第75話 試合終了
──7回表。
マウンドに立ちながら、俺は小さく深呼吸をした。
スコアは、7-0。
あと3アウト取れば、ここで試合は終わる。
ベンチから聞こえる声援。キャッチャーの佐野先輩が、しゃがんだまま俺を見てうなずいた。
その視線に、緊張じゃない。信頼がある。
──俺に託してくれている。
プレッシャーはあれど、不思議と怖さはなかった。むしろ今は、どこか“惜しい”とすら思っている。
(この試合が終わってしまうのが、少し……さびしい)
けど、やることは決まってる。
最後の最後まで、全力で、全打者を倒す。
「ラスト3人、締まってこー!」
佐野先輩の声が響く。俺は帽子に手をやり、ぐっとツバを握り直した。
◇
先頭打者は一番。俊足のリードオフマン。
四球やエラーでも出れば流れが変わりかねない。絶対に、出塁はさせられない。
初球、アウトコース低めにストレート。
「ストライク!」
まずはひとつ。狙い通りのコースに決まった。
(二球目は……少し外しながら、様子を見る)
スクリュー。沈む軌道を意識させて、タイミングをずらす。
相手は見送ってボール。カウント1-1。
三球目、内角へ食い込むストレート。
バットが出た。詰まった当たりは、ショートの正面。
「よし……!」
内野ゴロ、ワンアウト。猫宮先輩が軽くグラブを掲げるのが見えた。
◇
次は二番打者。先ほどの打席で粘りを見せていた男だ。
(ここで無駄に球数を投げるのは避けたい)
佐野先輩が示したサインは──カーブ。緩急で翻弄する。
初球、やや高めに浮いた。バッターは振らずにボール。
二球目、インローいっぱいのジャイロカッター。
バットが止まらない。空振り。
(次、迷うか……?)
俺は少しだけ間を取り、投げる素振りを一瞬遅らせた。
……その一瞬が効いたのか、三球目。アウトコースへ沈むスクリュー。
バッターのバットが遅れて出る。
コツンと鈍い音。打球は一塁線上に転がる。
俺はダッシュしてカバーに走るも、ボールはファウルゾーンへ転がった。
四球目、真っ直ぐ勝負。
投げる瞬間、全身の神経が研ぎ澄まされる。
ボールは、外角ギリギリへ。
バッターのバットが空を切った。
「ストライクバッターアウト!」
空振り三振。ツーアウト。
ベンチが沸いた。だが俺の耳には、それが遠く聞こえた。
ただ、前しか見ていなかった。
◇
──そして三人目。
三番、相手チームのキャプテン。
ここまで唯一、打席で落ち着きを見せていた選手だった。
(どんな打者だろうと、変わらない。全力で、ただ、目の前の一球に集中するだけだ)
初球、インコースのストレート。狙いすましたように振ってきたが、詰まった。
打球は、センターに上がるフライ。
「俺が行く!」
神宮寺先輩が叫んで、追っていく。
グラブを差し出す。
──パシン。
「……よしっ!」
ベンチが爆発するように沸いた。
スコアボードの最後のアウトが点灯する。
試合終了。7-0、コールド勝ち。
◇
俺は、マウンドの土を一度だけ、ゆっくりと見下ろした。
自分が立っていた場所。投げ抜いた場所。
(勝った……終わった)
だけど、それは“始まり”でもある気がした。
背中を叩かれる。振り返ると、佐野先輩が笑ってた。
「お前、もう立派な1軍だな。よくやった、風間」
俺は少し照れながら、帽子を脱いでぺこりと頭を下げた。
──次も、絶対に抑える。
この場所に、何度でも立つために。
【4回戦、終了】
【評価:A】
【コーチ陣の評価が上がりました】
【一軍選手達からの評価が上がりました】
【カーブが1上昇しました】
【スキル『緩急○』が発現しました】
緩急○:ストレートと変化球を組み合わせて投球すると変化量が1上がる。
<ステータス>
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名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:134km/h
コントロール:D(55)
スタミナ:D(59)
変化球:ストレート2,
カーブ3【↑】,
スクリュー2,
ジャイロカッター2
守備:D(55)
肩力:D(57)
走力:D(55)
打撃:ミートD(51)、
パワーE(49)
捕球:D(53)
特殊能力:元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース・
投打躍動・
緩急○【new】
成長タイプ:元天才型
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