ミナミハルエ
どうも。初めての動画投稿で、編集とかよく分かんないんで、とりあえずiPhoneで撮ってそのまま出すって感じなんで、まぁ、あの、聞きづらい部分とかもあると思うんですけど、聞いてもらえたら嬉しいです。怪談です、所謂。
昔から俺、怪談好きで。なんかここ最近でブームになって、ちょっとこれは俺も有名になれるチャンスあんのかもなって思って、周りの友達に聞いてみたりして。
でもまぁ、やってみたらないんですよ。怪談師って人達が喋るようなすげぇ話って。すぐ心折れちゃって。あぁ無理だやっぱ俺にはって。そもそも人前に顔出して喋るなんて、そんな度胸もないじゃんって。いやほんと、うん。
って思ってた時に、地元の友達と会う機会があって居酒屋でわぁわぁ喋ってたんですよ。
んで、酒もいい感じに入って、そいつ結構親友で色々喋る仲だったんで、ついついぽろっと怪談喋ろうとしてたみたいな話したんですよ。
そしたらそいつ、「不思議な友達の話ならあるよ」って。そいつと喋ってて、あ、そいつってちょっと分かりにくいんで、孝介にしときます。
孝介からそんな話今まで聞いたことなかったんで、マジ?ってなって。まぁでも大したことないだろうなって思いながら、とりあえず聞かせてもらうことにしたんです。こっからはその孝介の話です。
一人暮らしのマンションに帰ってくると、玄関のポストに何か紙が入ってるんです。どこにでもあるようなA4のコピー紙。で、見ると何か文字が書いてあるんです。
【ミナミハルエと仲良くしてください】
手書きじゃなくてPCで打ち込んだ無機質な文字で書いてある。
気持ち悪いですよね。何がって書かれた内容はもちろん、オートロックのエントランスをくぐり抜けて部屋の前まで来て直接これをポストしてるって事も含めて。
誰がこんな質の悪い悪戯を。
孝介は紙をぐしゃぐしゃに丸めて捨てたそうです。当然ですよね。
で、一週間後。また同じ内容の紙が投函されていたんです。
これはさすがにと思って管理人通して調べてもらえないか頼んだんです。一応監視カメラもある程度ついてるんで。管理人がまぁいい人で、警察は動かせないけど私なりに調べてみますよって。おっちゃんらしいんですけどじゃあお願いしますって。ただ残念ながら、犯人は見つけられなかったそうです。
その一週間後、孝介を嘲笑うようにまた紙が投函されていました。ただ内容が今までと違ってたんです。
【ミナミハルエは感謝しています】
ミナミハルエって誰なんだ。これを投函している人物がそうなのか。または別の第三者がいてミナミハルエの代わりにこんな事をしているのか。
というか、感謝していますってことは、どこかでミナミハルエともう既に接触してるって事なのか。
もう全く意味が分からない。でもこの程度じゃ実害らしい実害もないから警察も頼れない。さすがに管理人のおっちゃん一人では限界がある。
どうしようかって悩んでたんですけど、そこから急にぴたっと紙は来なくなったそうなんです。
それからしばらくして、そんなことも忘れかけてた頃、実家に帰るタイミングがあったんですよ。で、実家には母親亡くなって父親だけ住んでるんですけど、仏壇があるんですよ。そこにはいつもお供えもののお菓子とか置いてあって、よく小さい頃から拝借してたんですよ。一応もらいますって手合わせてからね。
で、いつもの調子で手を伸ばそうと思った時に、普段はないようなお洒落でちょっと高そうな箱が置かれてるんです。丁寧にのし紙もついて。さすがに勝手に食えないなと思って親父にあれは何だって尋ねたら、
「ミナミさんがくれたんよ」
って。
あれって。ミナミ? 何か聞き覚えあるぞって。
ミナミさんって誰って。まあ普通に聞くわけですよね。
「ミナミさんはミナミさんだよ」
答えになってないんです。
別に親父がボケたわけでも、あぁ、今そういう表現駄目なのか。まぁしっかりしてるんですよ。多少腰は曲がってるけど、全然認知症とかもなく元気で。そんなまともなはずの親父が、ミナミさんについてはこれ以上話してくれないんですよ。そこで改めて箱見るんですよ。それでのし紙よく見たら、
【御祝 南 晴枝】
ミナミハルエ。そうとしか読めないですよね。そこであの紙のこともばっと思い出すんですよ。
【ミナミハルエは感謝しています】
【ミナミハルエと仲良くしてください】
気持ち悪くなって、予定より早く家から出たそうです。
一週間後、ぴんぴんしてた親父さんが急死。結局また実家戻って色々やらないといけなくて、休みもらって実家のほうで数日間は忙しなく過ごしたそうです。
一旦やることある程度済ませてマンションに戻ったんです。そしたらまたあのA4用紙が入ってたんです。何枚も。
【ミナミハルエはもう友達です】
全部そう書いてあったそうです。
「これが、五年前ぐらいにあったかな」
なんでもないような顔で酒飲みながら言うんです。
いや待てよと。五年の間にも何度か顔を合わせていたのに、こんな凄い話なんでしなかったんだよって。
「いやまぁ、友達の話だし」
って。よく分かんない返しするんですよ。
孝介自身の体験なんだから、友達から聞いた話で無許可に喋るのは憚られるってわけでもない。ん?って感じになってたら、
「いやハルエさんだから」
孝介そう言って続けるんです。
「ハルエさんもう友達だから、あんま面白おかしく話したりするのどうかなって。最初は確かに意味分かんなったけど、いい人だからそれだけは誤解しないでほしいんだ」
だから、お前も仲良くしてあげてよ。
その日以来、孝介とは会ってないです。怖くて無理です。
だってめちゃくちゃまともな感じでハルエさんのこと喋る感じ、死ぬ前の孝介の親父さんとまるで同じじゃんって。
今のとこは大丈夫ですけど、俺のところにもいつかハルエさんが来るんじゃないかって怖いんですよね。
っていう話なんですけど。
えー、多分この動画に行き着く人ってこういう話好きな人だと思うんですよね。で、多分そういう人なら思うと思うんですけど、パクリじゃないかって。
違いますよ。確かにこの話をされている方は他にもいらっしゃいます。
俺が提供したからです。元は俺の話なんですよ。まぁ、信じられないかもですけどね。別に信じて欲しいわけじゃないし、その為に撮ってるわけじゃないんでいいんですけど。そもそもこれ創作だし。
そう、これ作り話なんですよ。俺の。
最初にも言ったけど、ないんですよ。すごい話なんてそうそう。
こりゃ無理だなって、だったら作っちまうかって。別にバレてもバレなくてもかまわないから。
で、まぁまぁ怖そうな話できたなって思ってバラまいたんですよ。そしたらまんまと食いついてくれて。うわーこれ嘘なのになぁって。自慢げに話してる姿は俺からしたら滑稽だったけど、怖がってもらえるのは嬉しかったなぁ。
あ、でこれ謝罪動画とかじゃないです。そういうのじゃないんです。ここまで来て最後まで見てくれる人いるんか分かんないんですけど。
ここまでは良かったんですよ。俺一個余計なことしちゃって。
ミナミハルエ。
やけにパッと思いついたんですよねこの名前。直感っていうか、降りてきたみたいな。
で、今何調べるのもAI使うんでそっちに投げたんですよ。
『ミナミハルエって誰ですか?』
普通ならね、こういう人物が考えられますみたいな感じしか出ないはずなんですよ。でも返ってきた答えは、
『あなたを皆でお待ちしています』
孝介の話は嘘だけど、孝介は実在してるんです。
一人暮らしで、実家に仏壇があって、母親はもう死んでて、父親一人で。
孝介に、最近元気かって連絡したんです。
元気だよって。でもちょっと前に親父急に死んで大変だったよ。あんなピンピンしてたのにって。
その先は話したくないです。でもそれが動画を撮っている理由です。
助かる、ってことはないんだと思います。きっと。
とりあえず、見てくれた人はありがとうございました。




