第72話 攻めの早実
マウンドを降り、守備陣と軽くハイタッチを交わしながらベンチへ戻る。ベンチ内は静かな興奮に包まれていた。
「おいおい、風間っち、いきなり三者三振って……」
「格好つけすぎだろ、初回から!」
佐野先輩たちの茶化すような声が心地よい。俺はタオルで額の汗を拭き、深呼吸をひとつ。まだ体のどこかが熱を持っていた。
「ナイスピッチングだ、風間」
金城先輩がポンと肩を叩いてくれる。
「これで流れはウチだ。しっかり打って、援護してやるからな」
「……お願いします」
俺は帽子のツバを少し下げて、ベンチの最前列に腰を下ろした。スパイクを履き直しながら、目はグラウンドへ。もう気持ちは、味方の攻撃に切り替わっていた。
相手ピッチャーが軽く肩を回している。その表情に、さっきまで俺が投げていた場所とはまったく違う、わずかな硬さが見えた。
一番、猫宮先輩がバッターボックスへ向かう。小柄な体にしなやかな脚取り。いつも通り、スッと構えを取るその姿は、こちらの初動を決定づける“狼煙”だった。
「んじゃ、ちょっくら打ちますかね」
猫宮先輩のその宣言通り、初球。鋭く振り抜かれたバットから、乾いた金属音が響いた。
打球は低い弾道のままレフト前へ。
「よっしゃ! ナイスバッティング!」
ベンチが湧く。俺も自然と立ち上がって、声を張った。
──三者三振。そして、先頭打者の出塁。
猫宮先輩が出塁したことで、ベンチの空気が一気に前のめりになる。
そして、二番打者の先輩がバントを試み、結果はキャッチャーゴロ。二番の先輩は一塁でアウトとなったものの、猫宮先輩は一気に二塁へ進んだ。
ここで三番、山岡先輩。
「風間が良いピッチングしたんだ、俺達も気合を入れないとな」
そんな宣言と共に力強く構えたそのスイングからは、自信と経験が滲んでいた。
初球、インコース高め。バットが一閃。
快音とともに、打球は一直線にセンターオーバー。猫宮先輩が三塁を蹴る。センターが全力で返球するが──間に合わない。
「セーフ!」
「うおおおっ、1-0!」
スタンドからも歓声が上がる。先制点。こちらの勢いは、さらに加速した。
続くは四番、神宮寺先輩。
相手バッテリーが明らかに動揺しているのが分かる。キャッチャーが何度もサインを変え、ピッチャーは首を振り続けている。
そして──投じられた初球を、神宮寺先輩は一歩も動かず、悠然と見送った。
ストライクゾーンぎりぎりの直球。それすら見極める目。
(やっぱり……あの人は“打てる”タイミングを見極めてる)
二球目、変化球。
神宮寺先輩のスイングは速く、無駄がなかった。
打球はライナーでライト線を破るツーベース。山岡先輩が一気にホームインし、スコアは2-0。
「うっしゃああああ! これがウチの四番だ!」
そして五番、金城先輩が打席に入る。
バッターボックスに立つその姿は、まるで“仕留める”ことに特化した猛禽類のようだった。
カウント2ボール1ストライク。四球を嫌ったピッチャーがストライクを取りにきたその一球。
それを金城先輩は、逃さなかった。
打球は高く舞い上がり──そのままレフトの頭上を越え、フェンス直撃のツーベース。
神宮寺先輩が悠々と三塁を蹴り、ホームへ。3点目。
(……本当に、ウチの1軍はすごい)
俺はベンチからその背中を見つめながら、思わず拳を握っていた。
チーム全体が、“勝ちに行く”空気に包まれていた。
<ステータス>
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名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:134km/h
コントロール:D(55)
スタミナ:D(59)
変化球:ストレート2,カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター2
守備:D(55)
肩力:D(57)
走力:D(55)
打撃:ミートD(51)、
パワーE(49)
捕球:D(53)
特殊能力:元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース・
投打躍動
成長タイプ:元天才型
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