第85話 準々決勝試合開始
バスのエンジン音が、やけに耳に残っていた。
早朝。まだ眠気の残る空気の中で、俺たち一軍は学校から球場へと向かう専用バスに揺られていた。
隣の席には春日が座っている。
窓の外を見つめるその横顔は、明らかに緊張で強張っていた。唇をきゅっと結び、背筋をやたらと正しているあたり、いつもの春日とは違っていた。
「……硬すぎ。肩に力入りすぎだろ」
そっと肘で軽く小突く。
「う、うるさい。お前は慣れてるかもしんねぇけど、俺は一軍は初めてなんだよ」
「まあな。でも、あんま気負いすぎんなよ。佐野先輩だって、“春日ならできる”って言ってたじゃん」
そう言うと、春日は少しだけ目を伏せ、息を吐いた。
「……わかってる。けどよ、やっぱ怖ぇよ。佐野さんがあの場にいなくなって、もし俺がなんかしくじって先輩達が甲子園行けないって考えたら、やっぱビビるぜ」
「大丈夫。お前のリード、俺がしっかり投げて支えるから」
そう言うと、春日がふっと笑った。ほんの少しだけ、いつもの顔に戻った気がした。
「じゃあ、お前が相手バッターにボールぶつけたら、後でしばくからな」
「言ってろ」
そんなくだらないやり取りをしていると、車内アナウンスが流れる。
「まもなく、球場に到着します」
途端、車内の空気が少しだけ引き締まった気がした。
◇
球場の正門が見えてきた瞬間、ざわざわとした何かが胸の中で波打った。
俺たちを乗せたバスが駐車場へと滑り込むと、関係者ゲートの向こうには、既に朝日を受けて輝くスタンドと、整備された内野の土が見えた。
「……でけぇ」
春日がぽつりと呟いた。
俺も同じ気持ちだった。
ロッカー室に入って、荷物を降ろすと、皆がルーティン通りに動き出す。
アップ開始までの時間があっという間に流れた。
ランニング、ストレッチ、軽いキャッチボールからのノック。体を起こしていく中で、徐々に意識が「試合」に向かっていく。
──肩は、問題なし。肘も、違和感なし。
(いける)
フォームもテンポも、いい。
春日とボールを交わしながら、彼のミットの構えが、最初よりもずっと自然なものになっているのに気づいた。
目も合う。タイミングも合う。
──大丈夫だ。俺たちは、できる。
やがて、球場のスピーカーからアナウンスが響く。
「それでは、間もなく準々決勝第1試合、明誠高校対早稲田実業の試合を開始いたします」
その言葉に、胸が一段と高鳴った。
先攻。つまり、俺たちが先に打席に立つ。
初回から、主導権を握るチャンスがある。
ベンチに戻ると、猫宮先輩がすっとヘルメットを被りながら、俺と春日に視線を向けた。
「まずは一本。流れ、持ってくぞ」
うなずいた。
──ここからが、本当の勝負だ。
<ステータス>
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名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:135km/h
コントロール:C(62)【↑】
スタミナ:C(62)
変化球:ストレート2,
カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター2
守備:D(57)【↑】
肩力:D(57)
走力:D(55)
打撃:ミートD(51)、
パワーE(49)
捕球:D(55)
特殊能力:元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース・
投打躍動・緩急○
成長タイプ:元天才型
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