳たぶをペロッと舐めた。


「・・・っう。」


ガツクがビインッと背筋を伸ばした。

その場にいた全員がガツクとモモコの(しょーもない)戦いに注目する。

モモコはガツクの耳たぶを額と思ってぺろぺろした後、 (この間ガツクの「く・・ぁ」とか「・・・うぁ」とか15禁っぽい?うめき声?が続いた)


「あれ?コレ耳じゃん~間違えた~アハハ。」


ガツクにとって今までにない衝撃を、デコと耳間違えるか?普通。ですますモモコ。

モモコはもう少し伸びあがってガツクのバンドエイドをベリッと剥がし、ベントに付けられた傷をしげしげと見た。拳でこすった時に切れたものだがもう治りかけている。


「傷はだいじょーぶみたいだけど~取りあえず舐めとこっか。」


(もうやめてあげてぇー!それ使いモンにならなくなるから!ほんとごめんなさい!)


と心の中で絶叫する二国の重鎮たち。

それらなど最初から相手にしていないモモコはかまわず今度こそガツクの額を目指した・・・が、


「届かない~!」


小さなモモコと大男のガツクの体格差ではモモコの口は擦り傷まであと少しという所で届かなかった。


「むう~!・・・まぁいっか、届く所まででいいや。」


相変わらず判別不可能な鳴き声でむにゃむにゃ言うと、ガツクの頬というかこめかみ辺りを容赦なくモモコは舐めあげた。


「ふい~!これっくらいでいいだろ!まったくもお~ガツクさんのわがままには困ったもんだよ~よし、ペットとしての今日のお仕事はおっしまい!」


モモコは相次ぐ怒涛の攻撃に石像のように固まったガツクの肩からぴょんとテーブルに飛び降りた。

そして あ~疲れた!という風に大きく欠伸をすると丸くなって寝た。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





「・・・おい、ガツク。」


ホクガンは恐る恐るガツクに話しかけた。


「・・・大丈夫か?生きとるか。」


ダイスも寄って来てポンとガツクの肩を叩いた。

その瞬間。


ズガン!


ガツクはすごい勢いで突っ伏しテーブルに頭突きした。

テーブルが四っつに割れる。

そしてそのまま四つん這いになり荒い息をついて


「こんな・・こんな事をされては・・・何だこの感じは・・・(以後聞きとれない単語らしきものが続く)」


「何か言ってるぞ。」

「コイツらどんどん危ない方向にいっとりゃせんか?」


よくは聞き取れないが(というか聞きたくない)憚れるような内容だろう事をブツブツとつぶやくガツクと、自身が起こした騒動に気づかず眠りこけるモモコ。


猫と大男から目を逸らすドミニオン側の皆さん。

取りあえずホクガンとダイスはこれ以上の醜態を防ぐためガツクとモモコを強制退場させた。


「ガツクをあそこまで打ちのめすとは・・・やるな!猫よ!」


ベントは長年のライバル、ガツク・コクサをいとも簡単に膝をつかせたモモコに素直に感心したが、周りの者たちは


(なんか 違う・・・・)


見てはいけないものを見てしまった気持ちになりながら祝勝会は終了した。


女子の酔っ払い姿はかわゆく、ちょっとアダルティ―な感じがするんですよね。

たとえどんなに周りが迷惑を被ろうと。

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