猛吹雪-Part8
三人は強力な《狼の番人》を撃破した!
——しかし喜びも束の間、
雑貨店の店主である《カイザード》に遭遇。
そして肝心の“脱出方法”を発見する.....。
遂に店主を見つけ、脱出が叶うのか.....!
しかし、その先は過酷で理不尽な
《猛吹雪》の大地であった.....。
——ペドロがヴィーナスを担ぎ上げる。
「おい.....行くぞ。大して活躍しなかったじゃねぇかこのボンクラ。口だけの青年かよ!」
——ヴィーナスは何も言い返さなかった.....。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
祭壇を見ると人が横たわっている。
「この人は.....!雑貨店の店主か!?」
——俺たちが近づくと、男が目を覚ました。
「ん.....ん。あぁ、」
意識が朦朧としているようだ。
——そして、意識が徐々に戻っていく。
「んぅん。んぁ。あ。あ?はあああぁぁ!!」
男の目は全開になって、驚いている様子。
「お前たちは.....け、剣!?俺を解体でもするのか!あぁ神よ!大天使ローファウスよ!」
——男はそう言って泣き出した.....。
「ちょっと、大丈夫っすか!?俺達は攻撃をしにきたわけじゃありませんよ!貴方、ドゥナレスの雑貨店の店主じゃないんですか?」
——俺がこう伺うと、
男はこちらをまじまじと見つめる。
「ああぁ。思い出してるぞ。そうだ!そうなんだ!俺、山を通ってる時に襲われたんだ!」
ああ、やっぱりそうか。
この男こそ雑貨店の店主だ!
「一応、聞くけど。貴方の名前は?」
男はまだ俺たちを警戒しているが言った。
「カイザード、、だ。」
やっぱりこの人、《カイザード・カムレッグ》.....。
「俺はフレンだぜ。カイザードさんよ!兄のティグターさんにお世話になって、俺達が助けに来た!」
俺たちの存在を認識するやいなや、
目に涙を浮かべて感謝し出した。
「ありがとうぅ。もう死ぬかと.....うう.....」
——彼はそうと泣き出した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
雑貨店の店主はもう安心だ。
——後は帰るのが課題である。
狼の番人が持っていた認証がある。
これは入り口の暗号を修復出来るらしい。
どうやら、この暗号を修復できれば、
元の世界に戻れるようだ。
「暗号に近づけるぞ!」
——認証を暗号に近づけた。
すると.....暗号が修復されて扉が開いた!
「おい.....どうするんだぜ。この先に繋がってる空間がポテスの山じゃなかったら.....エインウィルじゃねえ可能性だってあるぜ?全く何もねえ空間に飛ばされる可能性だってある.....どうするんだ?フレン!」
——確かに.....ペドロの言う通りだろう.....。
この先がどこに繋がってるか分からない。
かと言って、ここに留まるわけにも.....。
「俺はいくぜ。もうここには留まってられねえ。この扉が空いているうちに行くぞ。」
扉の先へ身を乗り出し、思いっきり入り込む!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(ビューゥー.....ゴゴォォ.....ゴゴォォ.....)
眩い光と.....吹雪の音だ.....確信はある!
俺が飛び出した先で目を覚ますと、
辺り一面真っ白な景色が広がる。
「ここは.....ポテスなのか?全く分からねえ。辺りが冷たく白いもので出来ていやがるぜ。どうすればいいんだ。3人が.....中々来ないぞ.....」
——俺は酷く冷たい風に吹かれて進み出す.....。
「熱い。焼けるようだ.....。」
寒いのに、その白いものは肌を焦がすようだった。
後ろからスリップ音が聞こえる.....。
「!?.....ヴィーナスとペドロか!?」
俺が振り向くと、案の定彼らだった。
3人とも同時に入ってきたのか.....。
「すげぇな.....はは.....なんて寒さだ.....この雪.....安心するぜ.....」
「ペドロ!」
俺はペドロたちの方向へ駆け戻る。
「早く暖を取らないと、ここはまずい.....」
ヴィーナスがそう言ってバックを漁る。
ただ、焚き火を焚いても風で消えるだろう。
「どうする.....考えてみろ。この寒さ.....終わりじゃねぇか。ど、どうする?ここ.....雪原じゃねえか.....吹雪まで.....耐えられねえぜ.....」
——風の障害になるものがない..........。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
——路頭に迷い、万策尽きた。
凍え死ぬしかないようだ.....。
「体が.....どんどん冷たくなってくる。フレン、ペドロ.....大丈夫.....?もう.....駄目か.....な」
ヴィーナスがバックに手を入れたまま、
——目を閉じて.....動かなくなる.....。
「嘘だ.....ヴィーナス.....死ぬな!おい!ヴィーナス!ペドロ!.....!?あぁ!カイザードさん!あぁ.....あああああ!」
ヴィーナス...ペドロ...カイザード...さん.....。
俺.....1人は.....嫌だ.....。
「あああああああああ!!!」
助けて!誰か助けてぇ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
「死ねないんだよぉ.....死にたくない!.....あぁ...」
ここまで.....来たの.....に.....。
——痛い。熱い。
ずっと果てに向かって無が続いている.....。
「死ねないんだよ。助けて.....誰でもいいから.....」
——目の前にいるのは人ならざる者がいる。
——巨大な.....眼.....。
「ああ.....もう.....殺され.....て.....」
(プ................ツン............)
——う.....光が.....暖かい。
熱いのも.....冷たいのも.....な.....い。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
父さん。騎士になれなくてごめん。
最後の希望だって、貴方は言ってくれた。
「フレンがいなきゃ。やってらんねえ。」
貴方ほどかっこいい人は見たことなかった.....。
貴方が亡くなって僕は貧困街に放り出される時まで、
ずっと.....ずっと.....憧れだったんだ.....。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「———」
「君..........意識は戻ったかい?」
——誰だ.....この人が誰か分からない.....
「4人とも.....辛かったね。」
——4人とも.....?俺たちは.....雪山で.....。
「意識はあるんだな。命に別状は.....あるんだが.....“あった”というのが正しいだろう。なんせ、もうこの青年たちは無事だから。心配は要らないな。」
手が凍えて動かなかったのに、
何事も無かったかのように.....
——俺の手が.....動いている.....。
「君、もう意識あるね。大丈夫そうだ。回復の魔術は成功だよ。真価は試せた。もう学ぶことはなくなったようだ.....俺の役割も.....終わりに近い。」
誰だ.....コイツは.....この男は.....。
俺たちに何をしたんだ.....。
「うぅ.....なんで.....手が.....。」
意識が.....ある。なんで.....冷たいはずなのに.....。
「意識が完全に戻るまで時間が掛かりそうだな。こんな青年たちがポテスの大山脈地帯まで来るなんて.....世の中には、こんなに厳しくならなければならない理由があるのだというのか.....」
——意識が徐々に戻りつつある。
全体に冷たい血が通う感覚が残る。
自分の血が、全身を通っている実感.....。
目の前に.....男がいる.....。
黒い甲冑の男が.....はぁ、はやく逃げないと!
「君の名前は?」
彼は俺の意識が戻ってきたことを悟ったようだ。
「ふ.....フレン.....です.....」
「そうかフレンね。君、シルトマー向かってたの?」
黒い甲冑の男は平然と尋ねる.....。
「なんで俺は.....無事なんですか.....」
暖かい.....体に力が戻ってくる.....。
「私は、冒険者だからね。各地で様々な魔術を学び、修行を積み重ねて、経験もして、恋愛もして.....んー.....したかなぁ?.....忘れたけど.....甘酸っぱい事もしているような.....まあ。そんな存在だよ。」
黒い兜で顔は見えない。立派な鎧だ。
——黒い紋章付きの剣を据えてる.....。
「貴方は.....名前.....なんていうんですか.....?」
俺は黒い鎧の男に聞く.....。
しかし.....思い出した。
「ヴィーナス.....ペドロ.....カイザードさん.....彼らを助けて欲しいんです.....俺はいいから.....お願いです.....お願いだから助けてください.....お願い.....」
俺は思うがままに泣き、願った。
彼らが無事でいることを.....。
「彼らは大丈夫だ。私が治療した。意識こそないと思うが、体は脈が通っている.....元気さ.....」
彼の言葉に耳を疑って、辺りを見回す.....。
「ヴィーナス!ペドロ!カイザードさ.....は!」
——俺は目をも疑うことになった.....。
猛吹雪だったこの白い景色が、、!
あの.....何も見えない場所が.....!
山々が聳える草原へと変わっている.....!
「はぁ.....は.....助かった.....助かって.....良かった.....あぁ.....ああ.....ありがとう.....ほんとうに.....ありがとう.....ございます.....」
——俺は泣いて冒険者に詫びた。
「問題ない!自分に責務が出来ることは良いことだって思ってね.....何も出来ない俺が、少しでも多く人を救うことが出来たら.....と。そう思ったんだ。」
涙が.....自分の目から零れ落ちる.....。
「本当に.....ありがとう.....。」
「ヴィーナス!ペドロ!ああぁ.....!」
俺は固まって眠っている3人に抱きついた。
冒険者が言う通り、彼らは暖かく、脈がある!
「本当に.....なんて.....言ったら良いか.....」
感謝が仕切れない.....こんな過酷な中で.....。
「力は.....自分だけの為じゃない。」
——冒険者は俺の前に跪いて.....誓った。
「君たちが、どんな使命を背負っているのか.....私には分からない.....このポテスの山を通った時に、たまたま君達らと遭遇したんだ.....。猛吹雪の中.....年端も行かない青年たちが、必死に足掻くのを見た.....その姿に、やり切れなくなってね.....」
草むらの香りがあの吹雪を忘れさせる。
——風の靡が頬を掠めていく.....。
俺は気付いた.....気付いたんだ.....自由だって。
どんなに酷くったって.....助けられたって.....
弱くったって.....法に押さえつけられたって.....
俺は.....俺の意思で生きれてる.....自由なんだ....。
「ありがとうぅ.....!ありがとうぅ!もう.....全部駄目だった!投げ出したかった!諦めたかった!自由になったのに.....自分の壁が大きいことに気付いて.....怖くって.....それで.....うぅ.....うぅ!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺は泣いて.....泣いて.....抑え切れなかった.....。
ありがとう.....みんな.....俺は.....1人じゃ.....。
——やがて.....遠くから馬車が来た.....。
シルトマーからの迎えだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「俺はこれから、氷の猛獣の討伐に向かう。君たちは、馬車に乗ってシルトマーにいくんだ。その魔術師の人は、シルトマーで顔が広いんだ。みんな.....君たちのことを聞けば、良くしてくれるよ.....」
——俺は.....冒険者にもう一度お礼を言う。
「ありがとう.....ございました.....。俺.....もっと強くなります!.....強くなって.....もっと強くなって.....人を.....守れるようになりたい.....!」
——冒険者は優しく笑いかける。
「励みなさい!君は.....可能性があるよ!」
——冒険者はそう励ますと、踵を返す。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あ.....あ、あの!」
——冒険者の足が止まる.....。
「冒険者さん.....その.....名前を.....教えて頂けませんか.....!」
.....冒険者は再び.....振り返った.....。
「俺は.....騎士、ヴェイロンだ。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そう名乗った男は、雄大な背を向け、
——巨大なポテスの山々に旅立った.....
俺達を救った、英雄として.....。
次回:猛吹雪の中、助けられたフレン。ヴェイロンと名乗るその英雄からは、多大なる恩を承った。束の間に豊穣の草原へと変わり果てた、あの大雪原。フレン達の元にシルトマー行きの馬車が来る。




