第84話 取材
準々決勝を翌日に控えた放課後のグラウンドは、いつも以上の熱気に包まれていた。
照り返す夕日。グラブの乾いた音。バットの響き。俺は、キャッチャーミットに真っ直ぐ投げ込んだボールを受け止めた春日に、確かな手応えを感じていた。
(やっぱ、春日と組むと……投げやすい)
リズムもタイミングも、何より「どう返ってくるか」の予測がこれほど一致するとは。佐野先輩とのバッテリーとは違うけれど、だからこそ出せるテンポが確かにあった。
そのときだった。
「はいはーい! すみません、ちょっと練習止めてくださーい!」
軽快すぎる声に、思わず振り返る。ベンチ横には平間監督がいて、その背後にはマイクやカメラを構えた数人の大人たちがいた。
(……まさか)
「風間くーん! 春日くーん! 今、ちょっとだけいいかな? あ、こっちはね、スポーツ誌と動画メディアでね。次戦の注目選手ってことで取材したいんだって!」
この大事な時期に選手へ説明なく勝手に取材を受けた平間監督に、俺は唖然とするしかなかった。記者の一人がマイクを向けてくる。
「風間選手、今回のバッテリー変更について──やはり佐野選手の故障が原因だと思いますが、その点どう受け止めてますか?」
一瞬、胸が詰まった。
佐野先輩のケガは、決して重いものじゃない。ただ、バッテリー変更はケガによるものである事も確かなため、正面から回答するのも気が引けた。
「それは……あの、俺が言っていいことなのかが分からないです……」
「じゃあ、春日選手が昇格したことについて──実力で勝ち取ったのか、それとも……流れで、ですかね?」
食い下がる記者。どこか詮索めいた空気に、春日も固まっているのが見てとれた。
そのときだった。
「ちょいちょい、そこまでにしてちょうだい」
猫宮先輩がスパイクを鳴らして割って入ってくれる。
「“実力か流れか”なんて聞き方、ちょっと失礼じゃないかな?」
その隣には、金城先輩が立っていた。大人たちと比べても先輩は背が高く、存在感がある。
「ウチのメンバーは、誰が出ても“戦力”です。ベンチ入りもバッテリーも、監督とコーチがちゃんと考えて決めてます。そっちで勝手にストーリー作らないでもらえますか」
淡々と、しかし言葉は重かった。
記者が空気を読み取り、少しばかり後退したその瞬間、猫宮先輩がいたずらっぽく笑った。
「でもまっ──風間と春日は、見てて面白いよ! だから取材するなら、試合本番でお願いねー」
「……自分たちも、試合で答えるんで」
俺もそれに乗せられるように、自然と口を開いていた。
気づけば、場の空気が少し和らいでいた。
平間監督が慌てて割って入る。
「まーまーまー、いい感じでしょ? 選手も元気で、チームも一丸ってことで! ね、みなさん!」
だがその声は、猫宮先輩と金城先輩の視線の前にあっさりと沈黙していく。
「──練習、戻りますよ」
金城先輩の一言で全体が再び動き出す。
俺は、少し照れくさそうに春日を振り返った。
「ごめん。変な雰囲気になって」
「いや、助けられたのは俺も一緒だ」
俺たちは無言のまま、再びマウンドへ戻っていった。
落ち着きを取り戻したグラウンドに、乾いたボールの音が戻ってくる。
監督や記者たちが何を期待していても関係無い、俺たちは自分のできる事をやるだけだ。
<ステータス>
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名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:135km/h
コントロール:C(61)【↑】
スタミナ:C(62)
変化球:ストレート2,
カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター2
守備:D(56)【↑】
肩力:D(57)
走力:D(55)
打撃:ミートD(51)、
パワーE(49)
捕球:D(55)
特殊能力:元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース・
投打躍動・緩急○
成長タイプ:元天才型
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