第77話 小春が聞いた相談
昼休み、購買でジュースを買った帰り。
渡り廊下を通って教室に戻る途中で、声をかけられた。
「ねえ、小春ちゃん。ちょっと、話、いいかな?」
振り返ると、同じクラスの藤井さんが、遠慮がちに笑っていた。
いつもは目立たないけど、最近、前髪を軽く巻くようになってからか、雰囲気が柔らかくなって、男子たちが噂してた女の子だ。
「うん、いいよ。どうしたの?」
隅のベンチに座ると、藤井さんは少し言いづらそうに、でも目だけは真っ直ぐだった。
「……風間くんのこと、なんだけど」
ドクン、と胸の奥が波打った。
「え?」
「ううん、あの……変な意味じゃなくて……いや、ある意味では変な意味かもだけど」
困ったように笑って、そして、まっすぐに口を開いた。
「私、風間くんに、告白しようと思ってるの」
紙パックのジュースを持っていた手に、ぐっと力が入る。
(……やっぱり、そういう話だった)
「え、そうなんだ」とか「頑張って」って、すぐに返すべきなんだろう。
でも言葉が、ちっとも口から出てこなかった。
藤井さんは、そんな私の沈黙に気づいた様子もなく、ぽつぽつと話を続ける。
「最近、すごく格好良いよね。あのマウンドでの姿とか、真面目に練習してるところとか……ずっと前から、ちょっと気になってたんだけど、今はちゃんと“好き”って言える」
そうやって誰かを真っ直ぐに好きになれる藤井さんが、少し眩しく見えた。
私は、どうなんだろう。
風間くんと一緒に朝練に参加して、くだらないことで笑って、試合の後に「すごかったね」って言うだけで、満足してるような顔して。
(本当は──)
「ね、小春ちゃんって、仲いいよね? 何か、風間くんって恋愛に疎そうだから、アドバイス……っていうか、いいタイミングとか……」
まるで、ただのマネージャーに相談するみたいな言い方。
「……うん。まあ、仲は……悪くないと思う」
やっと絞り出せた言葉は、たったそれだけ。
「そっか。よかった。じゃあ、今度タイミングとか相談させてもらうね!」
そう言って、藤井さんは明るく手を振って、行ってしまった。
私はひとり、ベンチに残ったまま、アップルジュースを見つめた。
口の中が、なんだか苦い。
(告白する、って……そんなの、簡単にできるもんなの?)
マウンドで投げる風間くんも、ベンチで笑う風間くんも、朝日に照らされた横顔も。
ぜんぶ見てきたのに、私は何ひとつ、ちゃんと気持ちを言ったことがなかった。
(“好き”って言われたら、風間くんはどうするんだろう)
ふと浮かんだその考えに、胸がチクリと痛む。
風なんか吹いていないのに、スカートの裾が揺れたような気がした。
(……こんなの、バカみたい)
そう思いながら、私はやっとジュースにストローを刺して、ひと口飲んだ。
──なんだか、全然甘くないな。
そんなことを考えながら、風間くんと春日くんの待つ教室へと歩いて行った。
<ステータス>
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名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:134km/h
コントロール:D(57)【↑】
スタミナ:D(59)
変化球:ストレート2,
カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター2
守備:D(55)
肩力:D(57)
走力:D(55)
打撃:ミートD(51)、
パワーE(49)
捕球:D(53)
特殊能力:元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース・
投打躍動・緩急○
成長タイプ:元天才型
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