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<第九話>戦争という名の現実(リアル)

 機動部隊の大艦隊がやってきてから一日。南国の陽気あふれるトラックは、ようやく帝国海軍の重要拠点としての様相を呈し始めていた。


 これまで巡洋艦以下の艦艇だけしかいなかった泊地に、その何倍もの大きさの戦艦や空母が錨を投げて停泊している。巡洋艦も立派な軍艦ではあるが、やはり戦艦には敵わない。巨大な城郭のように聳える戦艦を前にすると、巡洋艦が駆逐艦のように小さく見えた。


 真珠湾攻撃を成功させた機動部隊は一旦、柱島に戻り、補給と整備を行った。そして、続く南洋諸島攻略のために再び出撃し、ここトラックへやって来た。


 機動部隊の軍艦たちは、来るべき出撃に備えて粛々と準備を進めている。ホースを伝って油槽船が各艦に燃料を補給し、他の船からも種々の物資の補給が行われている。


 「氷川丸」も医薬品の補給を行える態勢でいたが、まだ戦闘の前であるため、各艦共に医薬品の欠乏は無かった。仕事が無いのは寂しいが、そうした状態はすなわち、艦の将兵たちが健康である事の証だ。


 「皆さん、無事に帰って来てほしいですね」


 補給の様子を眺めながら、氷川丸が言った。


 「大丈夫だよ。皆、百戦錬磨の強者たちだから」


 一緒にその光景を眺めていた雄人が言う。氷川丸は「それもそうですね」と答えると舷側の手摺から手を離して伸びをした。


 「んっ・・・・・・。風が涼しくて、気持ち良いですね」


 「そうだね。今日は比較的過ごしやすい気温だ」


 「これなら患者さんたちも幾らか楽ですね」


 「うん。いくら冷房をかけているとはいえ、熱帯の気温の高さは堪えるからね」


 赤道直下の熱帯地方は、年間を通して気温が高い常夏の場所である。それに加えて湿度も高い。病床の患者たちには辛い環境である。元が客船である「氷川丸」は空調設備が完備されているが、それでも限界はある。患者の中には人口密度の高い病室よりも、風通りの良いデッキの上を好む者もいた。


 やがて仕事開始のラッパが鳴り、雄人は今日一日の仕事に取りかかった。




 病院船に収容されている患者は、一時的に戦闘任務から外された存在である。しかし、重傷者を除き、療養中も彼らは規則正しい生活をすることになっている。


 そのため、朝になると看護兵たちが患者を起こしに行くのだが、流石は軍人といった所か。殆どの場合、起こしに行った時には既に彼らの大半は起床しているのだった。


 起床の次は、朝食だ。厨房で作られた食事を、各病室に運んでいく。食事はそれぞれの病室で食器によそう。この時、動ける患者が配膳を手伝ってくれる。その理由が、看護兵の労を軽くしようとする配慮なのか、早く飯にありつきたい食欲によるものなのかは分からない。どちらにしてみても、看護兵たちにとっては助かる行為だった。


 午前の仕事を終えた雄人は食堂で昼食を食べていた。部屋に置かれたラジオから独特の調子のアナウンサーの声が流れている。


 その声をBGMにしながら兵たちは箸を動かしている。雄人も慣れた手つきで箸を操り、肉じゃがを口に運ぶ。ラジオから流れてくるのは国内外のニュース。といっても、時局柄、外国の情報が入ってくることは殆ど無く、国内のニュースも戦争に関わることが殆どだった。ラジオが知らせるのは快進撃を続ける日本軍の様子。勝利の報せがもたらされる度に、食堂に歓声が湧いた。


 その時、ラジオが次のニュースを流した。



 『昨日、東シナ海において陸軍病院船「ハルピン丸」沈没す。敵潜水艦の魚雷攻撃を受けたものと思われる』



 瞬間、室内の時が止まった。音が消え、色も消えたようだった。誰もが自分の聞いた二つの単語を反芻した。「病院船」「沈没」―――。背筋に悪寒が走った。


 だが、ラジオは何事も無かったように次のニュースを伝え、そして音楽を流しだした。ドイツ・イタリアと三国同盟を締結し、連合国と敵対するようになってからラジオでアメリカやイギリスの音楽を聞くことは無くなった。耳にするのはドイツとイタリア、そして日本の音楽だけだ。


 ベートーベンの交響曲第五番の演奏が部屋の静寂を破った。夢から醒めた子供のように食堂にいる者たちは呆然とした顔で互いを見合った。


 「なあ、さっきのニュース・・・聞いたか?」


 一人が聞き、もう一人が青ざめた顔で頷いた。


 「病院船は、ジュネーブ条約で守られているんじゃなかったのか?」


 「だが、武器の輸送などに使われれば条約の保護から外れる。その時は攻撃されても文句は言えない」


 「陸軍の病院船は武器を運んでいたというのか?我が国の船がそんな事をするはずない」


 「ああ。俺もそう思う」


 「なら、どうして『ハルピン丸』は沈められたんだ」


 「敵が条約を無視して攻撃したんじゃないのか?」


 「糞ッ!鬼畜米英め!!」


 「待て、まだそうと決まった訳じゃない。輸送船と誤認されたのかも知れないぞ」


 其処此処で聞こえる話し声の中、雄人だけは堅く口を閉ざしていた。


 「(病院船が、沈没――)」


 周囲の声の中にもあるように、病院船の中立と安全はジュネーブ条約によって保証されている。だが、現実の戦闘では100%それが守られるとは言い切れない。誤って攻撃を受ける事もあるだろうし、病院船と分かって攻撃を受ける可能性も考えられる。


 だが、過程はこの際、関係無かった。雄人の心では『沈没』の二文字が渦巻いていた。


 病院船なら、安全だ―――今までの自分は、どこか楽観的に考えていた。しかし、今、ラジオが伝えたニュースはその思考を完全に吹き飛ばした。


 病院船でも、攻撃を受ける。そして、沈没する可能性すらある―――それは、分かっていながら今まで心のどこかで意識的に見ていなかった現実だった。そして、その現実を認識した途端、雄人は慄然とした。瞬時に導き出された最悪の予想が、彼を恐怖の底へと突き落としたのだった。


 もし、この船が敵の攻撃を受けたら、どうなるか―――いくら一万トンを超える排水量を持つ「氷川丸」といえど、被害は大きいだろう。最悪、沈没もあり得る。その場合、彼女はどうなるのだろうか・・・?


 艦魂とは、その船そのものである。本体である船が傷つけば、それはそのまま、艦魂にも適用される。魚雷で船腹を破壊されれば腹を抉られ、砲弾が甲板を穿てば背を裂かれる。そして、沈没すれば・・・死ぬ。


 雄人は潜水艦の雷撃を受け、水柱を立たせる「氷川丸」の姿を想像した。轟音と共に揺れる船体。火災が起こり、船は次第に傾いていく。総員離船が言い渡され、患者が急いで甲板に上げられる。重傷者を優先して乗せた救命艇が次々に海へと降ろされていく。船内を回って残された患者がいない事を確認した雄人は甲板に続く通路を急いだ。恐らく、自分が最後の一人だろう。救命艇がまだ残っていると良いが・・・。


 だが・・・その時、雄人は見た。火炎の中に倒れる少女の姿を―――。


 炎に呑まれ、息も絶え絶えに助けを求める少女の身体は真っ赤に染まっていた。血の海に倒れ、炎に捲かれる少女。その痛ましい姿に雄人は言葉を失い、立ち尽くした。そして、再び爆発が起こり、少女は―――




 「おい、雄人ッ!!」


 肩を揺すられる感覚に雄人は我に返った。怪訝な表情の仲間が、心配そうに聞いてきた。


 「大丈夫か?顔色悪いぞ」


 「あ、うん・・・。大丈夫」


 雄人は残った肉じゃがを流し込むと席を立った。


 「一応、診てもらった方が良いんじゃないか?疲れが溜まってるのかもしれないぞ」


 「平気だよ」


 無理矢理に作った笑顔で答えた雄人は、そのまま逃げるように食堂を出た。




 廊下を歩く雄人の頭の中では、さっきの光景が何度もフラッシュバックされていた。どんなに必死に忘れようとしても、最悪の想像が頭から離れない。


 闇雲に船内を歩く雄人はやがて、デッキの上に辿り着いた。潮風が沖から涼しい空気を運んでくれている。


 手摺に掴まり、海を見下ろした雄人は溜息をついた。暗い心とは対照的に、海は明るく煌めいている。


 その差を感じて、再び溜息をつきそうになった時、背中から声が聞こえた。


 「溜息ばかりついてると、幸せが逃げちゃいますよ」


 振り返ると、そこには悪戯っぽい笑みを浮かべた氷川丸が立っていた。


 「どうしたんですか?雄人さん。そんなに暗い顔して」


 言いながら、氷川丸は雄人に近づく。肩から下がった三つ編みが、ひょこひょこと揺れる。


 「昼間から暗い顔されたら、こっちまで沈んだ気持ちになっちゃいますよ?」


 「・・・・・・」


 「・・・雄人さん?」


 異変に気づいた氷川丸が雄人の顔を覗き込む。その瞬間、氷川丸の身体が強く引っ張られた。


 「なっ・・・・・・」


 一瞬の内に起こった出来事に氷川丸は混乱する。遅れて、自分が雄人に抱き締められているのだと気づいた。


 「雄人・・・さん・・・?一体、どうし―――」


 「恐いんだ」


 氷川丸の言葉を遮るようにして雄人が言う。雄人はラジオのニュースの話と、その瞬間に脳裏をよぎった最悪の想像について話した。


 「そうだったんですか・・・」


 話を聞き終えた氷川丸は一言、そう言った。


 「僕は恐い・・・。氷川丸が傷つく事が」


 雄人の声は、震えていた。


 氷川丸は暫く無言でいたが、やがて優しい声で言った。


 「雄人さん」


 俯かせていた顔を上げ、雄人は氷川丸を見た。


 「雄人さんが私の事を心配してくれて、嬉しいです。・・・でも、そんなに考え過ぎないで下さい」


 「氷川丸・・・」


 「そうやって苦しんでいる雄人さんを見ているのは、辛いです・・・」


 本当に辛そうに、氷川丸は目を伏せた。


 「・・・それでも、やっぱり恐いんだ」


 繰り返す雄人の腕の中で、氷川丸は胸の奥が錐で突かれたように痛むのを感じた。雄人が苦しんでいる事が、辛かった。彼の苦悩を取り除いてあげられない事が、悲しかった。そんな自分が、やるせなかった。


 自分は、病院船だ。傷ついた人々を癒す事が、自分の使命だ。それなのに、大切な人の苦しみを癒してあげる事すらできない。大切な人ひとり助けられずして、どうして多くの人を助けられようか。どうして、病院船を名乗れようか。


 氷川丸は、自分を情けなく感じた。同時に、何としてでも雄人の心を癒してあげたいと思った。


 「それなら―――」


 氷川丸の右手が伸び、雄人の頬に触れた。驚いた様子の雄人の丸くなった瞳を見て、氷川丸は言った。


 「それなら、私の傍にいて下さい。いつでも私の隣に立っていて下さい。・・・雄人さんが一緒なら、私は何も恐くありません。どんな危険も、乗り越えられます」


 それは、氷川丸の偽らざる本心だった。微かに朱の差した頬で、氷川丸は微笑んだ。


 「雄人さんが、私を支えて下さい。私も、雄人さんを支えますから」


 風が、デッキの上を駆け抜けた。氷川丸の長い三つ編みが揺れ、彼女の甘い香りが辺りに撒かれた。


 静寂が、二人の間に満ちた。二度、三度と、打ち寄せる波の音が響く。四度目の音が響く瞬間、雄人は短く答えた。


 「分かった」


 氷川丸は、再び自分の身体に強く力が加わるのを感じた。今度は驚かなかった。それはとても優しくて、温かい感覚だった。氷川丸は、胸の奥にあった痛みがすうっと溶けてなくなっていくのを感じた。代わりに、肌を通して受けた彼の温もりが胸の中に満ちていった。


 氷川丸は目を細めて幸せそうに微笑んだ。そして、両腕を雄人の身体に回し、抱き締めた。


 「ありがとう、氷川丸」


 「何がですか?雄人さん」


 「僕の事を気遣ってくれて。氷川丸の事を心配していたのに、逆に心配させちゃって・・・情けないな」


 「・・・そんな事、ないです・・・」


 氷川丸は雄人の胸に顔を埋めた。じかに聞こえる彼の鼓動を聴きながら、氷川丸は言った。


 「雄人さんは、情けなくなんかないですよ」


 「そうかな」


 「そうですよ」


 「・・・ありがとう」


 熱帯にしては涼しい陽気の日、二人の周りだけは熱い空気が流れていた。


      ◆               ◆               ◆


 その日の夜。


 いつもは熱帯夜の寝苦しい夜も、今日は少し楽だった。雲のない夜空には満天の星空が広がり、甲板では患者や付き添いの看護兵がデッキチェアーに座ってその眺めを楽しんでいる。


 それは何も人間だけに限った話だけではなく、そこに停泊する艦艇の艦魂たちもまた、星屑の輝きに心を癒していた。


 「綺麗だね~」


 「氷川丸」の甲板で、青葉がラムネを片手に言った。ハッチの上にごろりと寝転がり、星空を満喫している。上空の視界を遮るものが何もない露天甲板からの眺望は、最高と言えた。ただ一つ、気になるのは―――


 「ねー氷川丸。あの突っ立てる棒、何とかならない?視界の隅に入って気になるんだけど」


 「馬鹿言わないでよ」


 ハッチの脇に立つクレーンを指差して言う青葉。その言葉に氷川丸が呆れる。


 「クレーンは荷役の時に絶対必要な物なの。あれが無かったら船倉に貨物を積めないし。それに、今は患者の人を船内に収容する時にも使ってるんだから」


 「そっかぁ。なら仕方ないねぇ」


 ラムネを飲み干した青葉は、新しいものを取り出してまた飲み始めた。彼女の周りには、空のラムネ瓶が無数に散乱している。何本かはハッチの上から甲板に転がり落ちている。


 「一体、何本飲むつもり?」


 「さあ?」


 氷川丸の問いに、青葉は気の抜けた返事を返す。溜息をつく氷川丸の横で、夕張が笑った。


 「比叡さんがいたら、怒られちゃいますね」


 「夕張も比叡さんの事、知ってるの?」


 「知らないはず無いじゃないですか!」


 夕張は大声を出した。


 「あの人の恐ろしさは帝国海軍全艦魂が知っていますよ!鋭い目つき、ドスの効いた声!あれはもう艦魂じゃありませんっ」


 そこまで言って、夕張は、はっと後ろを振り返った。


 「良かった、いない・・・」そう言って胸を撫で下ろす。


 そんなに恐がらなくても・・・、と氷川丸は苦笑する。余談だが、艦魂たち(特に小型艦艇の)が比叡に対して抱く恐怖は半端なものではなく、一部の艦魂たちの間には、『比叡に怒られなくてすむお守り』なる物が流布する程だった。


 和やかな空気が流れる船上。だが、その空気は一瞬にして切り裂かれた。


 けたたましい警報サイレンが、突如、夜の静寂を打ち砕いた。トラックにいる全ての将兵が緊張に顔を強張らせた。


 「な、何・・・!?」


 突然の出来事に驚く氷川丸。そんな氷川丸に向けて、素早く飛び起きた青葉が言う。


 「空襲警報だよ」


 「えっ・・・」


 青葉の言葉に氷川丸は絶句する。


 「・・・義姉ねえさん?・・・・・・うん。・・・うん。・・・分かった。すぐ行く」


 念話を終えた青葉は、夕張に何事か伝えた。二人は、もはや先程までとは別人となっていた。年相応の少女の面影はそこに無く、代わりに軍人としての表情が現れていた。


 「青葉・・・」


 呼びかけられた青葉は振り向くと、口元に微笑を浮かべた。


 「へーき、へーき。敵機はそう多くないっていうから。多分、片手で数えられるくらい。どうせ、偵察ついでに爆撃してやろうって思って来たんでしょ」


 場の緊張にはそぐわない明るい口調で言った青葉は、夕張に声をかけた。


 「夕張、行くよ」


 「はい」


 配下の駆逐艦への指令を出し終えた夕張を従え、青葉は自艦へ転移した。氷川丸は、「青葉」が泊まる方向を見詰めた。


 「氷川丸!」


 かけられた声に振り向くと、そこには雄人がいた。雄人に手を引かれ、氷川丸は船内に避難した。


 「雄人さん、空襲警報って・・・本当ですか?」


 「・・・うん。残念ながらね」


 不安げに聞く氷川丸に雄人は沈んだ声を返す。空き部屋の一等客室。氷川丸の自室であるそこに、二人はいた。


 窓の外から覗く景色は、暗い。暗い海と空。そこへ、不意に光の筋が伸びた。漆黒の夜空に走る白い光線が、狂ったように夜空を照らし出す。その根元では、カメラのフラッシュのような光が散発的に散っている。少し遅れて、くぐもった砲撃の音が聞こえてくる。陸上の高射砲が、砲撃を始めたようだった。


 雄人と氷川丸は、その様子を窓から見詰めている。その雄人の袖を、氷川丸の手が掴んだ。


 「・・・大丈夫だよ」


 氷川丸の手に自分の手を重ね、雄人が言う。


 「僕が傍についているから。恐くないよ」


 「・・・はい」


 優しく肩を抱く雄人に、氷川丸が答える。その時、サーチライトの光芒の中を黒い影が落ちていくのが見えた。


 「!」


 その正体に気づいた瞬間、地上に炎が生まれた。投下された爆弾が、地上に落ちたのだ。直後、別の場所でもう一発爆弾が炸裂した。


 二発の爆弾を炸裂させ、敵機は去っていった。空襲後のまとめによると、空襲をしてきた敵機は一機だけ。投下された爆弾の内、二発が炸裂し、二名の死亡者と九名の負傷者を出した。負傷者は巡洋艦「鹿島」を経て、「氷川丸」に搬送された。




 「氷川丸、大丈夫!?」


 空襲警報が解除されてすぐ、青葉が飛んできた。転移するやいなや、青葉は氷川丸に怪我の有無を尋ねた。


 「平気よ。私はみんながいる所からは少し離れてたし。それに、雄人さんが付いていてくれたから」


 「そっか。良かった」


 氷川丸の返事を聞き、青葉は安堵の息をついた。


 「青葉は怪我してない?」


 氷川丸の問いに、青葉は首を横に振った。


 「全然。掠り傷もしてないよ。他のみんなも無事だよ」


 それと・・・、と青葉が続ける。


 「陸に落ちた爆弾で負傷者が出たから、その人たちの事よろしくね。後で誰かが届けに来るから」


 「もちろん。任せて」


 氷川丸が力強く頷くのを見ると、青葉は転移して消えた。数分の静寂の後、氷川丸がおもむろに言った。


 「これが・・・戦争なんですね」


 「・・・うん」


 雄人は小さく頷いた。


 「でも、前線で戦う兵士たちはもっと過酷だ。空襲だって一機だけなんて事は無いし、爆弾だって雨霰と降ってくる」


 「・・・そうですね」


 「彼らと比べると、僕たちは比較的安全だ。直接、敵と戦う事は無いからね。だからこそ――」


 「私たちが後方でしっかりと支援しないといけない、ですね」


 雄人の言葉を氷川丸が引き継ぐ。


 「兵士の皆さんが前線で命懸けで戦っているんです。私たちも、全力を尽くさないといけませんね」


 「ああ。一人でも多くの人を助け、救う。それが僕たちの役割だ」


 雄人の言葉に、氷川丸はしっかりと頷いた。「鹿島」から九人の負傷者が送り届けられたのは、その後の事だった。

作者「危うく一ヶ月一話更新の自分ルールを破る所だった・・・」

氷川丸「ギリギリセーフ、でしたね」

作者「読者の皆さん、お待たせ致しました」

青葉「ねえ、もうちょい早くできないの?」

氷川丸「無理よ、青葉。それができてたら、とっくにやってるわよ」

青葉「そっか」

作者「すみません。何分、遅筆なもので・・・」

氷川丸「そんな作者さんにプレゼントがあります」

作者「え?プレゼント?」

氷川丸「はい」

作者「そいつは一体どんな物で?」

氷川丸「これです」


バサッ(氷川丸、プレゼントを覆っていた白い布を取り払う)


作者「えっ・・・・・・。なに、それ・・・」

氷川丸「『九三式注射器』です」

作者「・・・・・・ハイ?」

氷川丸「九三式魚雷って、知ってますか?」

作者「そりゃもちろん。帝国海軍の秘密兵器、酸素魚雷でしょ?」

氷川丸「この注射器は、その九三式魚雷を注射器に改造したものです」

作者「はいいぃっ!?」

青葉「私のトコの魚雷を一本引き抜いて、夕張が造ったんだよ」

夕張「魚雷の推進機構をなくす代わりに、大量の液体を注入できるようにしました」

作者「何て事しやがるんだ、このロリッ子白衣娘は・・・。で、この注射器をどうするの?」

氷川丸「作者さんに注射します」

作者「・・・もう一度、言ってもらおうか?」

氷川丸「作者さんの筆が早くなるように、この注射器から栄養剤を注入します」

作者「ちょ、おまっ・・・。冗談だろ?」

氷川丸「青葉、比叡さん、お願いします」

青葉「はいよ」

比叡「相分かった」

(青葉・比叡、作者を拘束)

作者「え、えぇ?」

氷川丸「それじゃあ、いきますよ。古鷹さん、持つの手伝ってもらえますか?」

古鷹「ええ。良いわよ」

作者「今日は随分と人数多いな・・・って、そんな事より!これヤバイでしょ!危ないって!」

氷川丸「大丈夫ですよ、作者さん。中身はリポ○タンDですから。有害なものではないですよ」

比叡「大丈夫だ、問題ない」

作者「大丈夫じゃない、問題だ!そもそも、それは人体に注入するものじゃない!」

氷川丸「いくよ、青葉。ファイトーッ!」

青葉「イッパァーツッ!」


作者「ウギャアアアァッッ!!」


青葉「ありゃりゃ。倒れちゃったよ。どうする?氷川丸」

氷川丸「しばらく起きそうにないし、私たちだけで締めましょう」

青葉「りょーかい。そんじゃ、読者のみんなに感謝の言葉を。ありがとね~」

氷川丸「ご意見・ご感想、お待ちしてます」

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