第97話 確かな手ごたえ
準決勝を控えいつものグラウンドが、どこか違って見えた。
空は晴れていて、風も穏やか。
だけど空気は、ピンと張りつめていた。
「おい、もっと腰を落とせ! 旭丘の四番は一発あるぞ!」
金城先輩が、ノックの合間に野手へ声を飛ばす。
ファールグラウンドで守備練習をする先輩たちの目は、冗談一つ交えず鋭い。
旭丘の映像は、もう何度も全員で見てきた。
中でも三番と四番は、全国でも注目されるスラッガー。
どんな球種でも引っ張るパワーと、甘い球を絶対に逃さない集中力。
「春日、あと10球な。テンポ早めていこう」
「おう」
俺はブルペンで春日と投球練習をしていた。
春日はもうミットを構えている。
こいつの「準備できてる」サインは、いつも言葉より早い。
俺はうなずいて、サインに従ってジャイロカッターを投げ込んだ。
小さく落ちて、ミットの芯に吸い込まれる音が響く。
「ナイス。切れはいい。……でも、たまに縦の回転が甘くなるな」
「わかってる。意識してるけど、指の抜けが上手くいかない時があるんだよな。後、ストレートとジャイロカッターのフォームの腕の振りが微妙に違うのが気になるんだよな」
そう呟くと、コーチ達が撮影した映像を見た春日から提案を受ける。
「じゃあ、ちょっとだけフォーム変えるぞ」
春日が立ち上がる。
「手首の角度、あと5度内側にすると、かなりカッターとストレートが見分けづらくなると思う」
「了解」
春日が言った通りに腕を振り抜くと──
ズバン、と鋭い音。
そして、映像を比較してみると、大分ストレートに近づいているように見えた。
【ジャイロカッターが1上昇しました】
「……お、これならいける気がする」
「だろ?」
軽く笑う春日。その顔に、先日までの一軍に対する遠慮はなかった。
もう、完全に“一軍の一員”だった。
「風間ー、あと2球!」
ベンチから声がかかる。
俺はうなずき、次のスクリュー、そして最後のストレートを投げて締めた。
「よし、終わり!」
立ち上がった春日と軽く拳を合わせて、ブルペンを後にする。
ベンチでは猫宮先輩がストップウォッチを見ながら、俺たちを見ていた。
「いい感じじゃん。ストレート、下半身のブレも全然ないし」
「猫宮先輩、明日はショートに打たせますんで、よろしくお願いします」
「了解。守備位置、気持ち前に出すよ。今度の4番は変化球待ってくるからな」
簡潔だけど、意思が通じている会話。
このチームの連携が、今、本当に心地いいと思える。
◇
全体練習が終わり、夕方のグラウンドに照明が灯り始める。
金城先輩と神宮寺先輩がベンチで談笑している横を通り過ぎると、神宮寺先輩がぽつりと言った。
「お前らのバッテリーが、どこまで通用するか。……それが勝敗を左右する」
俺は静かにうなずいた。
「勝ちます。必ず」
視線の先にあるのは、次の相手、旭丘。
逃げずに、臆せずに、真正面からぶつかる。
──それが、今の俺たちに課せられた役目だった。
<ステータス>
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名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:135km/h
コントロール:C(64)【↑】
スタミナ:C(63)
変化球:ストレート2,
カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター4【↑】
守備:D(57)
肩力:D(57)
走力:D(55)
打撃:ミートD(51)、
パワーD(50)
捕球:D(55)
特殊能力:元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース・
投打躍動・緩急◎
成長タイプ:元天才型
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