パート17：眠れるティアラの陰謀
私は、オレンジ色のナイロンの繭の中に、屈辱的に固定されていた。合成素材の感触は、カイトから借りたTシャツ一枚のパジャマ越しに、熱くざらざらとしていた。匂いは清潔だったが、間違いなく彼の匂いであり、私のパーソナルスペースに対する最終的な侵入であった。彼のモニターの青い光は、コードの線と三次元構造の動くモザイクとなり、壁に冷たいパターンを投影していた。
技師とそのデジタルな王国
カイトは私から三メートルも離れていなかったが、精神的には遥か彼方にいた。彼は自分の聖域であるデスクチェアに戻っていた。スクリーンのスペクトル光に照らされた彼の横顔は、ほとんど宗教的な集中力をあらわにしていた。普段は疲労で濁りがちな彼の目は、コードを見つめる時、激しく、奇妙な生命力を放っていた。
私は彼の注意の中心ではなかった。彼の注意は完全に彼の**「芸術」**に向けられていた。私は、敵軍の配置を分析するのと同じ細心の注意を払って、彼を観察することに集中した。彼の左手はキーボード上で、指は迅速かつ正確なバーストで動き、右手は予想外の滑らかさでマウスを操作していた。彼は、目に見えない城を一つ一つ築いているように見えた。
— 今度は何を作っているの、プログラマー？ —私は寝袋の中で声がこもった状態で尋ねた。
カイトはタイピングを止めなかった。
— ツールだ。3Dレンダリングエンジンのための最適化スクリプトだ。退屈で複雑だよ。君にはアルゴリズム効率の美しさは理解できないだろう。
— 効率性は支配の基盤よ。だが、何に対する支配かしら？
彼は短く乾いた笑いを発した。
— 時間に対する支配だよ。俺が書くコードの一行一行は、誰かの作業時間をマイクロ秒単位で節約するためのものだ。それが家賃を払い、君が床で凍えないようにする唯一の方法だ。必要な仕事であり、英雄的な仕事ではない。
彼の英雄主義に対するシニシズムは、魅力的な特徴であった。アストレアでは、貴族は無駄な偉業に人生を捧げた。ここでは、人々は夜を徹してマイクロ秒の最適化に捧げていた。これこそ、私が見つけた最も豊かなワールドビルディングであった。
魔法の起動プロトコル
私は寝袋の中でわずかに動いた。その動きは蛇が這うような音を立てた。1,000円札は私のズボンの中にあり、その隣にティアラがあった。
指で、宝石を感じる正確な場所を押した。熱の鼓動がすぐに戻ってきた。以前よりも強く、持続的な脈動であった。私は目を閉じ、すべての意志をその結晶に集中させた。力を引き出そうとはしなかった（それは不可能だった）が、起動パターンを分析しようとした。
仮説： 封印された魔法は意志ではなく、カイトの近接と平民への没入によって引き起こされる肉体的・感情的なストレスに反応している。
熱の奔流が強まった。結晶のエネルギーが私の四肢から逃げ出そうとしているかのように、指先に微かなチクチクとした感覚があった。サスペンスが私を捉えた。もしこの反応が続けば、数週間後には小さな起動に足るエネルギーが蓄積されるかもしれない。
その時、カイトは、私の異様な静けさを察知し、振り返った。
— 大丈夫か？瞑想でもしようとしてるんじゃないだろうな？ここに魔法はないぞ。あるのは悪いインターネット接続と借金だけだ。
彼の視線は、疲れているにもかかわらず、探るようなものだった。
— 私は、生存戦略を最適化するために環境を分析しているだけよ。公爵令嬢は常に次の動きを計画しなければならない —私は、称号だけが許す流暢さで嘘をついた。
彼はただ首を振り、その表情はいつもの諦めに戻った。
— 分かった。あまり動き回るなよ。ねぶくろは真夜中に変な音を立てることで有名だ。階下の住人に一度苦情を言われたことがある。
彼はモニターに向き直ったが、彼のコメントは私に近隣住民という、ワールドビルディングのための新たな情報をもたらした。匿名的だが強力な、征服されるべき社会の別の要素。夜の平和は存在せず、従うべき静かな規則の集合があるだけだった。私は沈黙に備え、ティアラの鼓動と、私のすべての魔法的な不快感の源であるカイトの近い存在を感じていた。
