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元・天才ピッチャー、転生先では俺だけが見える“野球スキル”で無双する 〜ケガで終わった俺が、ざまぁと完全試合で夢を取り戻す〜  作者: 猫又ノ猫助
新しい世界で

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第71話 再びのマウンド

 炎天下のグラウンド、1軍の練習はいつも通りに進んでいた。ノックの合間、監督とコーチがベンチ横に姿を現すと、周囲がピタリと静まる。


「全員、集合ー!」


 内野の中心に集まると、ヨレヨレのスーツ姿の平間監督が一歩前に出て、静かな声で言った。


「次の対外試合、先発は──風間に決まりました」


 一瞬、空気が止まった。


 次の瞬間、ざわっと軽いどよめきが広がったが、監督は意に介さずスタメン発表を淡々とするとそのまま去っていった。


 そんな中、すぐに動いたのは猫宮先輩だった。


「おー、やったね風間っち!?」


 わざとらしく目を見開いて、俺の肩をばしばしと叩く。


「最近ガッツリ練習してて調子も上がってるみたいだし、期待してるよ」


 にやりと笑う顔には、茶化しと本気の期待が入り混じっていた。


 続いて、佐野先輩がスポーツドリンク片手に近づいてきた。


「おーい、先発様。お体に水分は足りてます? 試合前に脱水で倒れるとか困りますからねぇ」


「……先輩、煽ってます?」


「いやいや。マジで嬉しいって。風間、お前、ちゃんとここまで準備してきたよな?」


 真剣な目で言われて、思わず背筋が伸びた。


「……はい」


「だったら大丈夫。お前はもう“任された側”だ。今日から自分の言動すべてが、チームを背負ってるって意識で動け」


 その言葉に、胸が熱くなる。


 猫宮先輩が腕を組んで、ふっと息を吐いた。


「しかしまぁ……いよいよ本格的に先発に食い込んできたな。となりゃ、こっちも油断できねぇな」


 そう言って、少しだけ拳を突き出してくる。


「頼むぞ、風間。派手に燃えて、勝ってこい」


 俺は拳を重ねた。


「──はい。やってみせます」


 太陽の光が眩しくて、でもそれ以上に、背負った期待が眩しかった。



 グラウンドの片隅。試合開始を目前に控えた整列前の時間、俺は静かに相手校のアップを眺めていた。


 白と青のユニフォーム。鋭く振り切られるバットの音。打球の音、飛び交う掛け声。それらすべてが、確かな実力を物語っている。


(強い……けど、怖くはない)


 不思議だった。心臓は落ち着いていて、手のひらに汗はない。いつものブルペンでのシャドウピッチングの延長線みたいに、感覚が研ぎ澄まされている。


 相手の情報は頭に叩き込んだ。バッターの傾向、先頭打者の選球眼、主軸の長打率──それらをどう料理するかは、もう自分の腕次第だ。


 そのとき、背後からぽん、と軽く肩を叩かれた。


「……緊張してない顔をしているな、風間」


 振り向くと、金城先輩だった。日焼けした腕を組み、ジッと俺を見て来る。


「ええ……案外、落ち着いてます」


 俺の返事に、金城先輩は意外そうに片眉を上げる。


「肝が据わってるのか、あるいは吹っ切れたか。……どちらにしろ悪くない顔だ。今日、お前に任せたのは俺たちの総意だ。胸張っていけ」


 言いながら、先輩は帽子のひさしを軽く弾いた。


「でも、ひとつだけ言っとくぞ」


「はい」


「“最初の打者”に全てが出る。立ち上がりで飲まれたら、今日の出だしの流れはぜんぶ相手のもんになる。逆に、そこで三振取ったら──きっとお前が支配する試合になる」


 俺は静かにうなずいた。


「わかってます。最初の三球で、俺が今日を決めます」


「それでこそだ」


 金城先輩は満足そうに頷いて、背を向ける。数歩離れたところで立ち止まり、振り返る。


「風間。……怖くなったら、胸に手を当ててみろ。そこに“火”がある限り、お前は折れない」


 そう言い残し、ベンチへ戻っていった。


 俺は小さく深呼吸をして、帽子のつばをぐっと握る。


(ああ、俺はもう、逃げない)


 試合開始の整列を知らせるアナウンスがグラウンドに響き渡った。俺はマウンドへ向けて、一歩を踏み出した。



 試合開始の合図と共に、俺はゆっくりとマウンドへ歩を進めた。


 心臓の鼓動が速くなるのを感じる──けれど、それは恐怖じゃない。むしろ、燃えるような高揚感だ。


(大丈夫。準備はしてきた。ここで証明するんだ)


 キャッチャーミットに構える佐野先輩が、小さく頷いた。


「いこう、風間。まずは自分の球を信じろ」


 俺は帽子のつばを一度押さえ、セットポジションに入る。


 初球──ストレート。


 バシィッ!


 ミットの奥で音が響く。球審が右手を上げた。


「ストライク!」


 観客席からざわめきが上がる。


 続く2球目は緩急を意識して、外に逃げるカーブ。


 バッターのバットが空を切る。


(あと一つ)


 佐野先輩が一度サインを変える。指がひとつ、ゆっくりと立った。


 ──スクリュー。


 内角から沈む球筋に、バッターは完全に腰を砕かれた。


「バッターアウト!」


 一人目、三球三振。


 俺は軽く息を吐いて、背後を振り返ると、猫宮先輩がグラブを掲げてニッと笑っていた。


「いいね、風間っち」


 続く二番打者。初球は様子見のストレート。ファウル。


 二球目、スクリューを低めいっぱいに。


 空振り。


 そして三球目、決め球──ジャイロカッター。


(いけ──!)


 球は打者の手元で鋭く切れ込んだ。


 スイング──空を切る。


「バッターアウト!」


 観客のどよめきが一段と大きくなる。


(よし……あと一人)


 三番。相手校の中でも長打力のある主軸打者。鋭い視線がマウンドに突き刺さる。


 でも、引かない。


 初球、ストレート。インコースいっぱいで見送り、ストライク。


 二球目、カーブ。緩急に目がついていけないのか、バットは動かずストライクツー。


 そして三球目──佐野先輩のサインは、再びジャイロカッター。


(信じろ、自分の球を)


 投じた瞬間、感触が違った。理想的な回転。軌道。落差。


 バッターのスイングは遅れ、空振り。


「バッターアウトッ! チェンジ!」


 ベンチから拍手と歓声が上がる。俺は小さく拳を握った。


 佐野先輩がマスク越しに、口の動きだけで言う。


「よくやった」


 マウンドから戻る途中、猫宮先輩がポジションから走ってきて、俺の肩を強く叩いた。


「最高の立ち上がりだよ、風間っち。……このままいこう!」


 その言葉に、俺は力強く頷いた。


(ここからだ。俺の、勝負は──)


 <ステータス>

 ===============

 名前:風間 拓真(Kazama Takuma)

 ポジション:投手(左投左打)

 球速:134km/h

 コントロール:D(55)

 スタミナ:D(59)【↑】

 変化球:ストレート2,カーブ2,

     スクリュー2,

     ジャイロカッター2

 守備:D(55)【↑】

 肩力:D(57)

 走力:D(55)

 打撃:ミートD(51)、

    パワーE(49)

 捕球:D(53)

 特殊能力:元天才・逆境○・

      ピッチングの心得(Lv2)・

      継続○・意外性・対強打者○・

      打撃センス○・

      ノビ◎・

      強心臓・

      スライディング・

      未来への一歩・

      選球眼・リベンジ・

      負けないエース・

      投打躍動


 成長タイプ:元天才型

 ===============




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