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AETHEL/エーテル -世紀の英雄-  作者: 黒綺硝子
【第1章】火の戦史
10/13

東諸国の文献-Part10

カイザードの関係でシルトマーの公爵に

会いにいくことになったフレン。


——公爵ボイドリッチ=ウィンターは、

かつての故郷、ミルドを焼き払った

西部戦線の《ルフゼリファ》の文献を

ヴィーナスに見せる。

思い出した事がある.....。


この《霧の街、シルトマー》では、

不可解な殺人事件に巻き込まれ、

悲惨な末路を辿った被害者が日々増えている事を。


——ピットが話していた事を思い出した。


「フレン。シルトマーでは朝に外に出ることは辞めておいてくれ。暗殺者がいるという噂が引っ切りなしに立っていてな。あの街の構造上、どんなに追跡をしても捕まらないんだ。——しかも、もっと不可解なのは、別々の場所で殺人が同時に起こることもあったってよ。明日の朝、オーラリスから有名な探偵が来るらしい。少しでも解決に向かうといいなぁ。」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


(...............)


ひょんな事を思い出していた。

あー。もう毎回、不安になってしまう。

きっと大丈夫だ。この街は凄く大きい。

早々に巻き込まれることなんてないだろう。

——カイザードが起きはじめた。


「おはよぉう。はぁ。良く寝たわぁ。」


「おはよう。カイザード!」


こんな朝に、暖かい日照りが差し掛かる.....。

徐々に外が賑やかになっていく。


「あぁ!——さん!おはよー!」

「やあ、——、今日も元気だな!」


どんどん、街の人の声が聞こえて来た!


「さあみんな。行こうぜ!」


俺達は旅支度を整える。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


霧が晴れたシルトマーの広間に出ると、

美形な彫像と噴水が現れた。


「凄いな!ドゥナレスも賑わってたのに、ここは本当にちげえ.....たくさん人がいて迷うなぁ。」


すると、カイザード。


「フレンたち。俺はここの公爵に会いに行かなければならない。君達への恩義も兼ねて、是非ついてきてもらうことをお願いしたいんだ。」


カイザードはドゥナレスにある雑貨店の店主で、

どうやらシルトマーに向かっていたのは

公爵や知り合いに会いにいくためらしい。


「俺達は暇だから.....ついていくぜ。」


——俺はカイザードと共に、公館へと向かう!


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


公館に向かっている途中、

ペドロが妙な事を聞いた。


「この城下町、すげぇ賑わってるな。こんな賑やかなのに、物騒で陰湿な殺人が起こっているのか?」


シルトマーは東国の中でも有力な国家だ。

東部諸国だけでなく、西部諸国とも繋がりがある。

そんな偉大な国家で、未解決事件とは.....。


「ペドロ。怖いのか?気にすんなよ。」

「は!?ちげえよバカ!怖くねえよ。近付いてきたら瞬間でぶっ飛ばしてやるぜそんなの!」


——そう、ペドロが自信満々に拳を見せつける。


「ヴィーナスは東部諸国との関わりってあるのか。」

「無いさ。僕が次ミルド国王の候補がとして即位してから襲撃にあったんだ.....」


——ヴィーナスは俺の従兄弟だ。


「カイザード。公爵と縁があるのか?」


「ああ、そうだとも!大学の同級生さ!」


「え!?、そうなの!?」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


——足を進めていると、

人混みがより一層激しくなる。

衛兵も多くが武装している。


「うわぁ。やっぱり事件が起こってるからな。」


ペドロが不安の音を漏らす.....。

広大な広間、屋台が立ち並ぶ風景、

何と言っても城が間近に見える!


「こんな美しい城を見たのは.....正直初めてかもしれない.....僕の.....故郷.....」


俺は。ヴィーナスの心境が見える.....

ずっと.....前から.....

自分がそうなった訳じゃないのに.....

家族や友人、身近な全てを奪われた

ヴィーナスの冷たい想い.....。


「ここを右に曲がれば公館だ。」


カイザードが指を指す。

もう公館は近い様だった。


ヴィーナスの故郷はどんな場所だったんだろう。

どういう想いで俺を救ったんだろう。


俺が裏切ったら.....思う様にいかなかったら.....

ヴィーナスには.....何も無いというのに.....。


「ヴィーナス.....行こうぜ。」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


——しばらくして、公館に到着した。


「ああ!もうよく寝たはずなのにめっっっちゃ疲れたぜ〜!もう動きたくねえぞ〜!」


ペドロが謎に駄々を捏ね出す.....。


「ペドロ。もう着いたんだから!」


ヴィーナスが諭す。

公館の周りは何やら物騒で、

兵士や諜報員が多く滞在している.....。


「みんな、時間通りに行かなければ。」


カイザードに急かされて休む暇もない。

公館の中は綺麗な装飾品が沢山ある.....。

立派なカーペットに、高級感のあるシャンデリア.....

これは、お城の方はもっと凄くなりそうだ。


「お久しぶりで御座います。カイザード様!お身体のお調子は如何でしょう?お連れの皆様も如何でございましょうか?私は執事のアーニールと申します。ウィンター様のお部屋は、先見の方がいらっしゃいますので、しばしお待ちください。」


「アーニール!久しぶりだな。元気そうで良かった。先客が居るなら、そこら辺で待っていることにするよ。何やら忙しそうだしね。何かあったのかい?」


カイザードが慣れた会話をする。


「ええ。カイザード様.....大変です。今回の件に対する相談も設けております。少し、お待ちください。」


何やら不穏な空気だぞ.....。

シルトマーの事件のことか?

問題が拡大でもしているのか.....。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


滑稽な程待たされた。

面談開始から三刻も待たされてる.....。

柱に背を向けて、ひたすら待ち続けてると.....


「すまねえフレン、ヴィーナス、カイザードよ。俺っちゃあ、もう限界だぁ。ガチで.....トイレに行きたくなったんだよぉう!」


ペドロがまたもや音を上げている!

今度はトイレの話なのか!


「すまねえ。面談にはいけねえけど、ここで待っているぜお前たち.....」


そう言って、足早に去っていった.....。


「急用があるみたいだけど、そんなに掛からないし、大丈夫だと思うぜ。フレン、ヴィーナス。君たちも来て欲しい。せめて、一緒に挨拶させて欲しい。」


カイザードがそう俺達に申してきた。すると.....。


「カイザード様御一行!ウィンター様のお部屋へご案内致します!こちらへお越しください!」


——案内人の執事に呼ばれた.....ペドロ.....。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


絵画が立ち並ぶ廊下を真っ直ぐ歩いていくと、

綺麗な樺の扉に直面した。


「この先がウィンター様のお部屋です。ノックをしてお入りください。では、失礼致します。」


俺は唾を飲み込む.....。

カイザードが扉をノックする。


(コンコン)


「ボイドリッチ=ウィンター公爵、失礼致します。」


「カイザードだな?ーーはよう入ってこい.....」


カイザードが扉を開けると、

俺達も公爵の部屋へ引き込まれるように入る.....。


「公爵。お久しぶりですね。」


「ああカイザード。久しぶり。連れがいるのかね。」


「ええ、そうですね。フレンと、ヴィーナスです。」


——俺は軽く自己流のお辞儀をかます!


「宜しくお願いします。フレンと言います!」


「はじめまして。ウィンター公爵。ヴィーナスと申します。此度は、宜しくお願い致します。」


一通り社交辞令を終えると、公爵が喋り出す。


「よい。重要な事がある。カイザード、よくぞ無事で帰ってきてくれた。フレン殿、ヴィーナス殿に多大なる敬意を表す!王宮魔術師の選考に選ばれなかったということだが、私は悪く思わない。シルトマーで経験を重ねていっておくれ。歳が離れているワシに良くしてくれた君には感謝したいからな。」


「ありがとうございます公爵。」


カイザードが深々と頭を下げる。


「そして、本題に入ろう。今、問題が2つ起こっている。シルトマー中が大騒ぎだ。」


「何を?」


カイザードが公爵に尋ねる。


「1つは、連続多発事件だ。この一件は、先ほど顔を合わせた《クリスティ=シャーロット》という名探偵が推察してくれている。あの探偵の目に見えないモノはない。エーテルを宿しているからな。どんな闇でも可視化出来るのよ。——そして、2つ。シルトマーから更に東へ行った平原に《ドラゴン》の目撃情報があったらしい。観測隊は全滅だ。おそらくな.....。シルトマーは此度に備えて、新しく兵力を増強したのだ。国王陛下はドラゴンの討伐を目論んでおられる。」


「ドラゴンですねぇ。しかし、ここ数世紀でドラゴンの脅威を解決した事例はない。ドラゴンは殺す事ができない——という噂まで立ち始めています。その点についてはご理解されておられますか.....公爵。」


カイザードが二件目に触れる。


「カイザードよ。フレン殿、ヴィーナス殿よ。此度のドラゴンに備えて、帝都から二部隊精鋭集団を派遣している。それに、東部諸国となれば本気だ。隣国のゴンゴルド、最東部のセイレンからも本隊を派遣している大作戦だ。無論、シルトマーからも本隊を派遣している。この作戦が成功すれば、東部諸国だけでなく、中央国との連結も強固となる。必ずや、達成せねばならぬ課題なのだ。」


こんな大規模な作戦が.....なんて事だ。

このシルトマーに来るまで、

事態の大きさに気づいていなかった!


「公爵!俺、俺は参加出来ますか!?俺も役に立ちたいです!カイザードを助ける時だって.....死戦を潜り抜けて来ました!俺達がいれば、きっと成功します!絶対に!」


公爵は俺の誠意への対応に困っている.....。

なんせ、相手は《ドラゴン》なのだから。


「フレン殿.....誠に申し訳ない。それだけは.....どうか、お断りさせて頂きたい。決して.....足手纏いということは無いと存じているが、友人を救った者に再び挙兵をさせるなどし難いのです。」


——こうして、

ドラゴン狩りは丁重にお断りされた。

しかし!ヴィーナスが口を開いた。


「ボイドリッチ=ウィンター公爵。ミルドの王子、ヴィーナスから申し上げます。失礼ながら、フレンは十分な戦力を有しています。人類が成し遂げた事のない竜討伐。此度で成し遂げるには妥協など必要ありません。——そして、これはフレン自身の意思です。伝えましょう、公爵。彼は騎士の末裔であります。私の従兄弟であり、ヴィールの血を引いています。東部諸国が襲撃を喰らった際、我々が助力する。これは必然であり、運命なのです!だから.....どうか、お願い致します!」


——ヴィーナスが深々と頭を下げる!


「ヴィーナス殿、ミルドの王子.....なのですか?それは誠で御座いますか?」


「はい.....。」


「水の都であるミルドは、数年前に西部戦線を崩壊させた悪名高き竜である《ルフゼリファ》によって焼き払われ、危機的状態にあると存じております。」


「——ルフゼリファ.....僕は長年の間、この竜への復讐を誓って生きてきました。私はフレンと共にドラゴン討伐に参加していずれは、ルフゼリファを撃破したいと考えています。」


ヴィーナスの顔は、揺るぎなかった.....。

英雄の顔をしている。王子ではもうない。

——故郷を守ろうと闘う.....一人の男だ。


「ヴィーナス殿、助力致しましょう。西部戦線の文献は、まさに私のデスクに御座います。お越しください、お見せしましょう。」


——ヴィーナスがデスクの文献に近づく.....。


「これが.....記録です。当初は、小国の本隊だけで討伐隊を結成する構成でした。しかし、このバルファ王国での戦いで大敗し、ドラゴンが高知能であり、恐ろしい存在であることを世に知らしめました。」


「はい.....。」


ヴィーナスの顔が曇る.....。


「この戦いでの竜は、かのルフゼリファだったと考えられます。東部に出現した此度の竜は別の個体であると示唆されていますが、西部戦線において多くの悪影響を与えた凶悪な竜だとされています。」


「公爵、ありがとうございます。」


ヴィーナスが話を締め括った.....。


「フレン。君を先にあるべき場所へと導く。ーーそれこそが僕の使命であり、義務だから。だから.....必ず、騎士になって欲しい。」


俺はヴィーナスに誓う.....。


「無論、そうに決まってるぜ.....」


俺は心を無にして頭を下げる.....。


「本当に.....いいのか。フレン。」


カイザードが不安になる。

ただ、俺の意思は変わらない。


「このフレン・メテリクス。騎士の末裔なり。命を落とすために生まれ、命を救うために生きる。ーーウィンター公爵、カイザード、ヴィーナス.....俺の意思は本当です。どうか.....お願いします!」


——俺の頬に一筋の涙が通る.....。


「フレン.....。」


「フレン、殿.....。」


カイザードと公爵は驚愕し、

そして深々と頭を下げた。


「フレン殿よ。もう断ることなど出来ませぬ.....ただ、一つだけお願いしたい。今回のシルトマー多発事件に、助力していただきたいのです。国王陛下による討伐作戦参加の承認を得るには、申請を受諾される必要が御座います。ーーフレン殿、どうかご無事で。」


——俺は公爵に深々と頭を下げる.....。


「フレン殿。私から申請書を送付させて頂きます。」


「ウィンター公爵、ありがとうございます。」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ドラゴン討伐.....事件捜索.....。

——俺は騎士として!必ず成し遂げる!

国王陛下との面談が決まったフレンは、

高級な洋服店へと足を運ぶ。

フレンに恩義を感じるカイザードは、

彼の行く末に不安を隠しきれなかった。


——フレンは魔導炉の近くで、

不思議なエルフの少女と出会い、

そこから新たな関係が育まれていく.....。

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