第94話 ロッカールームで
ロッカールームのドアが閉まった瞬間、弾けるような歓声が上がった。
「勝ったーーーっ!!」
「よっしゃああ!!」
「最高だろ、この試合!」
矢代先輩がタオルを投げて跳ね回り、猫宮先輩が椅子に足を乗せて無駄にポーズを決めている。金城先輩はなぜか真顔のまま水を飲んでいたが、口元は確かに笑っていた。
春日と俺は、少し離れたロッカーで並んで座っていた。
「……疲れたな」
ぽつりとつぶやいた俺に、春日は小さく笑った。
「でも、楽しかったろ?」
「……ああ、めちゃくちゃ」
ユニフォームの下、汗で張り付いたシャツが重たかった。でも、その重みが今日は心地よい。
本城先輩が静かに座ってユニフォームを脱ぎながら、笹原先輩と小さくグータッチを交わしていた。
みんな、同じだった。
目立つやつも、控えめなやつも、今日は全員が同じ勝利の一部だった。
「風間、春日」
そこへ、コーチがロッカールームのドアをノックして顔を出す。
「記者の方が来てる。ちょっと応対、頼むな」
「え、俺も!?」
春日が素で驚いている。俺も内心少し面食らったけど、すぐに察した。
(……“一年生バッテリー”で取り上げられるんだな)
そう思った瞬間、さっきまでの高揚が少しだけ引いた。
緊張ではない。違和感に近い。
でも、春日は慣れない空気の中でも気を張っていた。自分が呼ばれるとは思っていなかった分、むしろ落ち着いて見えた。
「行こうぜ、風間」
「あ、ああ」
ロッカールームを出ると、待っていたのは数名の地元新聞社と学生野球を追っているスポーツメディアの記者たちだった。
「お疲れさま。少しだけ時間、もらえるかな?」
「はい。大丈夫です」
春日が先にうなずく。俺も頷きながら、用意された椅子に座った。
「今日の試合、まずはおめでとうございます。風間くん、六回を無失点の好投でしたが、振り返っていかがですか?」
「はい……自分としては、先輩たちの守備と、春日のリードのおかげで落ち着いて投げられました。正直、楽しかったです」
記者のペンが走る音が、やけに大きく聞こえる。
「春日くんは急遽一軍でのスタメンでしたが、風間くんとのバッテリーはどうでしたか?」
「……やっぱり、風間の球、面白いんですよ。こっちが構えたところに、予想以上のキレで来る。今日は、自分も楽しんで捕れてました」
その瞬間、記者の一人が思わせぶりな質問を投げかけてきた。
「佐野選手が負傷してなければ、このバッテリーは実現しなかった可能性もあるわけですが──」
少し場の空気が変わった。俺も春日も、ほんの一瞬、言葉に詰まる。
でも次の瞬間、背後から声が飛んできた。
「そういう話は、意味ないですよ」
金城先輩だった。どこからかペットボトルを片手にやってきて、記者陣の間に立った。
「今日は、このバッテリーで勝った。それだけの話です。佐野が戻ってきたら、それはまた別の勝負。うちは、誰が出ても戦えるんで」
言い切る金城先輩の背中に、思わず俺は頭を下げた。
「すみません……ありがとうございます」
「気にすんな。お前らが今日、最高の試合したってだけだ」
そう言って笑う金城先輩を見て、記者たちも空気を察したのか、自然と柔らかい雰囲気に戻っていった。
──試合後も、チームは“ひとつ”だった。
たった一試合の勝利だけど、そこにはたくさんの役割があって、誰一人として欠けていなかった。
俺たちは、そのなかの“今”を、たまたま担っただけだ。
(次の試合でも、きっと同じように)
俺はもう一度、隣に座る春日をちらりと見た。
こいつとなら、またやれる。
<ステータス>
===============
名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:135km/h
コントロール:C(62)
スタミナ:C(62)
変化球:ストレート2,
カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター3
守備:D(57)
肩力:D(57)
走力:D(55)
打撃:ミートD(51)、
パワーE(49)
捕球:D(55)
特殊能力:元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース・
投打躍動・緩急◎
成長タイプ:元天才型
===============




