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偏屈さんと一緒  作者: ロッカ
37/84

4-6 到着です


[ほれ、我が国の友好国が入ってきおったぞ。接待の始まりじゃァ。]


煌びやかに飾りつけられた総所正面入口に到着した友好国5ヵ国代表団をショウが行儀悪く顎で指し示した。

モモコは異国の人を見るのは初めてだ。興味津津で窓にへばりつき ほおー と感心する。


モモコは同じ留守番組のショウが[友好国がよく見える]という総所正面入り口とは反対の建物に来ていた。


モモコは代表団が続々と総所門に入って来るのを眺めながら出迎える側のホクガン達を見た。

ホクガンを真ん中にテンレイがその横に立ち、その後ろを守るようにガツク、ダイス、大将達が並んでいる。そしてずらりと立礼した軍部の将校、隊員達。

式典用のコートを着、辺りを隙なさそうに窺うさまは平素にはない緊張感が漂っている。

モモコはガツクを目を凝らして見た。何十メートルも離れているので定かではないが、不機嫌そうな顔をしているようだ。


(あれじゃあ接待じゃなくて、ケンカ売ってるみたいだよ。いや、ガツクさんなら脅しか?もう・・・大丈夫かなぁ。)


モモコは呆れながらも心配そうにガツクを見、先の一悶着を思い出した。




~1時間前~


「断る。」


即答したガツクに呆れたような視線がそこここから注がれるがガツクはそれを平然と無視した。


「あのなあ、お・ま・え・は大将だよ?しかもこの国最強の部隊雷桜隊の。そこの大将がにゃんこを抱っこして各国を出迎える気か?」

「何も問題あるまい。」

「ありまくりじゃ ボケ!仕事なんじゃぞ!身内ならともかく他国に(その姿)晒されるか!」


ダイスがいつもと逆の立ち位置でガツクを叱った。


事の起こりはホクガンが


「まさかとは思うがモモコを連れて出迎える気じゃないだろうな。置いて行けよ?」


と言い、そのまさかの返答をした男から始まる。

それでもモモコと離れたくない!とわがままというかどうしてくれようこの男的な発言を繰り返す大男に鶴の一声が出た。


「みゃーうお!ふぎぎ!(こら ガツクさん!お仕事でしょ!わがまま言わない!)」


ガツクよりよっぽど大人な事を言い、ガツクの膝から飛び降りた。


「・・・・・・。」


見る間にガツクの不快指数が上昇する。

それはダイスが連れてきたショウにモモコが挨拶をしにとてとてと走り寄るのを見ると瞬く間に跳ねあがった。


[ショウさん!今日はよろしくね!]

[・・・・ああ。]


(わし、今日という日を無事に終えられるんかのう。数時間でえらく寿命が縮みそうじゃ。)


ショウは犬相手に本気の圧力を掛けてくるガツクを見ない様にしてモモコに挨拶を返した。


「お前ね・・・・まあいいや。言っておくがガツク、出迎え時だけじゃなく晩餐会もモモコは留守番だぞ。」


ホクガンが釘をさす。まさかのまさかがあるかもしれないので指しておかない事には危ない。

ガツクはショウを睨む眼力を緩めないままホクガンに言い返した。


「わかっている。公式の場ではな。」


今日を乗り切れば後はずっと一緒にいられる。(武道会が始まればモモコは晒され、舞踏会が開かれる頃なら慣れる・・・とはいかないまでも認識はされるだろう)

ガツクはイライラしながらも我慢することにした。


時間になり、モモコとの別れを惜しむ。


「モモコ・・・ショウに必要以上に馴れるんじゃない。いいな。」

(ガツクさん・・・・最近マジおかしいよ?大丈夫かな。)


モモコとてガツクと離れたくはないが、仕事である。しかも数時間。今生の別れの様に抱きしめるガツクに呆れた。


「バカやっちょらんで行くぞガツク。時間じゃァ。」


ダイスも呆れて声を掛ける。

ガツクは最後、ショウに無言の圧力を掛けると(・・・・・・・。)コートを翻して出て行った。







[モモコ、あ奴らの顔をよく覚えちょれ。決して気を許すんじゃァねえぞ。]


ショウの声にもの思いから覚めたモモコは顔を上げた。

窓から見えるのはひと際豪華な一団だ。仰々しい恰好で慇懃にホクガンに挨拶している。


[何処の人達なの?]

[ドミニオンを属国としていたゼレン国じゃ。友好国とは名ばかり。今だにドミニオンを狙っておる。]


モモコは注意してじっとゼレン国代表団を見た。

ショウは声を低くして、忌々しそうにゼレンを睨んだ。


[中央にいる派手なバカ鳥みたいな男が皇太子。隣にいるのは大勢いる兄弟の内の一人じゃろう。それとあの人相の悪い奴らがゼレンの軍隊。今回数が多いのは武道会があるからじゃろうなァ。モモコ、気をつけろよ。あいつ等は酷い事を平気でやる連中じゃけぇ、ガツク大将なら大丈夫だろうが、何が起こるかわからんからのう。]


ゼレンの屈強そうな軍人の一人が、力を誇示するように何かをガツク達に叫んでいる。


(怖っ!あんなのと当たるかもしれないの!?)


モモコは今さらながらに後悔してきたが、ガツク達が事も無げに対応しているのを見ると、ちょっと心が落ち着いた。

ゼレン国がふんぞり返って総所に入っていくのを見ていると、最後の一団がやってきた。


[モモコ、べリアル帝国がきおったぞ。あれは本当の友好国じゃ。]


ショウの声は弾んでいる。珍しい事だ。モモコはショウの厳めしい顔が緩むのを見て、


[ショウさんがそんな顔するの珍しいね。好きな相手でもいるの。]


ちょっとからかってみた。

するといきなりショウが立ち上がり動揺した大声でしかもどもりながら言い返した。


[い、いるわけないじゃろ!あんなのっ・・・わしの好みとは正反対じゃ!プリシラなんぞ!]

[そっかぁ プリシラさんっていうんだね。ふんふん。]


(しまったぁぁ!)


慌てるショウを放っておきモモコは、プリシラであろう犬を捜した。


[ショウさん、あの犬?]


ショウは真っ白な犬をモモコが指すと、諦めたように頷いた。


[ああ。そして側に立ち、国主と握手を交わしているのがのワイズム王、コロナ妃じゃ。彼らはこの友好国で1番大きい国でのう。わざわざ王が来るくらいじゃからドミニオンと親しい程がわかるというもんじゃろ?]


あの人達はいい人!モモコは己の頭にしっかり叩き込んだ。

と、変な人を発見。モモコのアレに関わったら面倒くさそう!レーダーが感知した。


[ねえ、あの大きい人誰?なんかガツクさんに近い人。]


ショウはガツクに間近に顔を寄せ腕を大きく広げながら何事かを主張している、ガツク以上に大きい人物を見てため息をつきながら説明した。


[あれか・・・・帝国の第一軍隊隊長のルーザー・ベントじゃ。見た通りの暑苦しい奴での、ガツク大将を勝手にライバル宣言、これまで公式でも非公式の試合でも何度も負けとるのに懲りもせず勝負を挑んでくる迷惑な奴じゃ。大方、武道会の話でもしとるんじゃろ。]

[ふうん。強い?]

[強いぞ。帝国の軍隊長を務めるくらいじゃからな。]


そこまで話した時、ガツクの周囲がザワッとなり、ベントの後ろにいた女性がベントの背を叩いて何事かを言うのが見えた。と、ホクガンが何か言い、女性が何か言っている。ホクガンは頷き王に何か言いながら総所のホールへ促した。ガツク達大将や帝国の代表団も後に続く。


[なんか 言いあってたね。どうしたんだろ?]

[さあなァ。]


(ベントの奴、ガツク大将の逆鱗 (モモコ)に触れおったな。気の毒に今度も負けじゃな。)


ショウの判断はドンピシャ。






ベントは、王の挨拶が済むと一目散にガツクに近寄りうんざり顔のガツクに構わずまくしたてた。


「久しぶりだな!ガツク!貴様と最後に相まみえたあのグランモアの春から7ヶ月後!再び貴様と戦える日を楽しみにしていたぞ!!」


やまびこが返ってきそうな大音量でまくし立てるベントにガツクは


「そうか。」


と言葉少なに返した。長く返事をすればそれだけ長く返って来るのでもうコイツヘの返事は短くすべしという事にしている。


「ところでガツク!出場者名簿にお前だけが連名だぞ!どうしたというのだ!何かよんどころない事情でもあるのか!!水臭いぞ!お前の唯一の好敵手であるこのべリアル帝国第一軍隊隊長ルーザー・ベント!!どんな事でも相談に乗ろうではないか!!さあ!!」


右手を大きく広げ左手を胸に当ててガツクを見下ろした。


「誰が唯一だ・・・・」


ガツクは低い声で早く消えろとばかりに言うと腕を組み、ベントを見上げて話した。


「事情というほどではないが、俺の飼い猫と共に闘う事になっただけだ。まあハンデみたいなものだ。」


ハンデ?最強の反則アイテム、もしくは伝説の武器に値するの間違いじゃないのか?武道会に参加するドミニオン側の選手達は思った。


「まことか、ホクガン。ガツクは猫と共闘か。」


面白そうに目を細めながらワイズムがホクガンに問う。ホクガンも苦笑しながら頷いた。


「ええ まあ。」


伝説の武器 (モモコ)投入だろ!のドミニオン側。だがベントの考えは違ったようだ。


「な、なんだとっ!貴様ァ!神聖なる俺達の戦いに飼い猫なんぞを出して遊びのつもりか!!」


ガツクの頬がピクッと引き攣った。


「なんぞ?」


やばい・・・・ホクガンをはじめドミニオン側に(バカバカしいが)緊張が走る。


「そうだ!猫など婦女子が愛玩するものではないか!目を覚ませガツク!真の軍人にそんなもの必要ない!ただちに猫を捨て去りドミニオンの大将としての誇りを持てぇ!」


「・・・・・言いたい事はそれで終わりか?ベント。」


ベントが熱弁を振るえば振るうほどガツクの殺のオーラが増していく。


もう やめてぇー!!ドミニオン側からエア・シャウトが(見えない叫び)響き渡る。


「ベント軍隊長、彼が雷桜隊大将のガツク・コクサ殿ですか?」


後ろに控えていた軍人女性がベントに話しかけた。


「そうだ。今は腑抜けになってしまったようだがな。」


ベントの空気が読めない言動にガツクの眼光は物理的に人を殺せるレベルに進化しそうなほど凶暴になった。

軍人女性は1歩歩み出し礼をとった。


「初めまして ガツク・コクサ殿。私はべリアル帝国軍第一軍隊副隊長を務めているエルヴィ・フレクです。今回の武道会、楽しみにしておりました。ぜひお手合わせ願いたいです。」


ガツクはうるさく「接待、接待」と耳元で囁くダイスの腹に後ろ肘を入れて黙らせ、エルヴィを見た。


エルヴィは青ざめちょっと後ろに下がりかけたがしっかり目を合わせ(拍手)ガツクと対峙した。


「・・・お前もベントと同じ考えか?」


今にもここで殺戮が始まりそうな声音がエルヴィに対する第一声。


「おおー!!これは珍しい!帝国軍にしかも第一軍隊の副隊長とはすごいですな!まだお若くてその地位とは!さぞお強いんでしょうね!」


ホクガンがいきなりワイズムに大声で語りかけた。

ワイズムはニヤニヤしながらもホクガンに合わせる。


「すごいだろう?フレクは元はコロナ付きの近衛兵だったのだが、その腕の高さにベントが熱心にスカウトしてな、瞬く間に副隊長にまで上り詰めた。強いぞ。」


ワイズムはエルヴィにホクガンにも挨拶をするように目で促した。

エルヴィは小さく頷きホクガンに向かって礼をとった。


「エルヴィ・フレクです。名簿には国主殿もご参加の様子ですが、ケガなどに充分注意した方がよろしいかと。」

「こら フレク!出過ぎているぞ!」

「申し訳ありません。」


ベントに素直に謝るエルヴィ。しかしホクガンはニヤッと笑うと


「もちろん、重々承知している。私も貴方と対戦するのが楽しみだ。ぜひ当たりたいものだ、ガツクの前にね。」


挑発する。つまり、ガツクと当たればお前は負けて俺とは対戦など出来もしないだろうといっているのだ。

エルヴィの額に青筋が浮かんだがホクガンはワイズムとコロナに近況を聞きながらをホールへと促した。

続いてホールへ入ろうとするベントとエルヴィにガツクは


「目を覚ますのはお前たちの方だ。」


と言い、突き殺して壁に縫いとめるかのような一瞥をくれると足早にホクガンの後ろに着いた。

ベントはフンとしただけだが、エルヴィは今度は息を飲み少し手が震えた。


やれやれという風にダイス達がガツクの後を追う。



その後の晩餐会で、ゼレン国にもモモコの事をバカにされたが、それを前にしても異様に静かなガツクにホクガン達は嵐の前のなんとやらだな・・・とため息をつき、軍部の皆さんは戦々恐々とした。


ただの嵐だったならいいがモモコが絡んだガツクの場合前代未聞の大災害になりかねない。


晩餐会は粛々と終了した。







自宅に帰ってきたガツクを見たモモコは何かあったな!とピンときた。


ソファに座るガツクの膝に自ら飛び乗り胸に前足をついて心配そうに問いかける。


「にゃーう?(どうしたガツクさん、ゼレン国にいじめられたの?)」


ガツクはモモコと引き離され(数時間)イライラしすぎて誰かれ構わず発散していた圧力をようやく解除すると






「モモコ・・・・明日はあの身の程知らず共に目にものを言わせてやるからな。」






凄惨な薄笑いでモモコに言った。




・・・・・・・・・・・・・・。




モモコはその夜、明日、死人が出ない事を夜空のお星様に祈った。


ベント疲れた・・・・

次からバトルの始まりです

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