第60話 1軍のマウンド
初回、守備につく。
マウンドの土を踏みしめた瞬間、耳の奥がツンとした。張り詰めた空気が全身を包み込み、スタンドからの声援も、対戦相手の視線も、すべてが皮膚にまとわりついてくるようだ。
俺は帽子を取り、深く一礼してからキャッチャーの佐野先輩と目を合わせた。佐野先輩は、まっすぐにミットを構えてうなずいてくれる。言葉はいらない。今、俺たちはバッテリーとして確かに繋がっている。
後ろを振り向いてみればショートの猫宮先輩や神宮寺先輩も軽くグラブを上げ、ニッと笑った。
「大丈夫だ。俺は一人じゃない」心の中でつぶやく。
初球──。
構えた佐野先輩のミットは外角低め。迷わず首を縦に振った。風を切るように踏み出し、腕を振る。
──ズバンッ!
「ストライク!」
審判の声が耳に届くと同時に、ベンチからも安堵の拍手が聞こえた。
「よし……いける」確かな手応えを感じる。
しかし、ここで油断はできない。バッターは北西高校の一番。データでは小柄で俊足タイプだ。
二球目はカーブ。佐野先輩のサインに一瞬だけ迷いがよぎったが、すぐに頷いた。セットポジションから大きな弧を描くように腕を振り抜く。カーブが落ちる。
バッターのバットが空を切った。
「ストライク、ツー!」
──完璧な入りだ。
三球目、ストレートで押すか、変化球で揺さぶるか。佐野先輩が少し間を置いてから、スクリューのサインを出した。
「ここで……スクリューか」
リスクはある。だが、信じてみよう。
グラブを強く握りしめ、振りかぶる。低く、鋭く──ボールが右打者の外へ食い込むように落ち、空振り三振を奪った。
歓声とともに、佐野先輩がサムズアップしてくれる。
それに対して小さく頷き返して、次のバッターに向き直る。
続く二番打者。外角低めにストレートを投げたが――初球から狙ってきた。
――カキンッ!
甲高い音を立てて白球が高く、そして浅く舞い上がった打球が舞い上がっていく。
(狙われたっ……!)
背後を振り返ったその一瞬後。
「任せろ!」
声を上げるとともに、神宮寺先輩が前進スライディングキャッチ。ギリギリでグラブに収めていた。
助けられた――そう思いながら、俺は帽子を取って軽く頭を下げた。
三番打者。
外角低めのストレートを冷静に見送られ、カウントは2ボール1ストライク。甘く入った四球目を弾かれ、今度はヒットを許してセンター前に運ばれた。
出塁。
一塁に牽制を入れるも、走る気配はない。相手も警戒しているのがわかる。
打席には北西の四番。
スタンドが一段とざわつく。早実、北西、両方の応援が混じり合う中、俺は深く息を吸った。
佐野先輩が出したのは――インコース高め、釣り球気味のストレート。
渾身の一球を投げ込む。
バットが鋭く出た。
が、わずかに詰まった打球は三遊間を転がると同時、佐野先輩が声を張り上げた。
「ショートッ!」
猫宮先輩が素早く前に出て処理し、素早く二塁送球。セカンド封殺、スリーアウトチェンジ。
ベンチに戻る途中、神宮寺先輩が、猫宮先輩とグラブを合わせているのが見えた。
「ナイスプレー、猫宮!」
「ボクにかかれば、余裕ですよ」
そんな二人の様子を見ていると、佐野先輩に肩を叩かれた。
「今日は一段と球が走ってるぞ、肩の力は抜けたか?」
「ありがとうございます」
マウンドを降りながら、自然とこぼれた言葉。
ヒットを一本許したものの、失点ゼロ。
それは、先輩たちと共に作り上げた一つの成果でもあった。
しかし、こんな所では満足していられない。
夢の舞台にまた戻る為には、自分の力で抑えきるだけの能力が必要な事は間違いなかった。
そして、どんな思惑があるにしても1軍の舞台に立てている今こそが、最も自分にとって学びが得られる機会だという事は、十分に理解していた。
<ステータス>
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名前:風間 拓真(Kazama Takuma)
ポジション:投手(左投左打)
球速:134km/h
コントロール:D(53)
スタミナ:D(55)
変化球:ストレート2,カーブ2,
スクリュー2,
ジャイロカッター1
守備:D(53)
肩力:D(57)
走力:D(54)
打撃:ミートD(51)、
パワーE(49)
捕球:D(51)
特殊能力:元天才・逆境○・
ピッチングの心得(Lv2)・
継続○・意外性・対強打者○・
打撃センス○・
ノビ◎・
強心臓・
スライディング・
未来への一歩・
選球眼・リベンジ・
負けないエース
成長タイプ:元天才型
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