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偏屈さんと一緒  作者: ロッカ
18/84

2-9 ズレてます

「お待たせしました!ボンクラ国主ホクガンでございます!」

「確かにお届けしました!いいように使ってやって下さい!あ、死にかけ程度でよろしくお願いします!まだ使いますので!」


ま~た なにかやらかして2人に苦労させたな。そこにいた4人と一匹は瞬時に理解した。

2人はしっかりとホクガンを椅子に縛り付けてから最後までいい笑顔で去って行った。

怒りのあまりガツクとモモコも目に入らなかったようだ。


「全員、揃ったな。では会議を始める。」


猿ぐつわをかまされ、全身ロープぐるぐる巻きホクガンを見ながら、ガツクは何事もなかったかのように会議開始を宣言した。

そのホクガンはさっきから自分の状態を訴えもせず、モモコを目をかっ開いて凝視している。テンレイの事情を知っているので、まぁ見るだろうな。


(コモモ!お前よりによってなんちゅー奴に拾われてんだ!よく生きてたなぁ!表彰もんだぜ。)


モモコが想定外も甚だしいところにいたのであまりに驚き、黙ったままのホクガンを尻目に会議は進む。

モモコも必死だ。

モモコはなんとかホクガンにコンタクトをとろうとして、テーブルに両前足を乗せて身を乗り出し、


「み(ホク・・)」


鳴こうとしてガツクに口をつままれた。

モモコはあきらめた・・・。


(無理だな!うん!・・・・どーしよー。)


急に顔を出したモモコと口をつまんだガツクに全員が注目したがモモコはホクガンに集中していて気付かない。

じっとホクガンを見つめ、今度はアイコンタクトでどうにかならないかとバカな試みを始めた。

こうなったら、お・ま・えは猫!と額にバリカンで刷り込まねばなるまい。

そして頭上のガツクの機嫌が急降下してるのにも気づかない。

事情を知らないガツクからしてみれば、


(俺でもあんなに真摯に見つめられた事はない・・・。ホクガンが気にいったのか?)


飼い猫のめったにみない興味の示しぶりに今までに味わったことのない不快ななにかが胸の下からこみ上げて来ていた。


急速に圧力が増した会議場はホクガンとモモコが見つめ合い、ガツクが険しい顔でモモコを見つめ、シラキが呆れ、グレンとジエンが青い顔で俯くというカオスになった。

と、ホクガンが突然がたがたと椅子ごと体をゆらして存在をアピールした。

エクソシストばりの激しさで体を揺らすホクガンに


「なんだホクガン。発言は挙手してからだ。」


低~い声で冷静にガツクが無茶ブリすると、


(ガツクさん、ホクガン猿ぐつわつけたままだよ!無理だから!)


なんとかしようとあせるあまりつっこみどころを間違えるモモコ。

カオス化が増してきたその時、シラキがハァとため息を吐いてホクガンの猿ぐつわを取ってやった。

その瞬間ホクガンは叫んだ。


「ガツク!その ね・・・!!」


が、しかし。

”ね”と言った瞬間シラキ、グレン、ジエンの3人が同時に飛び掛かり、床に押し付けた。


「お前は!少しは空気を読もうとしたらどうだい。ここは見て見ぬ振りをしてやるのが優しさってもんだろ。」

「ガツクの心のオアシスを破壊するつもりかい?そっと見守りたまえホクガン。」

「なにやってんですか!軍部全体の未来がかかってるんですよ!すでにカオスがそこまで来てるんです!鈍いのもいい加減にして下さいよ!」


場の空気を読まないで(読めないのではなく読まない)大惨事を起こした前例が多々あるホクガンに「させるかぁ!」とばかりにたたみ掛ける3人の大将達。ジエンなど軽く混乱しているのか軍部全体の問題に発展させる始末。まぁ もう来ているし始まってもいるのだが。

最後に「何も言うな見るな触るな空気読め」と口を揃えて言い渡すとホクガンを元通りにして自分たちも席に戻った。ちなみにこれらの会話?は一人と一匹には聞こえないようヒソヒソ声でやりとりされた。

モモコは突然の事に驚きつつも、


(ホクガンっていろんな人に恨み買ってるなー。発言しようとして押さえられるってどんだけ?)


と相変わらずズレた事を思い、ガツクは


(俺もホクガンのように・・・・いや無理だろあれは。・・・・しかしやってやれないことは・・・)


未知の領域につま先を突っ込もうとしてためらいつつ、まだモモコを見ていた。







その日の会議はこんな感じで(ぐだぐだで)なんとか終了した。

引き倒され、会議が終わっても珍しくも一言も喋らなかったホクガンは何をしていたかというとモモコではなくずっとガツクの様子を観察していた。

あきらかに空気が違う。大将3人もそれを感じ取ったからこそ、余計な事を言わないように自分を押さえたのだろう。今はなにやら黒いモノが漏れてるが。それはそうと、


(あの動物はおろか植物にすら関心ゼロどころかマイナスのガツクが・・・コモモも馴れきってるしなぁ。まあ あいつは並みの猫ではないが。)


あのガツクの腕に抱かれながらもまったく怯えず、自然に寄りそう姿はホクガンには微笑ましく見えた。


(これは面白くなってきた・・・。テンレイにはもう少し黙っとくか ククク。お、そうだ!ダイスにも教えてやろう!協力してもらいたい事も出来たしな!アレやりたかったんだよな!)


これから来るであろう嵐の予感にわくわくする国主。彼のイベント好き魂が燃え上がり周囲が大混乱する日は近い。




ホクガンは最後にモモコに軽く首を振り手を振ると、迎えにきた2人の補佐官と共に自身の執務室へと帰っていった。

モモコはホクガンの意味ありげな表情と仕草にテンレイに言う気がない事を珍しく察し、がっかりすると同時に少しだけホッとしてる自分に気づき動揺する。

ガツクはホクガンを顔を顰めて見送ると帰ろうとして、


「ガツク、疲れたときは甘いもんが一番だ。たまにはゆっくり休むのも仕事のうちだよ。」

「は?はぁ。」


「これ美味しいから」とあめ玉を渡され、なんの事だろうと首を傾げていると背後から、


「ガツク・・・辛い時は誰かに話しを聞いてもらうだけでも心は軽くなるものだ。私でよければいつでも力になるよ。うん、一人は駄目だ。」

「ガツクさん!あの、ぼ、僕!今度からちゃんとガツクさんの目を見て話をしますから!軍部の皆にも働きかけますから!い、一緒に頑張りましょうね!」


ガツクの精神の心配をする男2人にガッチリ握手された。ますます???のガツクを置き去りに3人は去った。


「・・・・・なんだ?」

「みゅ?(さあ?)」

(ガツクさんって意外と愛されてるよなぁ。えへへ・・ちょっと安心。)


首を傾ぎ続けるガツクと理由はわからないが心が少し暖かくなったモモコ。





ゆっくりとなにかが、でも確実に廻り始める・・・。







バレましたがバレませんでしたね!

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