第78話 部活帰りに
部活帰り、春日と俺は並んで歩いていた。
暗闇の中で部室棟の灯りが影を長く伸ばすが、グラウンドにはもう誰の姿もなかった。
「……にしても、今日も一軍は大変そうだったな」
春日がぼそっと言った。
「別にそんなの二軍だって変わらないだろ?」
「まぁな。ただ、やっぱ三年の先輩たちの気合いの入り方が違うよ」
「そうかもなぁ」
そんな軽口を叩き合っていると、校門の方に見知った姿を見つけた。
──小春だった。
制服のまま、携帯を手にしてうつむき気味に歩いている。
何か考え事をしているようで、俺たちに気づいていない。
「……小春?」
声をかけると、少し遅れて顔を上げた。けれど、いつもの調子じゃない。笑顔も浮かばない。
「あ、風間くん、春日くん……お疲れさま」
それだけ言って、小さく頭を下げた。何か言いかけたけど、言葉にはならなかった。
何か──様子がおかしい。
春日もそれを察したのか、小声で「……なんかあったか?」と俺に囁いてきた。
だけどその後の小春は特に何事も無さそうで、三人で会話しながら帰って行った。
◇
帰宅して、夕飯を食べてから部屋に戻った。
ユニフォームを洗濯機に放り込み、シャワーを浴びても、なんとなく小春の顔が頭から離れない。
──あの、どこか遠くを見るような目。
気になって、スマホを手に取る。
迷った末に、小春に電話をかけた。数コール後、応答があった。
『……もしもし? 風間くん?』
「うん。今日、なんか……元気なかったから」
電話越しの空気が、少し揺れた気がした。
『……ごめんね、変だった? ちょっとクラスの藤井さんから相談に乗ってて』
「藤井? そんな子もいたっけ?」
頭を捻りながら顔を思い出そうとしてた、その時だった。
スマホの画面に、ポンと新着通知が現れる。
──送信者:藤井
──本文:「風間くん、突然のメッセージごめんね。少しだけ時間もらえるかな? 明日、話したいことがあって」
(……え?)
突然の事に気まずさが喉に詰まる。
自意識過剰でなければ、以前よく知らない女子から告白を突然受けた経験に近いような雰囲気を感じた。
「……えっと、小春。正直に言うけど、今、藤井って子から……明日、話したいって連絡が来たんだけど、何か知ってる?」
電話の向こう、小春は何も言わなかった。
「……小春、相談受けてたの、藤井のことだったんだよな?」
しばらくして、小春の声が戻ってきた。
『……うん。そう。……ごめん、風間くん』
謝る意味が分からなかった。だけど、その声が震えてるのは分かった。
「謝ることじゃなくない? てか、小春……俺、なんかした?」
『してないよ。でも……なんだろ。なんにも言えなかった。なんにも、言えなかったの、私のほうだから。……藤井さんのこと、ちゃんと考えてあげてね』
そういうと、小春は止めるまもなく、電話を切ってしまった。
突然音がなくなった部屋で俺は、しばらく通話が切れたスマホの画面を見ていた。
<ステータス>
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名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:135km/h【↑】
コントロール:D(57)
スタミナ:D(59)
変化球:ストレート2,
カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター2
守備:D(55)
肩力:D(57)
走力:D(55)
打撃:ミートD(51)、
パワーE(49)
捕球:D(54)【↑】
特殊能力:元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース・
投打躍動・緩急○
成長タイプ:元天才型
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