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婿候補


「おほん、ではこれより、かぐや姫見合いの儀を始める」


 わざとらしく大きな咳払いを翁はした。


 家の一室。翁の目の前には四人の貴公子がいまかいまかと内心穏やかでなくとも、泰然と座っている。

 

 これから一人ずつかぐやのいる部屋へと赴き、一人ずつ談笑をする。そしてこの中でかぐやが一番気に入った一名を、夫として迎えることとなる。翁は突然始まったこの見合いの儀に戸惑いつつ、殴り書きのメモ用紙を見つめる。


「えぇっと……。点呼とります。石作(いしづくり)さん」


「はい」


 返事をしたのは目をきりっとさせた、好青年然とした男だった。凛々しい顔立ちに眉が逆八の字を描き、質実剛健とした雰囲気を放っている。しっかりとした性格も声色に出ていた。


車持(くらもち)さん」


「……はい」


 今度は若干落ち込んでいるような、先ほどからため息の多い男が返事をした。なにかをしきりに考えていてはため息を吐いている。


「安倍さん」


「はいは~い」


 力の抜けた口調。明らかにチャラそうな風貌をしている男が返事をした。他三人があぐらで座っているのに対し、この男は寝そべって肘をついている。翁は心の中に嫌悪感を抱いた。


 わざとらしい咳払いをもう一度してから、次の名前を読み上げる。


大伴(おおとも)さん」


 今度は返事がなかった。というより、五人来ているはずが目の前に四人しか来ていないのだから、一人はまだ到着していないことになる。


「大伴さ~ん?」


 確認のため、もう一度名前を呼ぶ。


「失礼、大納言大伴御行(おおとものみゆき)殿はここにいらしていない。なんでも、ここに向かっている道中にて天災にみまわれたとか」


 こたえたのは石作だった。翁は一礼とともにお礼を述べ、最後の名前を読んだ。


石上(いそのかみ)さん」


「はいっ!」


 快活な声が上がる。手をあげて元気にこたえたのは、まだ十代であろう若人だった。まだ顔にあどけなさを感じる。


「以上、まだ一名到着していませんが、五名になります。どうか、うちのかぐやをよろしくお願いします」



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