星域-Part5
ペドロを撃破し、負傷したフレンとヴィーナス。
行くあてもなくただ洞窟を彷徨う運命に
路頭に迷う事になる2人だったが、
そんか窮地にまさかの味方がついて行く.....。
「ヴィーナス!無事か!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ーー俺はヴィーナスを優しく起こす。
幸いにも意識ははっきりとしている。
「凄いよ.....フレン.....君は、やっぱり騎士なんだ。あの無造作な薙ぎ払いで、奴の茨を消し去っただけじゃない。君は、自分で考えて行動できた.....それが本当に.....嬉しいよ。」
ヴィーナスは足を挫いたが、
彼はまだ歩けるんだという。
「ヴィーナス、休むか?」
ーーヴィーナスが心配だ。
「いいや、まだ動けるよ。ペドロ.....能力を持っているな.....生命の起源を宿していない、操る事も出来ないはずなのに、どうして魔術が使えるんだ.....」
ヴィーナスは不可思議に思っていた。
俺はヴィーナスに気になる事を聞いた。
「俺は剣を持った途端、その切れ味が回復して、しかも刀身が復活するんだ!それに、《エーテル》っていうその生命の起源を宿した瞬間にな!これは一体何なんだろう。教えてくれヴィーナス。」
ーーヴィーナスは言った。
「エーテルはエインウィルに宿る《神聖の起源》でもある。君が気になっている神聖とはエインウィルのエネルギー源なんだ。つまり、エインウィルの人々、生命、あらゆる存在がエーテルの元にある。エーテルは生命を支えるんだ。」
ーーなるほど。
俺やヴィーナスはそれを扱える.....のか。
「俺はもっと自分を知りたい!自分を知って、知りまくって、強くなりたいんだ。知識が欲しい。あ、あと、剣技も習得したい!あとよ.....」
ーーヴィーナスがまた困ってしまってる.....。
「フレン.....!分かるよ!やる気はあるんだね!良いことだと思います!でも.....能力を知るには、実践を積んでいくしかない!もしくは.....」
ヴィーナスは同じ顔をして、
とある方向に指を指して見せる。
「ペドロ.....まだ生きてるよ.....?」
ーー俺はペドロの方向に危機感を向ける!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「う、うぇ.....」
ペドロって奴はかなり出血している!
ーー俺が斬ってしまったんだ.....!
「ペドロ.....大丈夫か.....?」
ペドロには何故か、共感してしまう。
でも、敵であることには変わりない!
すると、ヴィーナスが口を開く。
「ペドロが僕達を受け入れるなら話は変わってくる。彼もまた、魂という異界の概念に干渉できるという素質はあるんだろう.....それに.....」
「それに.....?」
ーー俺はヴィーナスの言いたがっていることが、
何なのかが理解出来ない。
「ペドロは、相手の能力がわかる。つまり、俺たちを受け入れてくれさえすれば、フレンが持っている素質、目指すべきものが分かるかもしれない。」
俺はヴィーナスの言葉に安堵した。
ただ、ペドロが俺たちを信じるか.....?
「フレン.....ヴィーナス.....お前たち、なんで俺を受け入れてくれるんだ.....俺は、お前たちに危害を加えて、殺そうとしたんだぞ.....」
ペドロが口を開いて話したのを受けて、
俺はペドロに言いたいことがあった。
「みんな、不安を抱えて生きているように思う。きっと.....君の同胞たちも同じだ.....どんな立場でも前を向いて生きている。君もそうなんだよペドロ。でも、人を殺して、自分だけに利益を集中させる生き方は良くない。ましてや、君たちが異界の悪魔と契約したとしても、世界が闇に染まった暁には、裏切られることだってあるかもしれない。君は優しいよペドロ。でも、その優しさと自信、才能を悪い方向に変えてしまっては勿体無いよ!」
ーー俺がそう言った時、
その場の時が止まったように思えた。
気付いたら、ペドロは荒い息を漏らしつつも、
目に涙を浮かべて、口を震わせていた。
「俺.....俺は.....お前たちに感謝するよ.....ずっと、ゴミにように扱われてた自分が嫌いだった.....でも、やっと今、自分を好きになれたよ.....ありがとうフレン、ありがとうヴィーナス。俺は、君たちに会えたこと、話せたこと。素直に嬉しいよ。」
そういうと、ペドロは眠りについた。
俺はヴィーナスのバックから干し草を
数枚に分けて取り出して、
ヴィーナス、ペドロの患部を覆うように
きつく巻きつけた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
しばらくするとヴィーナスも眠りについた。
俺は1人で不慣れながらも焚き火を起こし、
一晩眠りにつくことになった。
正直、これが夜なのかも分からないが.....
眠り行く意識の中で、吹雪の音が聞こえてくる.....
ああ.....これが音という景色なのかもしれない。
そう思うと、意外とよく眠れる。
吹雪の音が聞こえなくなってからは、
ただ茫然と無の世界を感触し、
目を覚ました時には吹雪の音が消えていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おはようフレン!」
ーーん.....んぅん.....
ヴィーナスの顔が.....見える.....。
「おはようヴィーナス!ペドロは?」
「あぁあ.....」
困惑したようにヴィーナスは言う。
(昨日のペドロは大丈夫だろうか.....?)
ーー俺がペドロを見ると、
1人で飯を食っているではないか!?
「フレンじゃねぇか。よう。」
ーーペドロは俺に語りかける。
切り付けられた包帯には血が滲んでいたはずだが、
それは薄く、黒色になっていた。
「生まれつき.....傷の治りが早いんだよ。俺。」
ペドロは自分を初めて教えてくれた。
嬉しいことだ。
「朝、そのクソみてえな金髪と喧嘩した。俺が飯を食っている時に、マナーとかいうよく訳の分からねえもんを愚痴愚痴言ってきやがる.....もう、うんざりだな.....」
ヴィーナスの顔は釣り上がっていた。
ああ.....これ、絶対本気で喧嘩したよな.....。
「おいフレン。馴れ合いはもう済んだ。一緒に飯を食べようぜ!」
ーー俺はペドロの隣に座らされる!
「ヴィーナスって野郎が持っていた干し肉は煮るとほんとにうまいな!食ってみろよ!」
俺は食い意地を張るペドロに干し肉を
思いっきり詰め込まれる.....。
嘘だ.....昨日のなんて嘘みたいだ.....
俺がペドロの干し肉を頬張ると.....
「う.....うんめぇぇぇ!!なんだこれぇぇ!!」
ここに新しい発見があるぞ!
干し肉を茹でると超絶美味い!
俺達は無我夢中で頬張る。
それと共にヴィーナスの顔が不満気に膨らむ.....。
「フレン.....マナーぐらい守れぇぇぇ!!」
ーー洞窟内に響き渡るその轟音を、
ポテスの自然な空気が静かに掻き消した.....。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺たちは3人でそこを発つと、
洞窟内にて歩き始める。
俺たちはその間に、ペドロから情報を盗んだ。
どうやら俺達が探している店主らしき人物は
神殿の中に連れ去られたという。
「フレン。俺は組織を裏切ることになる。お前の言っている雑貨店の店主とやらが生贄だとしたら、まだ祭壇に捧げられるまで猶予はあるが、急いだ方がいいな。生贄を解放することは大罪だ。もし失敗すれば俺たち3人の首は泣別れだぜ。」
ーー俺は覚悟を決めて飲み込む。
「この先に大きな門があってな、組織のアジトに入れるんだ。でもな、俺は神殿の管理そのものを任せられているだけで、本拠地は別にある.....“星域”という場所に、お偉いさん達が集ってるんだぜ。」
“星域”.....?何なんだそこは。
「まあお前らにゃあ分からんだろうが、俺達が信仰しているヴェクターラはこの世に干渉するために信仰者を構えている訳じゃない。もっと他に目的があるのさ。ーーそれ自体は分からんが、ヴェクターラがいるヴォイドリアの領域は、無限の広がりと星の連鎖によって出来ている“アストラル”の領域だ。」
「ーーアストラル.....?」
「ああ。星域と呼んでいるのが、そのアストラルだ。お偉いはヴォイドリアにいる.....真の力を追い求めているんだ。ーー俺のように.....見捨てられた者だ.....」
ーー俺はますます心配になった。
雑貨店の店主が生きているとしたら
早く助けにいかなければいけない!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ーー滑りやすい洞窟の中を歩いていると、広い鍾乳洞の中に出てきた。水が滴る音が聴こえる.....きっと地底湖があるのだろう。
松明を掲げて薄暗い洞窟の中を進んだら、
大きな彫刻が表面にある石の大門が出てきた。
「この先が.....アストラルの神殿だ。」
中に入ると、石の柱が何本も立つ大広間に出た。
この神殿の広さは尋常じゃない.....。
ーー壁にも彫刻があり、それは何かを意味していた。
「この彫刻はヴェクターラがとある数学者に物理の概念を教えていた時の構図らしい。数学者は無限の物理を求めて『暗号』を探したんだってよ。自分の学問を最大限まで深堀りたいと.....熱心だよな.....」
ペドロの話を聞いていたら、
ポテス山道で襲ってきた男の事を思い出した。
彼もまたヴェクターラの使徒であり、
物理概念の魔法を使っていた。
彼も確かにアストラルの信仰者だったな.....。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ーー神殿の彫刻は大きく鮮明に彫られていた。
しかも、この神殿は紀元前に出来たらしい。
紀元前というのはこの世の正史が誕生する前だ。
本当に凄いぞ.....。
いや、見惚れていてはいけない。
雑貨店の店主を探さなければ!
「ヴィーナス。あの店主がここにいるとしたら、一体何処にいるんだ?この神殿は部屋とか広間が沢山あって周るのに時間が掛かる!」
ヴィーナスはそれを踏まえて言った。
「ヴェクターラについての記事を読んだことがあるんだ。ミルドの都では有名な歴史で、アストラル暗号がヴォイドリアに繋がっていると言われている。」
アストラル暗号.....?
2人とも小難しい話は勘弁してくれ.....。
「アストラル暗号はこの奥にある。」
ペドロが大広間の先にある彫刻の壁を指す。
「この壁、回転するんだ。だからこの壁を一緒に押せば動かすことが出来る。その先に暗号への入り口がある。雑貨店の店主も、おそらくそこにいる.....」
ーー少しずつ希望が見えてきた。
雑貨店の店主を見つけるこちら出来れば、
このポテス山脈を抜け出して、
ドゥナレスに帰るか、シルトマーに行けばいい。
俺たちはペドロが言っていた壁を押した。
そうして押した壁の先には、
押入れのような石室があった。
彫刻が壁中に彫られており、
何を表しているかは分からない。
不思議な暗号が刻まれている。
「この部屋に入ってしまえば、アストラル暗号の一部になる。この彫刻を消せば、その彫刻に刻まれている名前の主は存在事消える。入るか?」
身の毛もよだつ話だが、もたもたしていられない。
俺たちが部屋に入ると、
暗号と思われし彫刻が青く光り出した!
「お.....うぉぉ!!」
ーー俺たちは眩い光に飲み込まれ、
一瞬のうちに別の空間へ移動した事を悟った。
「ここは.....あ、アストラルなのか!?」
ヴィーナスが目を全開にする!
俺やペドロも辺りを見回して、
その空間の雰囲気に飲み込まれる!
「こ、これは.....凄いな.....星々があって夜空みたいだ。島々のように土地が浮いてるぞ。変な植物も生えてるし.....何だ.....ここがヴォイドリアの領域の1つ.....アストラルなのか!!」
ーーペドロも相当驚いている。
目の前の絶景にひたすら圧巻している。
「俺もアストラルには干渉した事なかったからよ.....この景色の凄さにはビックリするぜ。凄いよな.....この世界は全て暗号で出来てるんだぜ?普段なら隠されているような数字で出来ているんだ!こんな綺麗に見えるのによ!」
ーー俺達が景色に圧巻されていると、
また攫われた店主のことを思い出した。
「無策で入っていい空間なのか?出るにはどうしたらいいんだ。ペドロ、一体どうやったら出れる?」
それにペドロからは幾つか提案があった。
「3つ提案がある。どれも良いものではない。1つ目は、信仰者のリーダーを倒して暗号の解読を試みることだ。ただし、失敗すれば二度と出られなくなる。2つ目は、ヴェクターラに交渉することだ。かの王に交渉して、雑貨店の店主を返してもらう。ただ、仲間の1人が犠牲になるぞ.....もう3つ目は、雑貨店の店主を救出して、ヴェクターラに解読方法を教えてもらう。ただし、知識をどういう対価で支払う必要があるかは分からない。ただ、他より断然安全だろう。」
ーーただリスクは、最大限避けたかった!
せっかく始まった旅をここで終わらせられない。
ーー雑貨店の店主を救出するには、
アストラル暗号の解読が必要だ.....!
次回:アストラル暗号の中に侵入した3人は、その空間の絶大さに惹かれてしまう。数々の星々、暗雲が陰る空間に、突如として放り出された3人だったが、肝心の脱出方法が分からないという異例すぎる自体が発生した!
ーー3人は雑貨店の店主を救出し、無事に元の世界に帰る事が出来るのか!?.....。




