第93話 勝利の余韻
──9回表。
追加点で完全に試合の流れを握ったうちの攻撃は、淡々と進んだ。
点差が開いたこともあってか、相手ピッチャーもようやく開き直ったような投球に切り替えてきて、結果としてこの回は三者凡退。
それでも、スコアボードにはしっかりと「8」の数字が並んでいる。
ベンチに戻ると、コーチがベンチの前で静かに声をかけた。
「最後まで、締めてこい。本城、笹原、頼むぞ」
「はい」
本城先輩が帽子のつばを軽く指で押さえて立ち上がり、笹原先輩もマスクを手に静かにうなずいた。
二人の背中には、どこか背負うような緊張も、威圧感もない。ただ、勝利を仕上げにいくための“静けさ”があった。
──9回裏。
先頭打者は代打。勢いをつけるつもりか、いきなりフルスイングで振りかぶってきたが、インコースへのスライダーでバットを折る。
「セカンドゴロ! 一塁アウト!」
一死。
本城先輩のテンポはまったく乱れない。
続くバッターにも緩急を駆使し、チェンジアップをファウルで追い込み、最後は外角のスライダーで空振り三振。
二死。
(……あと、ひとつ)
ベンチに座る俺も、グラブを握る手に力が入った。
隣の春日も同じように前のめりになっている。無意識に息を呑んでいた。
──そして、打席に立ったのは、今日ヒットを打っている二番バッター。
しぶとくて、粘り強い打撃が持ち味。ここでも食い下がってきた。
一球、二球とファウルで粘る。カウントはフル。
(頼む、決めてくれ)
本城先輩がマウンドでゆっくりと息を吐く。
笹原先輩が、外角低めのストレートを要求──本城先輩の腕が振られた。
──ズバン!
「ストライクバッターアウト! ゲームセット!」
球場全体が、地響きのような拍手に包まれる。
──勝った。
俺は立ち上がって、ベンチの中からグラウンドに向かって叫んでいた。
「ナイスゲームッ!!」
本城先輩と笹原先輩が、静かにグラブを合わせる。
その姿は、派手さはないけれど誰よりも頼もしかった。
「……ふぅ」
大きく息を吐いてから、俺はゆっくりとグラウンドに向かって歩き出した。
勝った──本当に、勝ち切ったんだ。
マウンドを任せてからの数イニング、俺はベンチでずっと拳を握っていた。
どこか悔しくて、どこか安心して、そして誇らしい。
春日が横に並び、俺の肩を軽く叩く。
「俺たち、ここまで来たな」
「……ああ」
胸が熱かった。
今日の勝利は、ただの一勝じゃない。チームで勝った、俺たちの野球で勝ち切った、そんな試合だった。
──次は、準決勝だ。
簡単には勝たせてもらえないだろう。でも、今なら思える。
(このチームで、この仲間となら──きっと、もっと遠くまで行ける)
俺はキャップのつばをぐっと握り、もう一度、勝利のグラウンドを見渡した。
【準々決勝、終了】
【評価:A】
【コーチ陣の評価が上がりました】
【一軍選手達からの評価が上がりました】
【ジャイロカッターが1上昇しました】
【スキル『緩急◎』が発現しました】
緩急◎:ストレートと変化球を組み合わせて投球すると変化量が2上がる。
<ステータス>
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名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:135km/h
コントロール:C(62)
スタミナ:C(62)
変化球:ストレート2,
カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター3【↑】
守備:D(57)
肩力:D(57)
走力:D(55)
打撃:ミートD(51)、
パワーE(49)
捕球:D(55)
特殊能力:元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース・
投打躍動・緩急◎【↑】
成長タイプ:元天才型
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