第68話 3人の朝
翌朝、俺はいつもより早くグラウンドに着いた。
鬼島監督に言われた言葉が、まだ胸の奥に残ってた。
「一軍の連中だけじゃなく上層部も、すでに“お前を戦力として見始めてる”。それは“扱われる”ということでもある。誰かにお前の才能を預けっぱなしで通用する世界じゃない」
……だから、誰よりも早く来ようと思った。
まだ太陽も高くない、朝のグラウンドは少し肌寒い。でも、その空気がやけに気持ちよかった。
ベンチ裏でストレッチをしていると、ふいに足音が近づいてきた。
「よっ、早ぇな」
顔を上げると、春日がいた。肩にミットを引っかけたまま、眠そうな顔で俺を見ている。
「春日……お前こそ早いだろ」
「お前が来ると思ってさ。ほら、お前って変に真面目だから、試合直後でも朝から来そうだなーって」
春日は軽口を叩きながら、隣に座り込む。
何だかんだ、こいつのこういう距離感に救われる時がある。
「じゃ、せっかくだし受けてやるよ。朝練つきあってやる」
「……いいのか?」
「いいに決まってんだろ。キャッチャーは相棒なんだぜ?」
冗談っぽく言ってるくせに、そう言うときの春日の目はまっすぐだ。
……俺は無言でボールを握った。
最初は軽めに。それから少しずつ、テンポを上げていく。
春日は要所でワンバウンドも拾ってくれるし、低めの変化球もきっちりミットで止める。
「……やっぱお前、いい球投げるようになってきたな」
「そうか?」
「うん。この間の一軍の試合、正直うらやましかったぞ」
ふっと笑って春日が立ち上がったその時──
「あっ、朝から二人でいちゃついてる~? アツイねー」
背後から、声が飛んできた。
振り返ると、ジャージ姿の小春がベンチの陰から手を振っていた。
「こは──っ、小春!?」
「そうだよ、小春ちゃんだよ~」
笑いながら駆けてきた小春は、小春の後ろにぴょんと腰を立った。
「いいね、こういう空気。なんか、久々に3人で“青春”って感じかも」
「そんな言い方すんなよ、恥ずかしい……」
「えー? でも、私結構好きだよ? この3人で過ごす空気。風間くんのボールもさ、なんか試合の時より“やわらかく”なってる気がするし」
「やわらかく?」
「うん。……多分だけど、“信頼してる球”って感じ。春日くんがちゃんと受け止めるって知ってるから、安心して投げられてるんでしょ?」
小春の言葉に、俺は少しだけ照れくさくなる。
でも確かに……今朝は、春日がいるだけで不思議とリズムが作れた。
「……あのさ」
俺はふと、言葉を口にしていた。
「昨日、一軍の監督にも鬼島さんにも言われた。これから先、潰れないようにちゃんと準備しろって。でも──お前らがいるなら、踏ん張れる気がする」
小春が笑った。春日も照れたように肩をすくめた。
「じゃ、もう決まりだな」
「何がだよ」
「風間は絶対に一軍定着しろよ! 俺もキャッチャーとして、佐野先輩を超えるから! そしたらマネージャーとして小春と3人セットで、全国狙うんだよ」
「いいね、それ! 私もドンドン2人をサポートするよ!」
俺は……笑っていた。自然と。
たぶん、一軍で練習してるだけじゃ、絶対出せなかった顔。
重圧も、不安も、これからまた来るんだろうけど──この二人と一緒にいるときくらいは、素直な自分でいられる。
そう、思えた朝だった。
<ステータス>
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名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:134km/h
コントロール:D(55)【↑】
スタミナ:D(56)【↑】
変化球:ストレート2,カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター2
守備:D(53)
肩力:D(57)
走力:D(54)
打撃:ミートD(51)、
パワーE(49)
捕球:D(53)
特殊能力:元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース・
投打躍動
成長タイプ:元天才型
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