第64話 小春が見た1軍の風間
風間くんが1軍で投げると聞いた時、驚くと共に、これまでの風間くんの努力が報われたようでとても嬉しかった。
ただ、その相手の学校のピッチャーがアノ安藤くんだと聞いた時には、正直風間くんの事が心配になってしまった。
彼が退部する直前に風間くんに対してやった危険球が目に焼き付いていたから――。
だからかな、風間くんがマウンドに立つと、嬉しさよりも不安や緊張が勝ってしまい、一緒に観客席から応援していた同学年のマネージャーの子にも挙動不審だと笑われてしまった。
だけど、そんな私の勝手な心配をよそに風間君は堂々と公式戦を投げ、相手の上級生達相手に互角以上の戦いをしていた。
三回表。
スコアボードに並ぶ「0」の数字を、私は何度も見直していた。夢じゃない。あの風間くんが、本当にこの試合を引っ張ってる。
「……お願い、もうひとり!」
思わず手を合わせながら祈っていると、風間くんは2アウトの状況で一番バッターを相手に、一球、また一球と投げ込んでいく。
一球目、息を飲むような鋭いスクリュー。
二球目、カーブで空振り。
三球目、渾身のストレート──
「ストライク! バッターアウト!」
審判の声と同時に、スタンド中から拍手が巻き起こる。私も思わず立ち上がって、両手を強く叩いた。
(すごい……ほんとにすごいよ、風間くん!)
入学当初は誰も想像できなかった1軍の舞台で、僅か入部数か月なのにマウンドの中心で誰よりも堂々としている。
姿勢も、投げるフォームも、すべてが“エース”に見えた。
そして風間くんの活躍は、そのあとも続いた。
1軍の攻撃陣が安藤くんの球に2巡目から慣れ始め、6点差になった後も風間くんは気持ちを切らさずに投げ続けた。
打たれることもあった。鋭い当たりもあった。
でも、風間くんは崩れなかった。ピンチをしのぎ、仲間に声をかけて、しっかり守りきって──
だけど、その快進撃は7回表のマウンドに上がった所で陰りを見せた。
ううん。正確に言うなら、もっと前――5回の守備が終わった所で、風間くんは肩で息をして明らかにスタミナ的につらそうにしているのが遠目からでも見て取れた。だから、コーチの人が1軍の監督さんに何か懸命に話をしていたけれど、それは聞き入れられた様子も無く、結局7回まで来てしまっていた。
一人目。
──ボール。ボール。フォアボール。
いよいよ球速も落ちてきて、ストライクゾーンに投げるのも難しくなってきたように見えた。
二人目も、連続でフォアボール。
キャッチャーの佐野先輩がタイムを取り、風間くんに何かを話かけた後、ベンチに向かって何かジェスチャーを送ると、コーチが監督に話をし、渋々と言った様子で頷いたのが見えた。
「タイム! 風間、交代だ!」
ベンチから響いた声に、私は思わずホッとしてしまった。
きっと風間くんは、もっと投げたかったんだと思う。
ベンチに戻っていく背中からも、その無念さは理解する事が出来た。
(悔しいよね。でも……十分すごかったよ)
きっと風間くんは、こんな所で挫ける様な投手ではない。
彼はまたすぐにもっと大きくなって戻ってきてくれる――そんな予感を感じていた。
風間くんがベンチへ下がった後に代わって出てきたのは、1軍の田中先輩。誰もが認める、リリーフピッチャー。
きっと、この試合はこのまま終わるのだと思う。
だからかな、私はベンチに戻った風間くんの姿を、ずっと目で追ってた。
タオルで顔を拭いて、仲間に肩を叩かれて、少し笑って。
でもその笑顔の奥に、ほんの少しだけ、悔しさがにじんでた。
きっと彼は、もっと投げたかったんだ。もっと証明したかったんだ。
でもね、風間くん。
今日のあなたは、もう十分すぎるくらい……“エース”だったよ。
<ステータス>
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名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:134km/h
コントロール:D(53)
スタミナ:D(55)
変化球:ストレート2,カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター1
守備:D(53)
肩力:D(57)
走力:D(54)
打撃:ミートD(51)、
パワーE(49)
捕球:D(51)
特殊能力:元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース
成長タイプ:元天才型
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