混沌の世-Part1
-300年前-
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ーー世界が焼かれている.....
異界の領域、王による略奪と戦い。
異界の悪魔たちは人々を脅かし、悲劇を物とせず、
富の全てを奪い去ったのだ。
ああ....世界は永遠に寂しいのだろうか.....?
神聖なエインウィルは戦いで神聖を失っていった.....。
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ーー愚かなコレンド王の裏切りよ.....。
生命の源である「エーテル」は
異界の王によって奪われた。
ーー7つの領域『ヴォイドリアの王』は、
魂と代償を求めてエインウィルに干渉した。
ヴォイドリアの領域の1つである
『火の世、ネゼリオン』の王であり、
竜王である《フォルリアン》は、
貪欲な国王の裏切りと共謀し、
エーテルを求めたのだ。
生命の律を失ったエインウィルは、
今や民衆の騒ぎに包まれ、
《混沌の世》となる。
ーー地獄の兆し、一世紀の戦争.....。
絶望が降りかかると思われたが、
火に焼かれた中には微かな光が残された.....
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ーー《新たな王、ヴィール》ーー
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神聖なる力と王族の血、
生命の源エーテルを微かに秘めた、
新時代の王、最後のエーテル.....
ーーこの世の神父は微かな神聖で神々に干渉した。
「ああ神々よ.....混沌の世はエインウィルを火に焼かんとしている!ヴィールに光を.....神聖を授けてください.....異界の王が.....最後のエーテルを得る前に.....」
神々と干渉した神父は神聖を捧げ、
ーーやがて光の大槍となった。
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ーーエインウィルの中心地、
『世界の都、オーラリス』にて、
ヴィール王は光の槍を掲げた。
「私は民衆と共に邪悪な悪魔の王を打ち破ると誓う。神父が光となったとおり、我々自身が光だ。ーー神々の恩恵に感謝する。戦いだ.....」
ネクサスの門が開く.....そして異界の王が干渉する。
フォルリアンとその一軍は目前に迫った。
ーーオーラリスの都市は既に壊滅的だ。
全てが焼け爛れた瓦礫に包まれる。
炭の香りが当たり一面を覆う。
民衆は戦慄を覆い隠した。
「ヴォイドリアの王だ.....!!」
脈打つ重鎧の騎士が重々しい大剣を握っている。
その軍勢は数え切れないほどに夥しい。
民衆の死体.....そして奪われたエーテル、
絶望の最中、フォルリアンは
ヴィールに対して視線を向けた。
そして、地響きの如く呻いた声が、
異界の王の恐怖と凶器を物とした。
「魂よ.....エーテルは確かにそこにある.....な?」
王に対する脅威を感じたと言わんばかりか、
神々の神聖な光が輝き始める。
ーーヴィール王の光の槍だ。
異界の悪魔たち。その進軍を止めるべく、
フォルリアンに向けてその槍を放った。
ヴィールの光の槍は烈火の如く火花を上げ、
雷のように素早く異界の王の胸元へと迫った。
光の槍は周囲が怯むほどの光を照らし上げ、
遂に異界の王の胸元へと刺さったのだ。
フォルリアンは苦し紛れにエーテルを手放し、
元の次元へと追いやられていく.....
ーーエーテルは解放され、
異界の王はヴォイドリアの領域へと
封印されることとなった。
「異界の王は討ち取られた.....!」
ーー乾いた声でヴィールは言う。
最後のエーテルは光を照らし、
一世紀の混沌に終止符を打ったのだ。
ああ、ヴィールよ.....エインウィルの英雄よ.....
ーー其方は我が王である!世紀の王として!
「先ずは挨拶でもしようかな!こんにちは〜.....」
ーーまるで闇に光が差し込むように、
心地よい朝日が細まった瞼を掻い潜る。
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目前には人が見える。
誰かは.....知らない.....
でもきっと人だろう.....
何人かいる.....
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ーー「.....んぇ!?」
すぐに飛び上がった!
目にありったけの光が舞い込む!
俺は何をしてたんだっけここで。
誰かに話しかけられてたよな.....?
気づくとやはり目の前に人がいた。
「今日からだね.....よろしく。フレン君?」
何故俺の名前を知ってるんだ?
こいつは.....?一体誰なんだよ.....?
今日から?どういうことなんだ!
頭の中が混乱した。
ーーいや、おかしいんだ。
俺は先月、帝都の衛兵に捕らえられ、
この城砦の街、ドゥナレスに投獄されているんだ。
つまり俺は今牢屋に居るはず.....だろ?
いやなんで俺の牢屋に人が居るんだよー!!
「おいおい.....いきなり起こされてお咎めを喰らうと思ったら誰なんだお前は.....!?なんで俺の名前を知っているのか教えてくれ!俺は帝都の貧乏街で“乏しいフレン”って呼ばれてた男だぞ!そんなやつにどういう用があるってんだ?」
俺の目の前にいるこいつは端正で凛とした顔立ちをしていやがる.....まさに、“典型的な貴族様“って感じがする!何処から来た?海は跨いでなさそうだが.....。
ーー俺が色々考えていると、
「あ、いやいや、ごめんね!ほんとに脅かすつもりとかそういうのは一切なくて.....ただ、君が帝都の繁華街に繋がるゲートで歩兵隊に捕えられた時、少し捜査に手違いが生じたみたいなんだ.....」
ーー捜査で手違い?
「手違い.....それはどうゆう.....?」
「繁華街では上流階級の貴族や外交官が宿泊する区域だから、凶器やそれに似た形質の物の持ち込みが禁止されているんだ。ただ、君が持ってるその刃型の形見は特別なもので、それを知らない衛兵が凶器だと思って君を捕えるように指示したんだ。」
そういう返しを受けて俺は自分の腰回りに
掛かっている刃型のアミュレットに視線を向けた。
「あー.....これが駄目だったってのかよ.....たださ、一個気になるんだけど、この形見が特別って言ってたよな。何がそんな特別なんだ?昔、遠征先で死んじゃった父さんの形見なんだけど。」
不思議な青年は視線をアミュレットから離し、
俺と目を合わせるように向けてきた。
「君は昔から親がいないから、君のお父さんがどういう人だったかを知らないようだけど、君のお父さんは実はね.....騎士団だったんだ!」
「えぇ!?.....」
ーー衝撃が身体中を走る!
俺の父さんが騎士.....?
そんなの全く信じられない。
騎士というのはズバリ俺でも知っている
兵役の中でも最高位の立場だ!
重要な戦役や遠征でしか活躍しないって聞いた!
言わば、騎士を侮辱することは帝都では罪.....
かなりの重罪と言われているほどなのだ!
ーー不思議な青年は続ける。
「騎士にはアミュレットが与えられている。帝都の兵士の中でも騎士になれる人は9人しかいない。つまり、円卓に招き入れてもらうことが条件なんだ!」
ーー俺はビックリしてしまう.....。
「円卓.....アミュレット......わ、わかんねえ!ストーーーーーップ!!そもそも、俺のお父さんが騎士なら何故俺は貧乏街なんかに?今までに俺は.....。」
人生.....思い返せばずっと人生がつまらなかった。
貧乏街は限られた土地で最底辺の労働者が、
最低限の賃金と場所の設計で
生活出来るように築かれた区域だ。
俺はそこでずっと暮らしてきて、
城壁の外を見たことがなかった。
飯も不味くて、病気に罹れば
まず薬が買えなかったんだ。
殆どの奴らが飢えていて、
見るに耐えない光景も
沢山見てきたんだ。
「なんかさ.....話が多すぎて混乱するよね!ほんとに困らせたりするつもりはないんだけど、どうしても重要なことがあって伝えたかったんだ!」
過去の出来事から青年の姿に戻る。
俺は1つ不可思議なことを聞いてみる。
「なんかお前.....最初に今日からなんとかって言っていたけど、あれはどういう意味だ?」
ーーそれに、不思議な青年は言う。
「そうだね。そこが本題なんだ。最初に申しておこう!僕の名は《ヴィーナス》!よろしくフレン君!君の冤罪を証拠にして釈放を許可してもらったんだ!だからもう今日から外に出られるってことだよ!」
ーー俺は心が躍った!
また人生をやり直せるのか!
「ラッキー!ありがとなヴィーナス!お前案外いい名前してるんだな!良かったぜ!」
ただヴィーナスは俺に言ってきた、
「僕が君を自由にしたのは、君が囚われの身であることを可哀想に思ったからじゃない。円卓の騎士が欠けているんだ。その一角である君のお父さんが遠征で亡くなって以来、帝都の騎士は8人だけなんだ。」
俺は.....もしかしたら.....
俺は自分の思いを打ち明けた、
「もしかして俺って騎士になれるのか?」
ーーヴィーナスは答えてくれた、
「なれる.....より、ならなきゃいけないんだ。円卓の騎士に。でも君は神聖が足りない。だから僕と一緒にエインウィルを旅して欲しいんだ。僕はミルドの水都から来たんだ。君のお父さんの弟、つまり君の叔父にあたる人が、僕のお父さんなんだよ。」
嘘だろ.....!?言葉を失った.....!!
ヴィーナスが.....俺の従兄弟!?
「君のお父さんの意思は他でもない君が継ぐべきなんだ。君が円卓の騎士となるまで、僕は役目を果たし続ける。だから行こうフレン!一緒に旅に!」
俺はこの牢屋を早く出たかった。
どれだけこの先に不吉があっても、
ここにはいたくなかった。
「俺も行くぜ!絶対俺は.....!父さんみたいな円卓の騎士になってやるぜ!」
ーーそう言って、俺たちは足早に牢屋から出た。
次回:自分が騎士の末裔だと知り、従兄弟であるヴィーナスと牢屋で知り合ったフレンは、円卓の騎士になるための神聖を探す旅に出かけることになる。
ーー神聖とは何なのか.....?
牢獄の砦から足早に立ち去り、
城砦の街ドゥナレスの商店街に出た2人。
久々の自由を感じたフレンの心は
密かに舞い踊っていた!




