霧の街-Part9
謎の英雄は去り、自らの元に馬車が訪れる。
ヴィーナス、ペドロ、カイザード。
3人のことが心配なフレン。
日は暮れ、夜の訪れが刻一刻と迫る.....。
3人を連れて、馬車に乗らなければ.....
——共に行こう。《霧の街、シルトマー》へ。
「おーい!君達!大丈夫かー!」
——馬車の騎手が俺たちに声を掛ける。
「シルトマーに向かうよ。3人は調子良くなさそうだけど、大丈夫かな.....すげぇんだよ。俺もポテスの遭難者を救助してきて、これだけは見たことねえ。まさか、猛吹雪が瞬時に晴れるだなんてよ.....」
——まさかの出来事に唖然とする.....。
確かに言われてみれば.....すごい偶然というか.....
何というか、神秘的にも思える。
急に吹雪が止むなんて、あるのだろうか.....。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おーい!ボーとしてんじゃないよ!俺は代金支払われてるからよ!さっさとその3人も乗っけてくれ!夜になって馬車まで襲われたら、それこそ収集つかねえことになるよ!」
——馬車の騎手が焦って俺たちを呼ぶ。
「今行きます!1人ずつ乗せるので!」
俺はヴィーナス、ペドロ、カイザードさん。
次々と3人を持ち上げて馬車の中へ運ぶ。
「よーし、準備はOK?さあ行くよ!」
「はい!よろしくお願いします!」
——俺たちは馬車に乗って、霧の街へ向かう.....。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ひたすら地平線に向かって.....馬車は行く。
地面を削るように音を立てながら動く馬車で、
俺たちは揺られながら体を横たわらせる。
「シルトマーってどういう所なんですか?」
——俺は馬車の騎手に霧の街について尋ねた。
「ああ、凄い湿気があるとこでねぇ。湿地帯の近くにあるもんだから、街は丘の上にあるんだ。だから流行り病が時期的に流行してて、とくに今は大変なんだ。あと.....」
店主は一瞬躊躇ったが、続ける。
「シルトマーでは事件が多発している。どうしても君には言っておかないとね。夜になるし、すぐに門前の宿に入れてもらった方がいいよ。」
——シルトマーで.....事件.....?
「それって、犯人とか見つかってるんですか?」
馬車の騎手にそう尋ねると、
難解な答えが返ってきた。
「うーん。探偵が探してるんだけど、あまり手掛かりや証拠が掴みづらいらしいな。ーー俺も、シルトマーより東は何度も行き来してるから、こういう物騒な噂ってのは珍しくてね。動機も誰も分からないなんて、こんな理解に苦しむ事件は無いんだよな。」
——俺は背筋が焦げるように冷たく感じた。
「シルトマーの事件って、どういう被害が出てるんですか。誰かが殺されたりとか.....?」
——再び馬車の騎手に尋ねる頃には、
日は暮れ、夜が迎えようとしていた。
「お兄さんすまん。最悪、中継地点の村に着いて泊まるかもしれねえ。覚悟しててくれよ!」
「えぇ.....!!!」
——そう忠告してきた騎手は、
更に馬車を加速させる!!
一段と地面を押し返すような衝撃が、
馬車の揺籠に伝わってくるのを感じた!!
激しい揺れで車内にいた1人が起き上がった!!
「うぃお!.....うわぁ!......」
ーーヴィーナスだ!起き上がって来たんだ!
「ヴィーナス!気が付いたか!俺達助かったんだぜ!なんかあんま分かんねえけど、黒い鎧のお兄さんが来てさ!冒険者って名乗ってた!スッゲェ古風な喋り方で!もうめっちゃカッコよくてぇ.....」
「うーん!わかったわかった!わかったよフレン。」
ヴィーナスは激しく遇らう!馬車の様に!
「でも.....フレン。良かったね。僕達は無事だ.....」
——目的の湿地帯が見えてくると、騎手は言った。
「お兄さん!起きたかい!元気か!今、シルトマーに向かってるよ!ここの湿地帯に入って、大きく迂回すればシルトマーが見えてくるはずだ!」
ーーそう言って一段と元気に馬車を揺らす!!
「ヴィーナス。あのな。俺.....気付いたんだ。冒険者が言っていた。あの人は.....学ぶことが無くなるほど、今まで使命を果たして来たんだって。そして、最後に言っていたんだ.....自分の名前は.....騎士、ヴェイロンだって.....」
俺があの事をヴィーナスに伝えると、
ヴィーナスは豆鉄砲を打たれた鳩の様に
驚く表情を俺に見せてきた!
「フレン.....それって.....《ヴェイロン》って.....」
——ヴィーナスは言葉を失っている.....。
まさか、ヴェイロンって人はヤバいのか?
やっぱりあの雑貨店のカウンターの男みてえに?
実は、アストラルの信仰者でした〜。
みてえなオチかましてきたりして!!
「フレン...その人はオーラリスの騎士だよ.....?」
.....え?、オーラリスの.....騎士.....?
「大英雄なんだ。幼い頃から監獄にような収容施設で修羅場を潜り抜けて来た伝説の戦士!過去に“ヴォイドリア“の異界から来た怪物に西のネンテルが襲われた時にね。彼はその大軍を1人で打ち破ったんだ!」
”ヴォイドリアの大軍“を.....1人で打ち破るー???
「な、なんて.....人なんだ.....スッゲェ.....」
——あまりの混乱に気を失いそうだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
——馬車がしばらく揺れると、騎手が話した。
「もうすぐ着くよ!さあ前を見な!」
俺達が視線を先に向けるとそこには.....!
夜の光に灯される美しい街と、
その中心に聳える白い巨城。
さらに、そんな美学に包まれる『丘』である!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「な、なんて広い街なんだ.....辺り一面を覆う様に広いぞ!すげえ.....なんか.....本当に凄えよ。もう、信じられないぜ.....これが.....シルトマーだなんて。」
心酔する様な夜景に、馬車は飛び込んで行く.....。
「フレン。本当に綺麗だね.....。僕の故郷も.....こんなに綺麗だったんだ.....。フレン。僕の本当のことを君に覚えてもらいたい。聞いてくれるかい?」
——ヴィーナスの.....本当のこと?
「それは.....どういう事だ?」
——ヴィーナスは火照った顔で微笑む。
「僕はミルドの王子なんだ。かの王、ヴィールの子孫でもある。ドゥナレスで故郷がドラゴンに襲われたって話をしたと思うけど、僕は周りの衛兵が必死に僕を逃がしてくれるのを見て.....自分も強く生まれ変わりたいって.....そう思ったんだ。王子じゃなくて、何かもっと、別の存在で見てもらいたい。だから僕は.....故郷を捨てて、ここに来た!」
..........すると、ヴィーナスの目が潤う..........。
「改めて言おう。僕の名前は、ヴィーナス=ヘイブンス。ミルドの王子です。オーラリスの英雄である、かつての王ヴィールの子孫.....フレン。貴方は自分の本当の名前を覚えているかい?」
——自分の.....本当の名前.....。
「君はメテリクス。過去の履歴書を調べた。フレン=メテリクス。騎士の末裔だ。君は騎士になる権利を持っているんだ。」
——メテリ.....クス
俺の経歴を知っている.....だと?それに、
ヴィーナスがミルドの王子だったなんて.....。
「俺は.....俺は!フレン=メテリクスか!そうか.....!欠けた円卓の騎士.....その1人なのか.....!」
——俺の頬に.....一筋の涙が流れ出した.....。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「やーい!やっと着いたぜ!待ちな〜。門の衛兵にパスを渡さなきゃ通れないからな〜。」
ーー騎手は得意げに衛兵に語りかける。
流石、何年も東の一帯を馬車で行き交ってるよな。
「騎手さん。今日は本当にありがとう。」
俺は騎手に改めてお礼をした。
「んなぁ照れるぜ〜。まったく!お代は払ってもらったんだからよ!そんな律儀じゃなくていいぜ〜!」
——俺は騎手に伝えたいことがあった。
「騎手さんの名前って.....」
「ああ〜!俺に名前か!ピットっていうんだ!よろしくなフレン・メテリクス!」
ああ!!この人もう苗字呼び慣れてない!?
「苗字呼びは.....なんか、まだ辞めてよ。」
——俺は照れ隠しをする。
「ガッハッハ!もう友達だな俺ら!シルトマーで沢山友達作ってけよ!フレンってほんっと、律儀な奴だよなぁー!ガッハッハ〜!」
——俺は、凄い幸せだ.....。
一時はどうにかなると思ってたけど.....
こうやって今.....サイッコーに幸せなんだよ!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
——父さん.....ありがとう。
俺を産んでくれて、
貴方が居てくれたから俺はここに居るんだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ピット。名前で呼ぶぜ。もう堅苦しく振る舞うのは辞めた。俺はこれから、フレン=メテリクスとして生きる!ありがとうなピット。ほんと.....みんなのお陰で人生が楽しいぜ。」
俺が素直に感謝を伝えると、どうやら.....
ピットは馬車から荷物を下ろしつつ照れ隠しをする。
「おいおいぇ〜!もうやめてくれよ〜!フレンってやつは!無駄にいい奴だな!」
「む、無駄にって.....なんだよー!!」
「ガッハッハ!ガッハッハッハッハ!」
馬車からペドロとカイザードさんが
——2人して、同時に降りて来た!
「うぉお!!よく寝た様な気分だが、なーんか頭が全くスッキリしねぇんだよなぁ.....あ、フレン。」
元気かは分かんねえけど、大丈夫そうだな!
「ふわぁ。もうどうなるかと思ったよー。フ、フレン君!?おー!救世主のフレン君.....ありがとう。」
——カイザードさん.....褒めすぎですよ.....。
「よーし!!絶景を拝みてぇけど!!事件のせいで物騒になってるらしいしな!!ここは、一旦近くの宿に泊まることとすっかぁ!!」
「うおおおおおおおお!!」
——こっから、
俺達の.....本当の旅が始まる気がした!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「やあやあ!いらっしゃい!えぇ!?カ、カイザードじゃないか!?久しぶりだな。お、お前、ドゥナレスの行商人の友人から聞いたんだよぉ!なんかポテス山で誘拐されてたんだって?大丈夫かよ!?」
宿屋の店主はカイザードと知り合いだそうだ!
「久しぶりじゃねぇかメルト!息子は立派になったか!?奥さんも老けてねえか!?」
凄い.....距離が近しい仲だな.....!
「毎回その質問してくんなよなー!全く。俺はここで働いてる間、おめえのこと心配したのによー!なーに人の世話になってんだコンヤロー!」
——楽しそうだな.....!
「あ!えっと。あんたらはカイザードを助けてくれた救世主たちか!?うわっはぁん!こんな.....絶望的に寒いあの雪山でカイザードを救ってくれるなんてよー!!」
「いやいや〜。俺たちはカイザードのにいちゃんにお世話になってるんで!」
「おぉスッゲェな!よし!おめえら全員今日はうちで泊まれぇ!カイザードを助けたお詫びに!飯をたらふく用意してやるぅぅぅ!!」
——飯.....飯、飯?飯!飯!?
「うおおおおおおおおおおおお!!!」
「ちょっと.....フレン!」
「おいおいフレン.....勘弁してだぜ.....」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夕飯の支度ができるまでの間、
俺達は改めて整理してみることにした。
「みんな。聞いてくれ。ヴィーナスから聞いたんだ。彼の本当の名前や事情、俺の本当の名前までね。」
ーーすると、ペドロが尋ねてきた。
「フレン。馬車の奴がお前のことメテリクスつーみてえなこと言ってたけどよ、あれってお前のホントの苗字なのか?って、てかぁ。なんでヴィーナスが.....」
ここで、お互いを整理する必要がある。
みんな、個人の経歴や出身はバラバラだ。
「みんな。僕はミルドからやってきた。王子のヴィーナス・ヘイブンスです。改めてよろしく。」
それにカイザードが驚きを隠せない!
「な、な、なんと!ヴィーナス!あんたがミルドの王子とは.....!」
「みんなには言ってなかったけどよ。俺とヴィーナスは血が繋がってる従兄弟関係なんだ。ミルドは昔、西部を襲ったドラゴンに襲撃されて、ヴィーナスは故郷を捨てることになってここに来たんだ。」
ペドロとカイザードの顔がヒョンとしてる.....。
そして.....ヴィーナスが口にする。
「ミルドを焼き払ったドラゴンの正体は分からないけど、ミルドを焼き払った後、空へ空へと.....天に向かって飛び去ったらしい。」
ヴィーナスがミルドのドラゴンの話をすると、
カイザードが何か知っていた様な事を言う。
「西部戦線を崩壊させたドラゴン.....7つの西部国が焼き払われ、多くのものが東南北へと逃げた。奴の名前は『ルフゼリファ』、強力な精神干渉の力を持っている邪悪なドラゴンだ。ドラゴンは昔、オーラリスの帝都を襲撃したことがある。三百年以上も前にな。エインウィルのエーテルを持ち得た最初の王であり、英雄であるヴィールが竜王フォルリアンを光の槍で倒したとの文献は、今や有名な歴史.....」
「フォルリアンとかいう竜の話は、ヴィーナスから聞いたことあるぜ!」
「カイザードは有名大卒の超エリート魔術師!!兄のティグターからは聞いているぜ.....!!」
「ああ!知ってたのかー!では、改めまして、俺はカイザードって言うんだ!大学は.....ネンテルの所から来たんだ。王宮魔術師にはなれなかったけど、学校では回復魔術を専攻していたんだ!よろしくな!」
「カイザードすげえな!よろしくよろしくー!」
「俺の名は.....ペドロだ。あんときは最悪死ぬかと思ったぜ。言いにくいんだが.....い、いや!もうどうでもいい!なんでもないぜ!俺はここに居るんだからな!カイザードさん。よろしくな!」
「ペドロ、フレン、ヴィーナス。みんな、よろしく!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺は臆しない『フレン・メテリクス』!!
アストラルでは狼の番人を撃破した男だ!!
「フォルリアンとかー?フルゼリーなんちゃら...みてえな奴らは知らねえけど!俺が全部叩き切ってやるぜ!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
——夕食の時間が来た様だ。
「おーい。夕飯が出来たぜ!全員降りてこいよ〜。」
待ちに待った『夕飯』の時間が来たぜ!
古い螺旋階段を《ぐるりぐるり》と降りる。
「お待たせ〜!今日は初めてシルトマーにお越し頂いたということで!メルト爺さん特製の《海老グラタン》!《コーンスープ》!《沼ヤギのシチュー》!そしてそして〜、メインディッシュの《水牛のリブロースステーキ》だぁ!さあ、召し上がれ!この度は、本当にお疲れさんだった。」
——匂いで分かる.....これは絶品だ!
「さあ、牢から出て二度目のちゃんとしたご馳走!存分に頂くぜ!ありがとうメルト爺さんよ!」
「おーう!ちゃんと食ってけよー!」
「いっただっきまーす!!」
さて、長旅のお口直しと行きましょうか。
——まずは《コーンスープ》からだろ!!
「ジュルル!う、うめえ!漲るぜ!こりゃたまんねえ味だ!あったまって最高だぜ!」
——次はー?《海老グラタン》!!
「海老〜海老〜!いっただっきまーす!表面のカリカリなチーズが最高だな!うわぁ、漲るほど十分なこのトロトロ具合!すげぇ!完璧だ。カプッ。うーん!!海老がまろやかで、チーズのとろけ具合が最高だぜぇ!」
——次は次は!!《沼ヤギのシチュー》!!
「やっぱり、これがキメ手!シチューの旨さが料理の旨さだ!さぁて!いただくぜ!カプッ!ホッホッホ、あ、熱いな.....ま、まろやかで最高だぜ。」
——さあ!メインディッシュだ!
《水牛のリブロースステーキ》!!
「うおぉ!ジューシーだなぁ!すげぇ!」
驚くほどの肉厚.....柔らかさ.....!
ーーこれぞ、メインディッシュの風格!
「凄え簡単に切れる程に柔らかい!い、いくぜ?カプッ!.....うぅぅぅんまぁい!すげぇ!口の中でトロける食感が舌鼓を打ってくれる.....この肉厚のボリュームも満足感大.....それにそれに!この滝の様に流れるジューシーな油が舌全体を覆うぜ.....」
——全てが俺を満たしてくれる。
こんな良い食事を食っていたら、
シルトマーの物騒な事件なんて忘れてしまった。
「最高だぜ!うーん!どれも満足するな〜!」
「とても、美味しい.....!シルトマーならではだ!」
「ジュルル.....!うーん!.....旅って、楽しいぞー!」
こうして、4人は今夜は素敵な晩餐を過ごした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(グビィィ.....グビュビュ.....)
不思議な感覚だ。
一切、身体に血が流れない感覚だ。
どうなってるんだ.....?
「———」
——何かが聞こえるぞ.....。
誰だ。誰の声なんだ。
「———」
俺は、木陰にいる.....。
遠くの木の下に誰かがいて、
——俺のことを呼んでいる.....。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おはようございます!みんな!」
朝目覚めると、ヴィーナスが改まって挨拶してきた。
「よ、よお。ヴィーナス。」
ペドロもフカフカのベッドで心地良かったのか、
存分に眠った様な顔をしている。
「グビィィ.....グビュビュ.....」
カイザードは攫われたこともあってか、
かなり疲労困憊らしい。ずっと起きる気配がない。
「よお、ヴィーナス。おはよう、ペドロ。」
——俺はそっとカイザードに言った。
「お疲れ様.....」
俺が呆然としていると、
窓の外が白く、何も映っていない事に気付いた。
「なんかすげぇ寒いなぁ.....」
——俺が外を眺めるため、窓を開くと.....。
(ビューゥー.....)
——冷たい朝に空気が風となって入り込む!
「つ、つめたい.....ってか.....何も見えねえ!」
俺が窓の外を覗くと、街は殆ど見えなかった。
朝の風景が、霧で完全に覆われている。
「シルトマーの早朝はよく霧が覆っていることがあって、少し時間が経たないと賑やかにならないんだ。」
——そうヴィーナスが説明する。
「な、なるほどな。」
——俺はただ、窓の外を呆然と眺める.....。
何もない霧の景色でも.....何故か物珍しい。
退屈に感じない霧景色を、ひたすら眺めている.....。
次回:シルトマーに到着したフレン一行は、宿屋で最高の晩餐を振る舞ってもらった。謎の夢を見て醒める中、朝の霧景色とともに気持ちを整理するフレン。新たな出会い、新たな発見があるのか。シルトマーでは、そんな深い真相に出会すだろう。




