表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/13

猛吹雪-Part8

三人は強力な《狼の番人》を撃破した!


——しかし喜びも束の間、

雑貨店の店主である《カイザード》に遭遇。

そして肝心の“脱出方法”を発見する.....。


遂に店主を見つけ、脱出が叶うのか.....!


しかし、その先は過酷で理不尽な

《猛吹雪》の大地であった.....。

——ペドロがヴィーナスを担ぎ上げる。


「おい.....行くぞ。大して活躍しなかったじゃねぇかこのボンクラ。口だけの青年かよ!」


——ヴィーナスは何も言い返さなかった.....。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


祭壇を見ると人が横たわっている。


「この人は.....!雑貨店の店主か!?」


——俺たちが近づくと、男が目を覚ました。


「ん.....ん。あぁ、」


意識が朦朧としているようだ。

——そして、意識が徐々に戻っていく。


「んぅん。んぁ。あ。あ?はあああぁぁ!!」


男の目は全開になって、驚いている様子。


「お前たちは.....け、剣!?俺を解体でもするのか!あぁ神よ!大天使ローファウスよ!」


——男はそう言って泣き出した.....。


「ちょっと、大丈夫っすか!?俺達は攻撃をしにきたわけじゃありませんよ!貴方、ドゥナレスの雑貨店の店主じゃないんですか?」


——俺がこう伺うと、

男はこちらをまじまじと見つめる。


「ああぁ。思い出してるぞ。そうだ!そうなんだ!俺、山を通ってる時に襲われたんだ!」


ああ、やっぱりそうか。

この男こそ雑貨店の店主だ!


「一応、聞くけど。貴方の名前は?」


男はまだ俺たちを警戒しているが言った。


「カイザード、、だ。」


やっぱりこの人、《カイザード・カムレッグ》.....。


「俺はフレンだぜ。カイザードさんよ!兄のティグターさんにお世話になって、俺達が助けに来た!」


俺たちの存在を認識するやいなや、

目に涙を浮かべて感謝し出した。


「ありがとうぅ。もう死ぬかと.....うう.....」


——彼はそうと泣き出した。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


雑貨店の店主はもう安心だ。

——後は帰るのが課題である。


狼の番人が持っていた認証がある。

これは入り口の暗号を修復出来るらしい。

どうやら、この暗号を修復できれば、

元の世界に戻れるようだ。


「暗号に近づけるぞ!」


——認証を暗号に近づけた。

すると.....暗号が修復されて扉が開いた!


「おい.....どうするんだぜ。この先に繋がってる空間がポテスの山じゃなかったら.....エインウィルじゃねえ可能性だってあるぜ?全く何もねえ空間に飛ばされる可能性だってある.....どうするんだ?フレン!」


——確かに.....ペドロの言う通りだろう.....。

この先がどこに繋がってるか分からない。

かと言って、ここに留まるわけにも.....。


「俺はいくぜ。もうここには留まってられねえ。この扉が空いているうちに行くぞ。」


扉の先へ身を乗り出し、思いっきり入り込む!


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


(ビューゥー.....ゴゴォォ.....ゴゴォォ.....)


眩い光と.....吹雪の音だ.....確信はある!

俺が飛び出した先で目を覚ますと、

辺り一面真っ白な景色が広がる。


「ここは.....ポテスなのか?全く分からねえ。辺りが冷たく白いもので出来ていやがるぜ。どうすればいいんだ。3人が.....中々来ないぞ.....」


——俺は酷く冷たい風に吹かれて進み出す.....。


「熱い。焼けるようだ.....。」


寒いのに、その白いものは肌を焦がすようだった。

後ろからスリップ音が聞こえる.....。


「!?.....ヴィーナスとペドロか!?」


俺が振り向くと、案の定彼らだった。

3人とも同時に入ってきたのか.....。


「すげぇな.....はは.....なんて寒さだ.....この雪.....安心するぜ.....」

「ペドロ!」


俺はペドロたちの方向へ駆け戻る。


「早く暖を取らないと、ここはまずい.....」


ヴィーナスがそう言ってバックを漁る。

ただ、焚き火を焚いても風で消えるだろう。


「どうする.....考えてみろ。この寒さ.....終わりじゃねぇか。ど、どうする?ここ.....雪原じゃねえか.....吹雪まで.....耐えられねえぜ.....」


——風の障害になるものがない..........。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


——路頭に迷い、万策尽きた。

凍え死ぬしかないようだ.....。


「体が.....どんどん冷たくなってくる。フレン、ペドロ.....大丈夫.....?もう.....駄目か.....な」


ヴィーナスがバックに手を入れたまま、

——目を閉じて.....動かなくなる.....。


「嘘だ.....ヴィーナス.....死ぬな!おい!ヴィーナス!ペドロ!.....!?あぁ!カイザードさん!あぁ.....あああああ!」


ヴィーナス...ペドロ...カイザード...さん.....。


俺.....1人は.....嫌だ.....。


「あああああああああ!!!」


助けて!誰か助けてぇ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!


「死ねないんだよぉ.....死にたくない!.....あぁ...」


ここまで.....来たの.....に.....。


——痛い。熱い。


ずっと果てに向かって無が続いている.....。


「死ねないんだよ。助けて.....誰でもいいから.....」


——目の前にいるのは人ならざる者がいる。


——巨大な.....眼.....。


「ああ.....もう.....殺され.....て.....」


(プ................ツン............)


——う.....光が.....暖かい。

熱いのも.....冷たいのも.....な.....い。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


父さん。騎士になれなくてごめん。

最後の希望だって、貴方は言ってくれた。


「フレンがいなきゃ。やってらんねえ。」


貴方ほどかっこいい人は見たことなかった.....。

貴方が亡くなって僕は貧困街に放り出される時まで、

ずっと.....ずっと.....憧れだったんだ.....。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「———」


「君..........意識は戻ったかい?」


——誰だ.....この人が誰か分からない.....


「4人とも.....辛かったね。」


——4人とも.....?俺たちは.....雪山で.....。


「意識はあるんだな。命に別状は.....あるんだが.....“あった”というのが正しいだろう。なんせ、もうこの青年たちは無事だから。心配は要らないな。」


手が凍えて動かなかったのに、

何事も無かったかのように.....

——俺の手が.....動いている.....。


「君、もう意識あるね。大丈夫そうだ。回復の魔術は成功だよ。真価は試せた。もう学ぶことはなくなったようだ.....俺の役割も.....終わりに近い。」


誰だ.....コイツは.....この男は.....。

俺たちに何をしたんだ.....。


「うぅ.....なんで.....手が.....。」


意識が.....ある。なんで.....冷たいはずなのに.....。


「意識が完全に戻るまで時間が掛かりそうだな。こんな青年たちがポテスの大山脈地帯まで来るなんて.....世の中には、こんなに厳しくならなければならない理由があるのだというのか.....」


——意識が徐々に戻りつつある。

全体に冷たい血が通う感覚が残る。

自分の血が、全身を通っている実感.....。

目の前に.....男がいる.....。

黒い甲冑の男が.....はぁ、はやく逃げないと!


「君の名前は?」


彼は俺の意識が戻ってきたことを悟ったようだ。


「ふ.....フレン.....です.....」


「そうかフレンね。君、シルトマー向かってたの?」


黒い甲冑の男は平然と尋ねる.....。


「なんで俺は.....無事なんですか.....」


暖かい.....体に力が戻ってくる.....。


「私は、冒険者だからね。各地で様々な魔術を学び、修行を積み重ねて、経験もして、恋愛もして.....んー.....したかなぁ?.....忘れたけど.....甘酸っぱい事もしているような.....まあ。そんな存在だよ。」


黒い兜で顔は見えない。立派な鎧だ。

——黒い紋章付きの剣を据えてる.....。


「貴方は.....名前.....なんていうんですか.....?」


俺は黒い鎧の男に聞く.....。

しかし.....思い出した。


「ヴィーナス.....ペドロ.....カイザードさん.....彼らを助けて欲しいんです.....俺はいいから.....お願いです.....お願いだから助けてください.....お願い.....」


俺は思うがままに泣き、願った。

彼らが無事でいることを.....。


「彼らは大丈夫だ。私が治療した。意識こそないと思うが、体は脈が通っている.....元気さ.....」


彼の言葉に耳を疑って、辺りを見回す.....。


「ヴィーナス!ペドロ!カイザードさ.....は!」


——俺は目をも疑うことになった.....。

猛吹雪だったこの白い景色が、、!

あの.....何も見えない場所が.....!

山々が聳える草原へと変わっている.....!


「はぁ.....は.....助かった.....助かって.....良かった.....あぁ.....ああ.....ありがとう.....ほんとうに.....ありがとう.....ございます.....」


——俺は泣いて冒険者に詫びた。


「問題ない!自分に責務が出来ることは良いことだって思ってね.....何も出来ない俺が、少しでも多く人を救うことが出来たら.....と。そう思ったんだ。」


涙が.....自分の目から零れ落ちる.....。


「本当に.....ありがとう.....。」

「ヴィーナス!ペドロ!ああぁ.....!」


俺は固まって眠っている3人に抱きついた。

冒険者が言う通り、彼らは暖かく、脈がある!


「本当に.....なんて.....言ったら良いか.....」


感謝が仕切れない.....こんな過酷な中で.....。


「力は.....自分だけの為じゃない。」


——冒険者は俺の前に跪いて.....誓った。


「君たちが、どんな使命を背負っているのか.....私には分からない.....このポテスの山を通った時に、たまたま君達らと遭遇したんだ.....。猛吹雪の中.....年端も行かない青年たちが、必死に足掻くのを見た.....その姿に、やり切れなくなってね.....」


草むらの香りがあの吹雪を忘れさせる。

——風の靡が頬を掠めていく.....。


俺は気付いた.....気付いたんだ.....自由だって。

どんなに酷くったって.....助けられたって.....

弱くったって.....法に押さえつけられたって.....

俺は.....俺の意思で生きれてる.....自由なんだ....。


「ありがとうぅ.....!ありがとうぅ!もう.....全部駄目だった!投げ出したかった!諦めたかった!自由になったのに.....自分の壁が大きいことに気付いて.....怖くって.....それで.....うぅ.....うぅ!」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


俺は泣いて.....泣いて.....抑え切れなかった.....。

ありがとう.....みんな.....俺は.....1人じゃ.....。


——やがて.....遠くから馬車が来た.....。


シルトマーからの迎えだろう。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「俺はこれから、氷の猛獣の討伐に向かう。君たちは、馬車に乗ってシルトマーにいくんだ。その魔術師の人は、シルトマーで顔が広いんだ。みんな.....君たちのことを聞けば、良くしてくれるよ.....」


——俺は.....冒険者にもう一度お礼を言う。


「ありがとう.....ございました.....。俺.....もっと強くなります!.....強くなって.....もっと強くなって.....人を.....守れるようになりたい.....!」


——冒険者は優しく笑いかける。


「励みなさい!君は.....可能性があるよ!」


——冒険者はそう励ますと、踵を返す。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「あ.....あ、あの!」


——冒険者の足が止まる.....。


「冒険者さん.....その.....名前を.....教えて頂けませんか.....!」


.....冒険者は再び.....振り返った.....。


「俺は.....騎士、ヴェイロンだ。」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


そう名乗った男は、雄大な背を向け、

——巨大なポテスの山々に旅立った.....

俺達を救った、英雄として.....。

次回:猛吹雪の中、助けられたフレン。ヴェイロンと名乗るその英雄からは、多大なる恩を承った。束の間に豊穣の草原へと変わり果てた、あの大雪原。フレン達の元にシルトマー行きの馬車が来る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ