第67話 助言
練習後、ストレッチを終えた俺は、ブルペン脇の影で静かに深呼吸を繰り返していた。
身体はまだ重い。でも、投げられないほどじゃない。小春やコーチのアドバイスに従って行った試合後のケアが効いたみたいだ。
……そんなときだった。
「肩の張り、まだ残ってるか?」
少し前までよく聞いていた声。
顔を上げると、鬼島監督が隣に腰を下ろしていた。
「昨日の夜にアイシングとマッサージしてもらいました。だいぶ回復してます」
そう答えると、鬼島監督は一瞬だけ、じっと俺を見つめた。
「そうか。……じゃあ、その回復があと一イニング遅れてたら、どうなってたと思う?」
一瞬、言葉に詰まった。
昨日、あのままマウンドに残ってたら──たぶん、俺は「まだいける」って言っていただろう。実際、体には負担を感じていたものの、まだ限界ではなかった。
でも、その“いける”の先に、前世で何が待ってたのかは自分でも、よく理解していた……いや、していたつもりだった。
「……わかりません。でも、まだ投げられるつもりでいました」
俺の言葉に、鬼島監督は目を細めた。
「だからこそ、あの場面でコーチ達は交代させた。選手が『まだいける』と思ってるときにこそ、周りの人間が止めなきゃいけないときがある」
その言葉が、ゆっくりと胸に染み込んでくる。
信頼されてないわけじゃない。むしろ──期待されてるから、止められたんだと思う。
「お前のことを“信頼してない”からじゃない。お前の“未来を見てる”からだ。風間にとっての一試合と、これから先の野球人生で歩む時間は、どちらも考える必要がある」
……俺の視野が、狭かったんだ。
安藤が相手だった事もあって最後まで投げ切りたかった。でも、そんな気持ちや意地だけじゃダメなんだ。
「お前にはまだ、足りないものが山ほどある。特にフォームの維持だ。投球数が増えると、下半身の使い方が甘くなる。お前の場合、肘と股関節に負担が偏る傾向がある。今日から注視する様にコーチ達には助言していく」
「……お願いします」
それだけしか言えなかったけど、その言葉には、ずっと強い覚悟を込めたつもりだ。
「一軍の連中だけじゃなく上層部も、すでに“お前を戦力として見始めてる”。それは“扱われる”ということでもある。誰かにお前の才能を預けっぱなしで通用する世界じゃない」
──“戦力”として見られるって、そういうことか。
ただ野球が好きで、勝ちたくて、投げていればいいわけじゃない。
実際、以前はそれで肩を壊してしまったのだから。他人任せではなく、自分で自分を守らなきゃいけない場所なんだ。
「明日から早朝に追加メニューを組む。体幹とフォーム維持に特化した内容だ。……文句は?」
「ありません。やります」
即答だった。
やるしかない。いや──やりたい。もっと上を目指したいから。
鬼島監督は、無言で頷くと歩き出した。
その背中を見送って、俺は小さく拳を握った。
(あの人の期待に応える。自分のためにも)
昨日より、今日。
今日より、明日。
ひとつずつ、積み上げていくしかない。
そしていつか──完全試合で勝つ。それが、今の俺の目標だ。
<ステータス>
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名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:134km/h
コントロール:D(54)【↑】
スタミナ:D(55)
変化球:ストレート2,カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター2
守備:D(53)
肩力:D(57)
走力:D(54)
打撃:ミートD(51)、
パワーE(49)
捕球:D(53)【↑】
特殊能力:元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース・
投打躍動
成長タイプ:元天才型
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