第83話 春日加入に伴う打合せ(鬼島監督目線)
2軍の練習を見終えて会議室に入った瞬間、空気の温度が変わった気がした。
上層部数名が既に席に着いており、その中央には校長。野球部の名ばかり「統括顧問」として、普段はグラウンドに姿を見せることのない人物だ。
「おぉ、鬼島監督。ちょうど今、君のところの春日くんの件で話していたところだ」
その横で、人の良さそうな笑顔を張り付けた平間監督が、早速口を挟んでくる。
「いやぁ、春日君も元一般生とは思えない活躍をしてますね。今年の推薦組が伸び悩んでいるだけに、これはもう使わない手はないでしょ!」
鼻白む。だが口には出さない。
俺は黙って空いている椅子に腰を下ろし、議題の核心を待った。
校長が咳払いをひとつ。
「さて、佐野くんの件は予想外だったが──逆に言えば、これはチャンスでもある」
「チャンス、ですか?」
敢えて問うた。校長は目を細め、何か愉快な玩具でも語るような口調で続けた。
「そう、チャンス。今、うちの野球部には“風間”という素材がいる。地方大会で三者三振デビューを飾り、すでに地元のスポーツ紙やまとめサイトでも話題になっている。そこに“控え捕手から一気に昇格した、一般枠の無名キャッチャー”がバッテリーを組む、となれば……これはもう、話題性としては十分だろう」
平間が畳み掛けるように言う。
「高校野球ドットコムも、取材の動きがあるみたいですよ。“伏兵・春日と超新星・風間、奇跡のバッテリー”って、タイトルだけでバズりますって!」
「バズってどうする」
つい、低く呟いてしまった。場の空気が、一瞬だけ凍る。
校長は笑った。
「もちろん、話題作りだけが目的じゃないよ。だが君も分かるだろう? 注目が集まれば、スポンサーの目も変わる。新入生の勧誘だって楽になるし、他の部活動への波及効果だってある。広報は“成果”を求めている。佐野の穴を埋めるだけなら、他にも三年はいる。だが“絵になる”のは、春日なんだよ」
“絵になる”。
その言葉が、胸に刺さった。
(……部活は、舞台かよ)
「春日には一年とは思えない程の実力がある。しかし、彼を選んだのは大人たちの勝手な“都合”だろう。風間のためや、チームのためじゃない。……そのことは、理解しておくべきです」
場の誰もが、俺の言葉に反論しなかった。する必要がないと、思っているのだろう。
「まぁまぁまぁ、鬼島監督。あなたの見る目は確かですよ! でも今はチームの雰囲気と世間の目が一致してる、絶好の流れじゃないですか。あの二人が並んでベンチに座ってるだけで、絵になる。この“演出”、逃したらもったいないですよ」
にこにこと笑いながら平間は話し続ける。上層部の顔色を見ながら。
(……これが、現実か)
俺は深くため息をつきたくなるのをこらえながら、視線を窓の外へ向けた。
春日が今もグラウンドでノックを受けている姿が目に浮かぶ。
(あいつは、自分が“利用されてる”なんて、思っていないだろうな)
いや、きっと分かっている。それでもあいつはやる。たとえ“話題性”のためでも、風間とバッテリーを組めるなら。
だからこそ──
「……頼むから、“使い捨て”だけはしてくれるなよ」
その言葉は、誰にも聞こえないように呟いた。
<ステータス>
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名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:135km/h
コントロール:C(60)【↑】
スタミナ:C(62)【↑】
変化球:ストレート2,
カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター2
守備:D(55)
肩力:D(57)
走力:D(55)
打撃:ミートD(51)、
パワーE(49)
捕球:D(55)
特殊能力:元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース・
投打躍動・緩急○
成長タイプ:元天才型
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