2-3 訴えます
ガツクはモモコと目があった瞬間、衝撃を感じたが、モモコは、
(怖っ!こ、こ、この人怖い!た、たぶんこの人に助けてもらったんだろうけど。)
ある意味 別の衝撃を受けていた。
ガツクはモモコを凝視していたが、モモコは目があった瞬間、速攻そらした。
それでも勇気をだし、モモコは目の前の人物をもう一度観察した。(目はあわせない)
短かくて黒い髪、黒い目。
日本人を彷彿とさせる色彩だが顔の造作が全然違う。
(あのまま、水に濡れてそのままだったら凍えて死んじゃってたかも。そうじゃなくても衰弱してた。
それを助けてもらった・・んだろう・・・け・・ど。)
ガツクは怖い。
おそらく整っている方ではあるんだろう。
だがにじみ出るいかにもカタギではありませんよ、
完璧アッチ側の人間ですオーラというか
いつでも臨戦態勢というか空気かなんかが、整っているを彼方に打ち上げ
二度と戻ってこれないような感じにしていた。
ガツクと目をあわせて会話ができるのはホクガンとダイス、テンレイ、大将2人、(ジエンはまだ無 理)
そして補佐官のカインぐらいである。
ちなみにカインはあわせられるようになるまで3年かかった。
毎日のように一緒に仕事をしているのにである。
観察を終えるとガツクが固まっている事に気づいた。
(どうしたんだろ?)
「にゃあお(もしもーし)」
取りあえず話しかけてみる。するとガツクが瞬きして、
「お前 猫か。」
と声を発した。深い声だ。
(え・・っと こういう時はどうすればいい?猫か?・・見ればわかるとは思うんだけどな。)
「うーな(そうです)」
「・・・・・・・・。」
(ち、沈黙返ってきた)
ガツクは凝視を再開した。
(なんか焦るすごく焦る普通に鳴いただけなのに焦る。
体が震えてるよー!悪寒?風邪ひいたかな?それともこの人の圧力か~?なんちゃってああ現実逃避したい・・・今してるか・・・。)
モモコがあまりの視線に俯くと、ガツクがいきなり立ち上がったのであまりの背の高さに茫然とした。
(ヒョョオオオ!!高い高いむちゃ高い!!ジェットコースターみたいだったぞ!フワッとした!)
テンレイに抱えられた時も高いなと思ったが、ガツクのはその比ではない。
タオルで包んだまますたすた歩きやがて寝室にきた。
そっとモモコをベッドに降ろし、タオルを取ると自身は出て行った。
一人になったモモコはベッドを見て
(なんじゃこれー端が見えないぞーキングサイズばかにしてるでしょキングサイズに言いつけちゃうからなー)
あまりのでかさに思わず思考が棒読みだ。
ガツクは大男だ。なので当然ベッドも大きい。そのベッド横4メートル縦5メートル。
(どんだけ寝相悪いんだよ。あ、あれかー彼女来た時のためか。よっ色男!憎いねっ!はぁぁぁぁ・・もうやめよどうでもいいじゃん・・。)
ほんとにどうでもいい。
モモコがくだらない感想をぐだぐだ続けているとガツクが戻ってきた。
手にカップらしき器をもってきていて、それをモモコの前に置く。
モモコはガツクを見、器を見た。器にはミルクが入っている。
もう一度ガツクを見た。そしてすぐ目を逸らした。怖いから。
(ようするにこれを飲めっていうことですか?そういや喉乾いたかも。追いかけられたし。)
モモコはここでミルクを飲み前述の通りになる。
まだ上手く飲めないの?と思った諸君。違うのだ。
モモコはなんとか飲み物だけは 飲めるようになった。
それは熱かった。ものすごく熱かったのだ。
ミルクの風味も味も消し飛び煮えたぎったようなそれ。
(なんでー!あんた普通に器持ってたじゃん!適温だと思うじゃん!動物虐待かぁー!)
ベッドの上で七転八倒するモモコをちょっと驚いた顔で見てガツクは、
「熱かったか。すまん。」
一応謝った。
(ユ・ル・サ・ン!!猫ってね!猫舌なんだよ!?動物は皆熱いものが苦手なんだけど数多の動物を押しのけて[ね・こ・舌]ってつくぐらいキング・オブ・猫舌なの!許さん!)
ちょっと主観が入っているそれを痺れる舌を使って必死に訴えるが、
「はにゃ!ふにゃ!ふぎー!」
にしかガツクには聞こえない。
しばらく抗議していたが言ってもムダなことはよく知っているので、
やがてモモコは不貞腐れて寝た。
そんなモモコを興味深そうに見ていたガツクは、ふと周囲が白んじている事に気づいた。
(もう朝か・・・今から寝ても寝なくても一緒だな。着替えて戻るか。)
音もたてずに着替え終わるとモモコの頭をそっと撫で、静かに出て行った。
朝もやの中を隙のない身のこなしで歩きながら、気分が高揚している事に気づき苦笑する。
面白いものを拾った・・・さてアレをどうするかな・・・