2-8 緊張の瞬間です
人間、どんなに違和感のあるモノでも見慣れると何気ない振りが上手くなるようだ。
軍部の皆さんは見ない振りのスキルが格段にレベルアップした。
日々は一人と一匹が予想外の動きをしない限り、まずまずな平和がたもたれていた。
「今日は軍部会議がある。大人しくしてろ。」
モモコが朝食を食べているとガツクが話しかけてきた。
ガツクのもとで生活するようになって早や1ヶ月がたっていた。
ガツクとモモコの生活パターンもおのずと決まってくる。
朝、朝食を食べながらガツクが今日の予定を話す。食べ終わると抱っこされながら(やはりポッケは限界があった。しかしこれも・・・)たいていは執務室か訓練場、たまに軍部施設の視察などに向かう。昼食は食堂かデリバリーを頼む。7時にモモコだけ夕食を食べ、だいたい夜の10時まで勤務。自宅に帰りガツクが入浴夜食をすませたら就寝。(ガツクは入浴ついでにモモコを洗おうとしたがこれだけは!成人男性と入浴なんてできるか!!これだけは乙女?として死守した)ちなみに別の日にモモコを洗おうとして例の洗濯用洗剤を用意したところモモコの猛抗議にあう。
軍部会議?ってなに?というふうにモモコが首を傾げたのでそれを見てガツクはわずかに微笑むと
「俺達大将5人と国主・・・国で一番地位がある奴のことだ。が集まりいろいろな事柄・・・例えば今なら国境警備の強化、分隊の配置などを話し合う場だ。・・・本来ならお前を連れて行く所ではないがな。」
じゃあ 置いてってよガツクさんのわがままかよとつっこむところだがモモコはガツクのまれに見る微笑みに、
(いつ見てもすんごい邪悪そうな顔だなぁ。微笑みっていうかニヤリ?思いっきり笑顔だとどんなになるんだろ。見てみた・・・ハッ!自分 今死地に足を踏み入れようとしてなかったか?あっぶねー!)
結構失礼な事を考え、話を聞いていなかった。
ここでちゃんと話を聞いていれば後でホクガンに会える事を知る事ができていたのだが・・・・
それにしてもガツクはモモコに人と会話するように話しかけるが、これはモモコが話の内容に沿った反応を示すからである。是か非かを問う時も首を振ったり、頷くそぶりをするのでガツクは、
(猫という種族は人の言葉がわかる。)
というファンタジーな勘違いをしてしまう。
間違いなくモモコのせいであろう。
モモコもこれはまずいかなと思わなくもないのだが(執務室でモモコに「今日の夕食はハンバーグだそうだ。嬉しいか?そうか。」と話しかけたガツクを見たカインの顔があまりにも!あまりにも!だったので)自分の意思を伝えやすいのでこのままでもいいよねっ!ごめんねガツクさん!周りの人!で通した。
今日も一人と一匹は元気に出勤した。
途中資料をとりに執務室に寄り、あとは会議室に直行。
そこにはすでに3人の大将が座っていたが、
シラキ まばたきする。
グレン テーブルに片手肘をつき手を顎に当てたままフリーズ。
ジエン 椅子から転げ落ちる。
三者三様の反応。
モモコはえらい人でもビックリするんだなぁとボケた感想を抱いた。
自分たちの破壊力を今だ理解していないようである。
ガツクは一番派手な反応を示したジエンをチラッと見、(あくまでチラッと。しかしジエンは一瞬で座り直した)自身の席に着席。もちろん膝の上には口を半開きにしたモモコがいる。
重苦しい沈黙が会議場を満たし始める。
シラキは
(これで最近部内がおかしな空気になっていた事がわかったよ・・・。ガツク・・・3人の中でお前だけはマトモだと思っていたけどねぇ。少々行き過ぎる所もあるが筋の通ったいい軍人だったのに・・・。ホクガンとダイスのお守りをさせすぎたかねぇ)
と とうとうイっちまったか てなことを考え。
グレンはやっとフリーズが解け
(ガツク・・・・君に何があったんだい?なにか悩みがあったのなら相談してくれればよかったのに。君がそこまで追い詰められてたなんて・・・。僕は自分の力のなさが悔しいよ・・・。)
と勝手に同情し。
ジエンはガツクと猫を直視しないように視線を斜め上にしながら
(カインの顔色が悪かったのはこのせいだったんだ!悪かったカイン!しつこく理由を聞いたりして!これは言えないよな・・・僕でも言えない!・・・わあぁぁ!なんか猫がこっち見てる気がするぅ!やめてくれ!僕は静かに生きたいんだ!こっち見ないで!)
最後は哀願になった。
「ホクガンはどうした?」
「・・・今、向かってるそうだよ。もう来るんじゃないかな?」
「フッ!今回は捕まったか。まったくホクガンにも困ったものだ。自発的に来る気はないのかあのバカは」
モモコはガツクとグレンの会話をなんとはなしに聞いていたが、ホクガンの名前がでた瞬間全身を緊張させた。
(ホクガン!?ホクガンってあのデリカシーの欠片もなくていっつも仕事をさぼってばっかであんた本当に国主なの?ただの遊び人の間違いじゃないの!?のホクガン?)
かなり事実が入っている(ちょっと待てぇ!)名に驚く。
モモコがもっとよく聞こうとして身を乗りだした時、外からガヤガヤした騒ぎとともにロープでぐるぐる巻きにされ、デュスカとレキオスに引きずられた第3代ドミニオン自治領国国主・ホクガン・ラウンドが到着した。
第3代~というのは自治領国となっての3代目です。まぁ話のスジには全く関係ないんですけど。またホクガンがやらかすんでしょうか?