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AETHEL/エーテル -世紀の英雄-  作者: 白亜キング
【第1章】放浪騎士
6/10

ログアウト不能-Part6

暗号化された部屋の眩い青光によって、

未知の空間へと転送された3人だが、

そこはヴェクターラの領域だと知り、

あまりの美しさに戦慄してしまう.....。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


全てが暗号化され、物理概念となった世界。

ーーここは何をしても「脱出不可能」

そうである事を3人は確信する事になる。

「脱出の方法を考えて入るべきだったのに.....」


ーー俺たちはとんでもない状況に直面している.....。

それも、油断していると何に遭遇するか分からない。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ヴェクターラの領域は暗号化された、

ーーいわば数式、数字の世界だ。

少しの暗号を何かのキッカケで弄れば、

それは.....もう大変な事になってしまう!


「ペドロ.....慎重に進むぞ.....」


何に遭遇するか分からない。

そんな恐怖を抱きながら前に進む.....。


(ああ駄目だ.....本当に終わった。)


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ーーこの中でヴェクターラの領域について

詳しく情報を知っているのはヴィーナスしかいない。

そのため、探索は完全にヴィーナス頼りになる。


「まさに脱出不可能だな。僕たちは大変なことをしたと思うよ。しかも、彼方此方に飛び回っている生命は全て数学の概念が現象化している存在.....星々も夜空も数学の現象なんだ。ーーきっと.....ここから出るのが無理だとしても有り得なくない。一生変数の中の世界に囚われ続ける.....そんな覚悟を持った方が良い.....」


俺たちが足を進めると、早速開けた土地に出た。

大きなその島々は浮かび上がっていて、

落ちたら別の暗号と一体化するんだろう。

本当に恐ろしい空間に足を踏み入れたものだ。


ーー無策で.....。


ーー開けた土地の中心には、

息を呑むような絶景を眺めるような位置に、

巨大な祭壇と人々が確認できる。


「あいつらにゃぁ近付くな。もう何百年もあそこにいると思うぜ。なんたって、組織のリーダーよりも昔から信仰してるやつもいる.....世界中からヴェクターラの使徒が集まってくるからな。注意しろよ。ここはただの数学の世界じゃねえぜ。ヴェクターラの領域だ。あの王の意思によって変数を操れる.....つまり、膨張し続ける無限の空間から俺達が出ることを許されていない場合、他の暗号と一体となって残酷な最期を迎えるか、永遠に取り残されるかになるよな。」


ペドロは少し希望を失っている。

ーー本当に申し訳ないことに、

こういう事象は俺が予測するべきだったのだ。


「もう少し先に進もう。祭壇は迂回して。」


ヴィーナスが奇妙な草むらを掻き分ける。

しかし、光る草は粘液のように干渉してくる。

.....やばい!一体化してしまうぞ!


ただひたすら紙一重で避けたが、

ヴィーナスのバックは草むらと一体化している。


「ここは本当にヤバいぜ.....洒落にならない概念しか存在しない。使徒になったことを後悔する程だぜ。」


ペドロがそう愚痴を溢す。

バックの様子から伺えば妥当な反応だろう。


「祭壇に行って、協力して貰おう。」


ーー3人は真っ直ぐ祭壇へ向かった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ーー草がない道を進むと、

1人の術者に出会う事になった。


「こ、こんにちは。あの、良いですかね.....」


俺は恐る恐る声を掛ける.....。


「やあ、君たち.....迷い込んだような顔をしているが、どうやってここに来たんだい?知識を得に来たのかね?暗号の一部となる代償が伴うんだぞ?ヴェクターラとお喋りしに来たのかね?」


老人の術師は意味不明なことを口にする。

ーー怖くなったが、俺は老人に聞く。


「この祭壇の者はヴェクターラの使徒ですか?この人々は何をしてるのでしょう。えっと.....」


老人は衝撃的な事を口にする。


「ヴェクターラの子供だよ。私達は既に暗号化された子供であり、この世界に縛り付けられている。暗号は繋がり、ヴェクターラの意思を持っている。お前が話しているこの老人は.....ヴェクターラ.....つまりこの私なのだ。何か気に入らんか?」


俺は唇が激しく揺さぶられるのを感じた。

怖い.....これがヴォイドリアの王なのか.....。


「あの。俺達は雑貨店の店主である男を探しています。祭壇に捧げられる前に、その男をこの領域の外に出して、一緒にアストラル暗号から出たいです。」


俺は勇気を搾り出してヴェクターラと思われる

老人の見た目をした術師にそう語りかけた。


「ほんほん。好きにしたらどうかね。君は選択という分岐を他人任せにするのか?その先にある事象を恐れているのか?残念な子供だ。知識が欲しいのか?」


ーー老人はそう言って俺達に近寄る.....。


「来るな!」


ーーヴィーナスが叫ぶ。

しかし、老人はピタッと止まった。


「アストラルの神殿はすぐそこに見えるだろう。大きな渦状の霧で隠れているだろうが、あの中には虚数でできた夜空に覆われる空間があるはずだ。ーーお前があの門番に叱られない限り大丈夫よ。」


そう言って老人は暗号となり消え去った.....。


「おそらくあの巨大な渦状の霧の中にある!あの島の中に入れば、神殿があるはずだ。雑貨店の店主を見つけよう!脱出はそれからだ!」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ーー俺達は島々を繋ぐ虹を渡って行く。

今にも割れそうで、下を見てはいけない.....。

足を進めるとともに、巨大な霧が前を覆う!

見えない!.....全然前が見えない!


「フレン!ペドロ!這っていくぞ!這えば虹が何処に続いているかわかるはずだ!」


ヴィーナスにそう言われるがままに、

俺たちは這いながら虹の橋を進む。


物理の概念だからか、

霧は俺たちに感触のみを与えた。

ーー不思議な感覚だ.....。


俺達が虹の橋を這いながら進むと、

台風の目のように辺りが明るくなった。

その空間には直ぐに巨大な島があり、

空には漆黒の虚数の空が広がっている。


「あの島の中心に神殿があるのが見えるか!?」


俺は神殿を指差して2人に見せた。


ーー虹の橋を慎重に進み続けて、

俺たちは遂に巨大な島に上陸した。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「やったぞ。怖かったなヴィーナス、ペドロ。もう落下の心配は無さそうだぜ。でも油断できねえな。雑貨店の店主らしき人物がいるんだろうか.....」


ーーとにかく神殿に進むしかない。

島の中心にある丘を登りきれば、

雑貨店の店主に会えるかもしれない!

丘の頂上への道は長く、急に感じた。


「おかしいぞ.....山を登ってるみたいだぜ。」


もはや、丘とは言えない急斜面に戦慄する。

先々を見れば、確かに緩やかな丘なのに.....。

登れば登るほど息が荒くなる。


息を凝らしてかなり登り続けて、

神殿があともう少しになった時!

急斜面が断崖絶壁と化したではないか!


「駄目だ!もう手詰まりだぞ!」


ーーペドロは限界だったのか嘆いている。

この坂は俺たちが前に進むほど急斜になる。

進んだ距離に比例して高くなる.....。


「あ!」


ーー突然、ヴィーナスが声を上げる!!


「どうしたヴィーナス!何か策が!?」


ーー俺たちはヴィーナスに全てを賭ける!


「この坂!一次関数のように俺達が進んだ距離に比例してるんだ!前に進んでいるのが関係してるのか、右に進んだり、左に進んだりしている間は斜面が急にならなかった!つまり.....後ろに進めば関数は元に戻る事になる!」


ーー名案だぜ.....ヴィーナス君。

俺達は後ろに踵を回し、

ただ背後に向かって歩き続ける!


ーーすると、

さっきまで急斜面だった坂がみるみる緩くなる!


「これだ!この坂は後ろに歩く事で緩やかになる!」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


こうして遂に、俺たちは頂上まで辿り着いた。

目の前には彫刻と装飾が散りばめられた神殿。

灰色の石によって見事に出来上がっている。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「2人とも、これがヴェクターラの神殿だぜ。」


ペドロの目に、希望が宿っている!

ーー脱出方法はまだ分からないが!

間違いなく良い方向には向かっている!

次回:一次関数の法則から成る丘を登り切った3人は、ヴェクターラの神殿へと足を踏み入れる。老人の術師と会話した時に残った「門番」への印象を抱えながら、恐怖と共に雑貨店の店主を救うべく立ち向かっていく。

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