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偏屈さんと一緒  作者: ロッカ
33/84

4-2 閃いてます

朝晩の冷え込みも無視できなくなった晩秋の頃。


「恒例のイベントがやってきたな。」


ホクガンがこの男らしくなくうっとおしそうに今回の招集理由について発言した。


膨大な書物の溢れる部屋のそこここに置かれた巨大なソファにくつろいで座る3人のでかいウザい大男達と1人の美女、そして


「みゃう。うーみ?(どうしたんだろホクガン。大好きなイベント・・・だよね?)」


相変わらず口が半開きの猫。

ここはホクガンの執務室。時刻は夜。





モモコが疑問系鳴き声でホクガンを見ると


「お前は初か。ごちゃごちゃうるさくなるだろうが大人しくしてろよ。」


もっとモモコが?となる事を言う。


「そんな言い方でわかるわけないじゃろうが。あのなァ モモコ。この時期、ドミニオンの友好国を招待してのう 舞踏会や催しものやらをして接待するんじゃ。」


ほえー とモモコが感心し、またまた あれ?となる。

なら余計にホクガンが張り切るんじゃ?なのに椅子に縛り付けられ、書類にぺったんぺったん認証を押してる時みたいに低いテンションだ。

モモコが首を傾げてホクガンをもう1度見やる。

と、ガツクが低い声で笑い、補足した。


「こいつはな モモコ。自分が仕切るあの はた迷惑な催しは全力で楽しむが他人に合わせながら進行するのは我慢がならん性質たちなのだ。」


ええー こ、子供がいる・・・ここに。と呆れるモモコ。


「これも政務の一環よ、毎年同じ事言わせないで頂戴。それにこれの首尾がよければ独立に1歩近くなるでしょ?」


テンレイがため息をつきながらホクガンに諭すように言い聞かせる。

あ~あ。とやる気なさそうにホクガンはソファの背もたれに両腕をダラリと投げ出した。


「やりたくね~な~。俺の繊細な顔に(愛想笑いによる)ヒビが入ったらどうしてくれる。」

「心配せんでも入らんわ。どうしても入れたいならガツクに殴ってもらえ。」

「いつでもいいぞ。今でもな。」

「ヒビどころか死ぬわ!」


ひとしきり駄々をこねたホクガンはガツクに蹴飛ばされて観念し


「じゃあ、今年は何やるかな。なんかいい案ねえか?」


やっと本題に入った。


「そうねぇ 舞踏会と晩餐会は決まってるから・・・」


うーんと人差し指を顎に当て考え込むテンレイ。


「犬のレースとかどうじゃ?前にサムズで見たんじゃ。なかなか面白かったぞ。」

「おっ!いいなそれ!」

「夫人達には庭園でお茶会・・・ショッピングもいいわね。」

「3日間だからな・・・どう飽きさせないでいるか・・・」


モモコはホクガン達があれやこれやと案を出すなか、さっきから一言も口を利かないガツクを見上げた。

モモコの視線を感じたガツクはすぐ反応する。


「どうした。帰るか?」


いや、帰りたいのはガツクさんでしょ。退屈そうにしちゃって。

モモコが呆れたように半目になると


「こういうのは苦手なんだ。どうでもいいしな。」


肩をすくめてモモコを膝から腹に移し、無駄に長い脚を組む。

そしてモモコの顔を自分を見るように固定しじっとモモコの目を見詰める。

モモコは困って目を彷徨わせる。

時折ゆっくりと体を撫でるガツクの手。

最近のガツクは自分に対するスキンシップが前より親密になったような気がするんだが、気のせいだろうか。モモコの顔をじっと見るのはもちろん寝る時など枕元が定位置だったのに最近は腕で囲い込まれていたり・・・その他前足をさすったり、腹をさすったりと(モモコ的に)セクハラまがいな事まで。


モモコの顔が徐々に熱くなってきたところで


「おーい そこのバカップル。なんかないか。」


周りの空気は俺の空気!のホクガンが呆れたように声を掛けてきた。

ガツクが舌打ちし、モモコがホッとして横を向くと隣に座っていたダイスと目があった。


「バカップルか。言いえて妙だのう。」


ニヤニヤ笑いながらからかう。

モモコが照れの反動でむうとなると


「怒るな怒るな。お前の機嫌が悪うなるとガツクが黙っておらんけぇ。すぐにドンパチじゃァ。」


かかかと今度は笑った。




ドンパチ・・・・その言葉を聞いた瞬間モモコは閃いた。



モモコはガツクの腹から飛び降りるとテーブルに飛び乗った。そしてウロウロと書類の上を歩きまわる。


「どうしたの モモコ。」


テンレイが心配そうに言うとガツクが胸元からあるものを出しテーブルにひいた。


「なにこれ、ABC表?」

「どうするんじゃ、こんなもん。」

「黙って見てろ。」


モモコはいつもながらどこに仕舞っていたんだろうと半分呆れ半分不思議な気持ちでABC表の上を歩きまわった。


「何してるの?」

テンレイが不思議そうに首を傾げる。それにガツクは


「モモコが文字を読める事は知ってるな?モモコはどうしても伝えたい事があると文字を指し示して伝える。」


ほおーという声が上がるなかモモコは言いたい事を2回づつ前足で叩いて伝えた。

テンレイが声に出して読み上げる。


「ぐ・ん・ぶ・た・い・こ・う・ぶ・ど・う・た・い・か・い?」


4人は顔を見合わせた。




「軍部対抗・・・武道大会か!」




「にゃあ!(ちゅーもく!)」


モモコはまた文字を指し示す。


「し・あ・い・・・か・ん・せ・ん・・・ぐ・ん・りょ・く・・・み・せ・つ・け・ろ」


「なるほどな。」


ガツクがニヤリと笑って腕を組んだ。


「面白そうだのう。どうせなら腕に覚えのある奴は全員参加なんてどうじゃ?」

「いいねえ。それなら俺も参加できるな。」

「他国からも募ってみたら?貴重なデータが取れるかも。」

「ますます面白くなってきたのう。楽しみじゃァ。」

「よし!」


ホクガンがモモコを抱き上げて


「採用だ!今年の目玉になりそうだぜ!でかしたモモコ!」


あろうことか天井近くまで放り投げた。


「ふぎゃあぁぁ・・・!」


モモコがびっくりして上げた悲鳴は途中で止まった。ガツクがすぐ飛び上がり空中で受け止めたからだ。

バサバサバサ・・・・・書物が雪崩落ちる。

ふう。とモモコが息をつき下を見るとホクガンがソファにうつ伏せになりピクリとも動かなくなっているのが見えた。


「バカねぇ。モモコにあんな事してただで済むわけないのに。」

「浮かれとったんじゃろ。まあ、退屈な接待が思いがけず楽しめそうな気持ちはわからんでもないがのう・・・」


物言わぬ死体の様になったホクガンを余所に3人と1匹は接待の大筋の日程を詰めていく。



1日目***夕方に到着・・・晩餐会

2日目***昼・・・武道会

夜・・・優勝者を称えて祝勝会

3日目***男性陣・・・犬のレース等

女性陣・・・お茶会、ショッピング等

夜・・・舞踏会



「こんなもんじゃろ。あとはもう少し細かい所を設定し直さんとな。」

「そうね、モモコのアイディアですもの。必ず成功させましょう。あっそうだわ ガツク。」


早くもドアに向かっていたガツクは振り返る。


「あなたね・・・・まあいいわ。モモコのドレスの件だけど。」

「ドレス?」

「舞踏会用のとか・・・・もしかしてモモコはお留守番?」

「そんなわけないだろう。」

「よね。だったら作りましょ。貴方のスーツに合わせるように作るわ。」

「お前がやりたいだけではないのか。」


なによ!いいでしょ!とうるさいテンレイを無視し、ガツクはモモコに問いかける。


「どうしたいモモコ。お前が決めろ。」


(う~ん。接待なんだからドレスの方が喜ばれるかな?)

モモコはなにもドレスを着た自分が可愛いとは思っていないが、(むしろ間抜けだと思う)テンレイや奥の女性職員方の反応をみると他国の夫人方にもウケそうだ。

モモコはテンレイを見詰めてにゃんと鳴き、頷いた。

テンレイが嬉しそうに手を叩いて喜ぶ。


モモコもそんなテンレイをみて嬉しい。と、テンレイの後ろにいるダイスも目を細めて嬉しげにしているのにモモコはきょとんとなった。


(どうしてダイスさんも嬉しそうなんだろ?ダイスさんも私のドレス姿が・・・ってんなわけないない。あれぇ?もしかして これは・・・)


モモコがそこまで考えた時、ダイスがモモコに観察されてる事に気づき、さっと無表情になった。

モモコが戸惑ってガツクを見上げるとガツクは何も言うなというように首を振り


「用は済んだか。ではな。」


これ以上何か言われないうちに部屋を出た。


「にゃーん。(ガツクさん、ダイスさんってもしかして・・・)」


自宅に帰りつくとモモコが静かに鳴いた。

ガツクはモモコをソファに降ろし、コートを脱ぎながら答える。






「そうだ。ダイスはもう何十年もテンレイを想い続けている。」


ガツクとモモコはいつの間に意思の疎通がうまくなってきたんでしょうねぇ・・・まぁファンタジーって事でひとつお願いします。

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