第73話 2回の攻防
打席には、六番・佐野先輩が立った。
金城先輩が二塁上で軽く腕を回す。その後ろ姿に、佐野先輩がにやりと笑いながら構え直した。
「よーし、いい流れだ。もっと乗っかってこうぜ」
初球、外角低めのスライダー。見送り、ボール。
二球目──インコース寄りの直球を、佐野先輩は迷わず振り抜いた。
打球は三遊間をライナーで抜ける。
「抜けた!」
金城先輩が三塁を蹴った。その脚に迷いはない。レフトの返球はやや逸れ、金城先輩がホームイン。スコアは、4-0。
「ナイスバッティング佐野ー!」
「いっちょ上がり!」
ベンチが再び沸き立つ。俺も思わず声を上げて立ち上がっていた。
こうして、先制にとどまらず突き放す攻撃ができるのが、1軍の強さだ。
次の七番は内野ゴロで進塁のみ。八番は三振と倒れ、ツーアウト三塁。
そして、九番。俺──風間の番だ。
(ここで、一本打てれば……)
打席に向かいながら、胸の奥が静かに熱くなる。相手バッテリーは、完全に“投手・風間”として見ている。バットを握る手に、ほんの少しだけ力が入った。
初球、真ん中寄りのストレート。
(いける──!)
踏み込んだ左足。スイング。
が、芯を食い切れなかった。打球はセカンド正面のゴロとなり、アウト。
チェンジ。
悔しさを押し殺しながらも、俺はスパイクで土を踏みしめ、守備位置へ向かう。
──だが、確かな手応えはあった。
次は、絶対に打ってやる。
◇
そして迎えた2回表。再び、マウンドへ戻る。
相手打線の表情は、どこか硬さを帯びている。初回の三者三振に加え、4点を奪われたプレッシャーが色濃くにじんでいた。
(ここで崩せば、完全に流れはウチのものだ)
キャッチャーの佐野先輩が構える。
バッターボックスには相手の四番、主砲と名高い右のスラッガーが立っていた。
(ここが、この試合の“正念場”だ)
初回を完璧に抑えた勢いを、ここで手放すわけにはいかない。先制したとはいえ、まだまだ序盤。強豪校相手に、一瞬の緩みが命取りになる。
初球、アウトローにストレートを投げ込む。
「ストライク!」
思ったよりもバッターの反応は慎重だった。たぶん、初回の三者三振が効いている。
二球目、カーブ。見送られる。
カウント1ボール1ストライク。
三球目──ジャイロカッター。決め球ではあるが、四番相手にここで“試し”の一球を投げる。
バットが振られる。タイミングが合わず、ファウル。
(よし、4番相手でも詰まらせられる)
カウント1-2。
次の一球。インハイを狙ってストレート。
しかし――打ち返された。音が鋭い。
打球はライト前へ落ち、ノーアウトのランナーを背負う展開になった。
ベンチからの声援が響くが、俺の内心は冷静だった。
(慌てるな──流れを渡すな)
続く五番は四番に比べて小柄な左打者。バントの構えは見せない。普通に勝負してくるタイプ。
初球、スクリューで空振りを取る。
二球目、外に逃げるカーブで誘うも見送られてボール。
三球目。インコースに食い込むストレート。詰まった打球はセカンド正面──
「ゲッツーいけるぞ!」
ショート猫宮先輩がベースを踏み、そのまま一塁へ。
「アウト! ダブルプレー!」
ベンチが沸く。守備陣の素早い連携が、この回最大の山場を飲み込んだ。
(助かった……ありがとう、猫宮先輩)
そして二死走者なしとなって、六番バッター。
粘りのバッターで、フルカウントまで持ち込まれる。
(最後は……もう一度、ジャイロカッターで勝負だ)
佐野先輩が小さくうなずいた。
スッと構え直し、全身の力をボールに込める。
「っ──!」
唸りをあげて投じたボールは、ホームベース手前でスッと鋭く沈む。
バットは空を切った。
「ストライクバッターアウト!」
三振でチェンジ。
ベンチへ戻ると、佐野先輩が俺の背中を軽く叩いてくれる。
「ああいう回をゼロで抑えられるのが“本物”だ。上出来だよ、風間」
「……ありがとうございます」
まだ心臓はドクドクしていたが、不思議とマウンド上ではブレなかった。
俺は、確かに“試合の中”に立っている。
──さあ、次はまたウチの攻撃だ。
<ステータス>
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名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:134km/h
コントロール:D(55)
スタミナ:D(59)
変化球:ストレート2,カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター2
守備:D(55)
肩力:D(57)
走力:D(55)
打撃:ミートD(51)、
パワーE(49)
捕球:D(53)
特殊能力:元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース・
投打躍動
成長タイプ:元天才型
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